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第14章 進化する魔獣①

進化する魔獣①





▪️▪️▪️▪️




アカリュウの手術は、結構大変だった。


麻酔の代わりに、新魔法“呪属性魔法 手術用麻酔”を考案。


この魔法は、気絶、痛覚遮断、出血停止、の効果の魔法だ。

こちらは直ぐに出来た。


問題は手術室だ。


滅菌室を作りたかったのだが、この世界の細菌がどこまでやれば、殺せるのかが、分からない。

そもそも、長時間熱する位しか、殺菌方法も分からない。


悩んでいたオレに天の声をくれたのは、ルナルーレだった。



「そもそも、手術の後に病気にならなければ良いのですから、手術後の回復と一緒に、病気になっていても、なっていなくても治せば良いのでは?」


青天の霹靂だった!!


手術は綺麗な部屋でしなくてはならないという固定概念で、ついつい難しく考えてしまっていた。


そうと、決まれば、やるのは直ぐだ。


どうせ治せば良いのだからと、遠慮なくザクザク切って、ズバズバ魔導具を取り出した。

医学もへったくれも無い。


生きてさえいれば、治すのは一瞬の事だ。


こうして、アカリュウは無事に手術を終えた。



手術を終えて、「もう大丈夫だから」と、与えた食事を泣きながら食べる姿に、この実験を行ったヤツらに怒りが込み上げて来る。


絶対に壊滅させてやろうと思った。




アカリュウの今後について、本人に希望を聞いてみた。

アカリュウは、年齢やレベルからすれば大きい身体だが、普通に暮せない程のサイズでは無い。


別にオレの契約魔獣として、生きなくても特に問題が無いからだ。


「僕もアナンタ様達と同じ様に、このまま、主様のペットになりたいです!!」


と、言う回答だった……。

絶対にシロリュウに洗脳されている…………



本人が望むので、ウチで飼う事にした。


因みに、アカリュウは実はメスで、僕っ娘属性だったから飼う事にした訳では無い。

断じて無い!!




そんなこんなで、家族が1人増えて、4日後、オレ達は、ちょっと予定の順番を変更して、東中央大陸の最も東にある国、キルス王国に来ていた…………



本来の予定では、トルナ王国の後は、キルス王国の西側にある、ルールナ都市国家連合を周ってから、キルス王国に行く予定だったが、アカリュウの記憶的に、研究施設がある可能性はキルス王国が最も怪しい。


別にオレは正義の味方では無いが、アカリュウにしていた実験は、オレの嫌いな部類だから、最悪、国の1つ2つ無くなっても、実験施設には消えて貰って、首謀者達にも消えて貰う所存だ。




トルナ王国とキルス王国の国境を越えた最初の街、スンノースの街。


この街はトルナ王国との貿易拠点として、そこそこ栄えている。


街の郊外には、トルナ王国のワイバーン達の為の発着場も広く設けられ、キルス王国の中央に向かう馬車も多く見られた。


オレ達は新婚旅行中なので、もちろん観光がメインだが、一緒にアカリュウを連れて回る事で、注目を集めるのと、ついでに、Sランク商会であるクルス商会の会長が、変わった魔獣を集めているらしいとの情報も撒いて行く。


此処、キルス王国の在る東中央大陸には、まだクルス商会は出店していない為、知名度は全く無いが、Sランク商会はクルス商会を含めて、世界に8つしか無い。


クルス商会は知らなくても、Sランク商会の会長となれば、とんでもない超金持ちだとは分かる。


これを利用して、研究施設から逃げた魔獣なんかが居れば、情報や実物が手に入る可能性もある。


そして、アカリュウを見た研究施設側の人間が接触して来る事もあり得る。


一応はそういった対応も取りつつ、観光は観光でしっかりと楽しんだ。




今はまだ9月でそこまででは無いが、この辺りは、非常に寒い地域なので、ライ麦が多く栽培されており、こちらの世界に来てから初めてのライ麦パンを食べて、トナカイのソーセージや肉料理を食べた。


トナカイ料理は結構、美味しかったので、明日はちょっと、狩りに行く事にした。


買っても良かったが、森の奥の方には、スーパーウルトラグレートレインダーや、アルティメットレインダーがいるらしいとの情報があったので、どうせなら、もっと美味しくて新鮮な方がいいだろうと思ったのだ。


