第17章 評議会②
評議会②
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龍人の里
“原初のモノ”の1人、貴龍人 ハイドラゴニュート ムチャリンダの治めるルールナ都市国家連合の1つ。
オレはクルス商店 龍人の里支店を建てる為に一度来てはいたが、新婚旅行の訪問予定地だったので敢えて観光どころか食事すらしなかった。
龍人の里の長、ムチャリンダからの持て成しの誘いも「新婚旅行で寄るから、その時に」と、断っていた。
妻達、ペット達を引き連れて、シルバーウィングから降りて龍人の里へ向かうと、入り口でムチャリンダが出迎えてくれて、そのまま、ムチャリンダの宮殿で歓迎の宴を開いてくれた。
「神よ、我が里の料理は、お口に合われましたでしょうか?」
ムチャリンダは、オレの本当の種族を知っているのでとても平身低頭だが、周りの者達はきっと知らないのだろう。
ハイエルフであるクリシュナよりもオレの方が上座に座って、ムチャリンダ自身が接待している事に疑問顔だ。
「ああ、美味しく頂いてるよ。
オレの知らない香草や香辛料が使われているみたいだし明日からの観光が楽しみだ」
「それは、何よりで御座います。
我が龍人の里は、特別な物は御座いませんが、森、草原、湿地に囲まれ、各種植物は豊富ですので、是非、ご堪能下さい」
そう言って、ムチャリンダは、クリシュナ達にも順に挨拶をして回っていた。
「なあ、ムチャリンダ。
この龍人の里の者達の中にも“無限ダンジョン”に挑んだヤツっているかな?」
ムチャリンダも挨拶を終えて自身も食事に一息付いた様だったので、ちょっと情報収集をしてみる事にした。
「ええ、居ります。
私自身も挑んだ事が御座います。
神もあのダンジョンへ挑まれるのですか?」
「ああ、未攻略ダンジョンには基本挑もうと思ってるんだ。
どんなとこで、何で諦めたんだ?」
「無限ダンジョンは只々延々と続く一本道です。
1km進む毎に魔物が1体おりまして、1体毎にレベルが1づつ上がって行きます。
それが繰り返され続けるダンジョンです。
私はレベル300万程の魔物が出て来る辺り迄は進みましたが、部下達の消耗が激しくなり、帰りの事を考えて撤退致しました」
「帰りを考えてって事は“リターン”とかは使えないって事か?
それと、魔物は結構早いペースでまた出て来るって事か?」
「はい。“リターン”も、直接繋がる魔導具も使えませんでした。
魔物も1時間で再度現れます」
「…………なるほど…………。
1km間隔じゃあ、挟み撃ちの可能性もあるからその場で倒さないといけない。
それに、1時間でまた現れるなら休む時間と場所が無いって事か…………」
「はい、仰る通りです。
“ディファレントルーム”等で休むにしても一定以上の強さの所では、万が一、“ディファレントルーム”を使っている者が殺させた場合を考え、おちおちと休めませんので」
「ウチの戦力で、どのくらい迄進めるかな…………」
「過去最高にはなるんじゃない?
今迄“原初のモノ”が6人も揃って挑んだ事なんて無いし、私達だけじゃなくてみんな強くなってるし。
不安があるとすれば、万が一、終わりが無かった時よ。
レンジさんが一体、いつ諦めてくれるか…………」
クリシュナの言葉に妻達が強く頷く…………
「クリシュナさんの仰る通り、レンジ様は集中されると時間を忘れられてしまいますから…………」
と、ルナルーレ。
「そうですわね、私はお留守番でしょうからとっても寂しいですわ。
子供が産まれる迄には帰って来て下さいましね」
と、ラム。因みに、出産予定は4ヶ月後だ…………
みんな、一様にオレが無限ダンジョンに諦め悪くのめり込むと思っている様だ……
…………言い返せない……自業自得だ…………
「分かったよ……レベル1,000億以上だったら、今回は諦める事にするよ…………」
「「「1,000億!!」」」
ムチャリンダを含め、龍人達が驚愕する。
妻達やペット達は「まあ、それなら……」みたいな感じだ。
ムチャリンダはオレとクリシュナを交互に見て説明を求めている様だ。
「ムチャリンダ、レンジさんはもっともっと強いわよ。
レベル1億2,000万の聖樹の猫パンチも指先で普通に受けちゃうんだから」
「レ、レベル1億2,000万の攻撃を指先で…………」
「ああ、試しちゃダメよ、ムチャリンダ。
あなたじゃ死んじゃうし、この宮殿も衝撃波で粉々になっちゃうから」
「!!は、はい、クリシュナ様!!」
クリシュナの言葉は、やはり信憑性が高いのか他の龍人達もオレへ尊敬の眼差しを向けて来る様になったのだった…………
翌日からは、龍人の里を見て回った。