その日の夕食時、ダルグニヤンから報告が入った。


「お館様、ドルレア王国とハルマール王国の休戦協定が締結致しました」


「そうか、思ったより時間が掛かったな」


「それについては、国家間の問題では無く、国内で完全な不干渉にするか、一部国交を持つかで、お互いに議論に時間が掛かった様です」


「なるほどな。で、結局はどうなったんだ?」


「はい、国境に最も近い、ドルレア王国側のダンジンスの街とハルマール王国側のガルンの街までを特区として、交易を行う事で決定致しました」


「なら、少しの間、荒れるかもしれないな。


両支店の者達には、通常よりも警戒を高くする様に伝えてくれ。

必要であれば、第1部隊への人員追加の要望も出す様にさせろ」


「は!!お館様、前以て、近隣の野盗やゴロツキの排除を行いますか?」


「いいや、そこは国任せでいい。

クルス商会に手を出した者だけを徹底的に潰す様に」


「畏まりました」




ダルグニヤンの報告が終わると、今度はラムがスッと立ち上がった。

立ち上がったラムに、最強合法ロリの一角、サーニヤがそっと寄り添う。


「あなた。私からもご報告がありますわ」


真剣な表情のラムに、何となく察したが、オレも立ち上がって強く頷く。


「あなたの御子を身籠りましたわ!!」


満面の笑顔で、ラムがそう言うと、ワッと歓声が上がる。


オレは、逸る気持ちを落ち着かせ、ゆっくりとラムに近づいて抱き寄せ、


「ありがとう」


と、一言だけ言って、キスをした。


オレが、「じゃあ……」と、言いかけた所で、


「あなた。少々、お待ち下さい。私だけではありませんの」


と、ラムから待ったが掛かり、ラムはサーニヤを見る。


「お館様、私もお館様の御子を授かりました」


と、俯き気味にサーニヤが言った。


ラムが身重だと知って、側に控えたモノとばかり思っていたオレは、一瞬、固まってしまった。


自分の普段の行いを棚に上げて、僅かにでも、サーニヤの見た目での妊娠に疑問を持ってしまった事を反省した。


オレはサーニヤの正面に行き、膝を付いて抱き締め、


「サーニヤも、ありがとう」


と、言ってキスをした。


ラムとサーニヤを抱き寄せて、


「じゃあ、明日の狩りの後は、みんなでトナカイパーティーにしよう!!」


と、オレが言うと、全員が拍手で、ラムとサーニヤの妊娠を祝福してくれた…………





翌日の狩りはオレも参加した。

もちろん、ラムとサーニヤに美味しいトナカイを食べさせて上げる為だ。


ラムにとっては、5人目だが、オレにとっては前の世界を含めても人生で初めての子供だ。

サーニヤも初めてらしい。


ちょっと、ほんのちょっとテンションが上がり過ぎてしまったオレは、アルティメットレインダーを狩りまくった。


トナカイの“原初のモノ”が、思わず止めに来るくらい、狩りまくった。


オレが、「コイツはもっと美味いかな?」と言うと、クリシュナに全力で止められた。


さすがに、そんな理由で“原初のモノ”を狩るのはやめてあげて欲しいと、涙目で訴えて来たので、やめてあげた。




そんな訳で、大量のトナカイ肉で、トナカイパーティーだ。

わざわざ、オレの直轄の配下全員が、入れ替わり立ち替わり来てくれた。


現在、オレの直轄の配下は、1,500人程だが、アルティメットレインダーは、ビル程の魔獣だ。

正直言って、1匹で十分だった…………



しかし!!無駄にはならない!!


我が優秀な第2部隊の部下は、大量のトナカイ肉を、唯一肉の販売をしているサーラール本店でゴリゴリ売りまくった。



曰く、『クルス会長が懐妊した、ラム奥様の為に、自ら狩って来た、アルティメットレインダーの肉!!期間限定!!無くなり次第終了!!』だ、そうだ…………



サーラールの街だけで無く、王都からも買いに来る者がいるほどの人気で、巷では、「クルス会長が元気な子供が産まれる様にわざわざ狩りに行った」とか、「この肉を食べたら子宝に恵まれる」とか色々言われて、大儲けだそうだ…………



と、言う様な事がありながら、オレ達の新婚旅行は徐々に、キルス王国を南下して行ったのだった。






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