宮殿での料理にあった色々な香草や香辛料もごく一部だった。
本当に、多種多様な食材に最近料理ブームの妻達はとても楽しいショッピングを堪能していた。
オレも幾つか気になった物を購入して行き、そのついでにクルス商店 龍人の里支店も様子を見ておいた。
報告は受けていたがしっかりと繁盛している様だ。
オレは、ちょっと悪戯で、みんなには他の店を見て貰って、今日のお付きのシェーラも外で待たせて1人で店内に入る。
全体の様子を見つつ、武器のショーケースを眺めながら店内へ。
すると、12、3歳くらいの魔族の少女が出て来た。
「いらっしゃいませ。
何かお探しの商品が御座いますか?」
「ああ、えっと、プレゼントを探しているんだ。
身を守れる物が良いかと思って」
「なるほど。
宜しければ、どの様な戦い方をされるかお伺い出来ますか?」
「いや、戦ったりはしないんだ。
もしもの時に備えてって思って」
「…………でしたら、此方は如何でしょうか?」
そう言って少女は、美しい装飾の短剣を持って来た。スキル効果は結界の様だ。
『良いチョイスだな。
プレゼントの相手が男性でも女性でも良さそうなデザインだ。
それに指輪やブレスレットだと求婚と勘違いされる場合があるからな』
所謂、社長がお忍びで店を見に来るアレをやった訳だが、ちゃんと教育出来ている様だ。
「とても綺麗な短剣だけど、高いんじゃないのかい?」
「そうですね、一般的なミスリルの短剣よりも高価な物ですが、この短剣は結界のスキル効果があります。
それに此方は、魔力電池でも結界が張れる仕組みで、万が一、魔力が完全に尽きてしまった時でも大切な人の命を守ってくれますよ」
「なるほど…………。じゃあ、それにするよ」
「ありがとうございます。
プレゼント用のラッピングも無料で出来ますが、如何致しますか?」
「じゃあ、お願いしよう」
「はい、少々お待ち下さい」
綺麗にラッピングされて、ちゃんと中身が何なのか分からない様にしてある。
細かい気配りが出来ている様だ。
そして、会計時…………
「クルス商会での会員登録はされてますか?」
「ああ、してるよ」
「では、此方に手を翳して下さい…………え?
ええ〜〜!!か、か、会長ぉ〜〜〜〜!!」
と、いう絶叫がこだました…………
クルス商会には暗黙の了解がある。
会員番号0番から119番までの人物には一切詮索しない事だ。
これは、子供2人を除いた黒火一族が商会の立ち上げ時に登録をしている為だ。
一応は“クルス商会の創設メンバーの為”となっている。
そして、中でも会員番号0番は会長の番号だと知れ渡っていた。
オレがした訳では無いが、いつの間にか『会員番号0番は、全てに優先する』という教育がされていた。
まあ、知っていて、この少女に悪戯をした訳だ。…………言葉に問題を感じるが……
そう!!従業員にドッキリを仕掛けた訳だ!!
彼女の絶叫で、店内が騒がしくなって来たので、固まったままの少女にお金を払って商品を受け取る。
「驚かせて悪かったね。良い接客だったよ。
これはそのご褒美だ。これからも頑張ってくれ」
そう言って、受け取った短剣を少女に渡して店を出たのだった…………
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3日間の龍人の里での観光を経て、現在、シルバーウィングは竜人の里へ向かっている。
今日は、シロネコ達に装備を作って上げる予定だ。
装備を欲しがったのは、クロリュウとシロリュウだけだが、負けず嫌いなウチのペット達は、ホネリュウ以外全員で“空間属性魔法”の特訓をしていた。
装備作成の条件は『“ディファレントルーム”が使える事』だったが、全員で“空間属性魔法”をレベル10まで上げて、ドヤ顔で装備の要求をして来た。
そんなところも可愛いモノだ。
先ずは1番欲しがったクロリュウから作った。
クロリュウはホネリュウとお揃い色違いだ。
紅に金の装飾にした。
見た目は同じだが、オリハルコンの圧縮密度は違う。
クロリュウの方が3倍は重たくて硬い。
ここは2人のレベル差の問題だ。
続いて、シロリュウだ。
シロリュウは、超ロングスカートのドレスアーマーにした。
ブレストプレート部分は白地に金の装飾で、スカート部分は羽衣をイメージした非常に薄い白のシフォンスカートだ。
武器は2つの腕輪だ。
これは、ルナルーレとキスラエラの短剣に付与している、オレのオリジナル火属性魔法“炎龍顕現”とオリジナル風属性魔法“嵐龍顕現”の改良版を付与している。
本来、この魔法は炎龍と嵐龍を生み出して操るのだが、この改良版は全身を生み出す事と、腕輪の先に半身だけを生み出す事が出来る。
つまり、シロリュウが3頭龍になる事が出来るのだ!!
次は、レディファーストでアカリュウだ。
アカリュウもホネリュウ達と基本は同じで、レモンイエローにライムカラーの装飾だ。
唯一の違いは尻尾の龍に首輪がある事だ。
この首輪には“スキル 空間把握”と“スキル 立体視点”の効果がある。
アカリュウの尻尾の龍は意思は無いが、ちゃんと目も見えていて喋る事も出来る。
なので、訓練して竜と龍との両方で“スキル 空間把握”と“スキル 立体視点”が出来る様になって欲しいと伝えた。
次は、シロネコ。
ここからが大変だ。
シロネコは自分ではシャツも着れない…………。
いや、モゾモゾ入れば着れるかもしれないが、なんだかスマートじゃ無い。
なので、レッグウォーマーの脛当てにした。
ただ、デザインはシャキンシャキンと尖ったカッコイイ感じで、魔力で操れるワイヤーアンカーが出せる様にしている。
これを6本の足に装備する様にした。
因みに色はアイスブルーで氷のイメージだ。
シロネコが出来たらミケネコはもちろんお揃い色違いだ。
ミケネコは炎をイメージしたカーディナルレッドにした。
クロクジラは帽子と手袋だ。
帽子は背中まである兜と鎧風味にして、兜の先端には一角を思わせる螺旋のツノ。
手袋は胸鰭が刃になる様にした。
シロクラゲは靴下だ。いや、手袋か?
まあ、触手の先に刃を付けた物を1万個、スタンド付きで作った。
試験管をいっぱい立てている感じだ。
色は、シロクラゲと全く同じスノーホワイトにして分かりにくくした。
全員、非常に喜んで、早く試したくてうずうずしていたので、性能の確認と使い方の指導の為に、ミミッサス村のゴーレム訓練場に一緒に行った。
毎度の事ながら、オレが行くとギャラリーで一杯だ。人気者は大変だ。
先ずは1人づつ自身のレベルの半分の2m級の素手のゴーレムを出させて使い方の説明からだ。
装備に魔力を少しだけ流して自分に固定させながら戦う事に慣れて貰うのと、武器を使っての戦闘を覚えて貰う為だ。
ウチのペット達はみんな優秀だ。
全員1回で、覚えた。
次は、50m級を相手に大きさを変えながらの戦闘だ。
これも全員1発クリア。
最後は同レベルと思う存分戦って貰おう!!と、思ったのだが…………
あっという間に装備を使いこなしたシロネコ達は、同レベルでは楽勝過ぎた…………
そんな訳で、自分の2倍、3倍、4倍と、何処まで無傷で勝てるかの競争が始まった。
優勝はシロリュウ。
ベリアル戦以降、ゴーレム部屋のレベル上限を上げた事で、今のシロリュウはレベル2,700万だが最大レベルの1億迄倒してしまった。
因みに、負けず嫌いなシロネコ、クロリュウ、クロクジラ、シロクラゲも2回目で無傷で勝った。
頑張ったみんなには、ご褒美だ!!
レベル上限を100億にしてあげた。
流石にレベル2億はまだ全員無理だったが、今後一気にレベルアップして行くだろう。
ギャラリー達も一層やる気を出した様だ。
最強の“原初のモノ”が更に強くなろうとしているのだ。
もっと上を目指したくなったのだろう。
因みに、これでミケネコも今後効率良くレベルアップが出来る。
ただ、俊敏無しで始まって、歩き方から学び始めたミケネコは、まだ同レベルとの実戦は難しいだろうが…………
みんな余程、嬉しかったのか、その日はそのまま1日中装備を付けていた……
次の日も……その次の日も…………
結局オレが、「それは、戦闘用なんだから普段は外す様に!!」と、言って渋々外させた。




