第13章 北海の島④
北海の島④
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魔王達との密会の翌日からは恒例になりつつある建設ラッシュだった。
元々進めていた、ギルナーレ王国の出店。
サーラールの工場の製造ラインと従業員寮の増築。
第1クルス島ダンジョンの改築に村の建設だ。
特に村の建設は、予想以上に大変だった。
移住希望者が非常に多かったのだ。
ビルスレイア女王国に住む、ほぼ全ての第3部隊の配下と家族が移住して来たのだ。
その為、2,000人を超える村になってしまった。
今後の拡大も考え、商店は東西に2ヶ所作り、学校は予定の4倍のサイズにした。
念の為、3人の副工場長に、村長と助役になって貰い、トラブルや要望があった場合のまとめ役になって貰った。
人数が多くなった事で、農業や牧場だけでなく、飲食店や衣料品作りを行いたい者には、店舗や工場を建てておき、貸し出す様にもした。
全てが整ったのは8月最終日だった。
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9月1日。今日からやっと新婚旅行の再会だ。
次の予定地、トルナ王国は、ハルマール王国、グラール帝国の北にある国だ。
東西に非常に長い国で、国土は殆どが山岳地帯だが、多くのワイバーンを使役して交通網とする事で、他国との貿易も盛んな国だ。
この国は特に見たいモノがある訳では無く、各街や村なんかで、面白いモノが見つかったらいいなぁ〜……くらいの観光だ。
幾つかの街や村を見て回ったが、山岳地帯らしく山羊を飼っていたり、山羊の肉の料理だったり、山羊のミルクの加工品だったり、山羊の魔獣が現れたりした。
正直、山がいっぱいあるんだから、伝説の魔獣がいたり、断崖絶壁にある少数民族の村があったりするんじゃないかと期待していたが、伝説の魔獣は、“原初のモノ”で、見た目は山羊らしいので、行くのを辞めた。
山羊はもうお腹いっぱいだったのと、クリシュナを慕うモノの1人らしいので、会いたければ呼べば済む。
そして、断崖絶壁に住む様な物好きは居なかった…………
そろそろ、飽きて来たので、最後に王都トルナに行って面白い情報が無ければ、次の目的地に行こうと思っていた所、面白い情報が手に入った。
ふと、久々に“この指輪”が仕事をしたのか?と、手元を見てしまった。
その、面白い情報とは、突然変異と思われる“双頭の竜”が居るというモノだった。
クリシュナに聞いてみても、そんな生き物は知らないと言う。
真っ先に考えたのは、突然変異よりも魔導神の改造生物だ。
海底ダンジョンの龍達は、意思が無く、会話が出来なかったが、もしかしたら話しが聞けるかもしれない。
折角なので、妻達とも手分けして情報収集を行った。
「つまり、その、双頭の竜は、元々居たんじゃ無くて、ある時不意に現れたって事だな?」
「はい、私が聞いたのは、エルフ種族の方で、この国が出来るよりもずっと以前から、王都の先にある山に住んでらしたそうですが、元々はその“双頭の竜”が居る山には、“原初のモノ”のお一人が住まれて居たそうなんですが、その“原初のモノ”のお一人が亡くなられた後は、特に大型の魔獣は居なくなっていたそうなんです。
それが、300年程前に突然その“双頭の竜”が現れたそうです」
さすが、冒険者歴の長い、ルナルーレだ。
おそらく、年長者を探して聴き取りをしたんだろう。
「私の聞いたお話では、その“双頭の竜”は、“原初のモノ”の方々の様に、そこから動かず、ただ、近寄るモノは容赦無く攻撃して来るそうですわ」
「私は、その竜は、火、水、風、雷のブレスを放って来ると聞きました」
情報収集にも性格が出る様で、ラムリムの情報は戦闘面のモノだった。
この2人は、絶対に双頭の竜を狩る気満々だ。
「私の得た情報では、その“双頭の竜”の住む山は、元々が“原初のモノ”のおられた山の為、近隣に街や村などは無く、この王都トルナから向かうのが、1番近いというモノでした」
と、キスラエラの情報を聞いたところで、今夜はある程度近くまで行って、明日の朝から、双頭の竜には会いに行く事にした。
翌朝、オレはシロリュウに、他のみんなはクロリュウに乗って、“双頭の竜”の住む山に向かった。
100km圏内では、何もして来なかったが、10km圏内に入ると、雷と風のブレスが飛んで来た。
恐らく、“スキル 感知”がレベル8以下なのだろう。
ブレスもシロリュウやクロリュウからすれば、ヌルい攻撃だ。
シロリュウもクロリュウも軽く避けて、そして、とうとう“双頭の竜”を目撃した!!
“スキル 感知”の段階で、この山には“コイツ”しか居ない事は分かっていたが、オレの“スキル 遠視”では、普通の竜にしか見えなかった。
しかし、“スキル 鑑定”の結果は、称号に“双頭の竜”とある…………
“双頭の竜”と、聞いて、どんな姿を思い浮かべるだろうか?
オレは、“某有名大怪獣の王様なギドラさん”の2本バージョンを想像していた……
せめて、首が短くても、頭が2つ並んでいるモノと思っていた…………
しかし、“双頭の竜”は、竜の尻尾が龍になっていた…………
竜の尻尾を切って、龍をくっ付けただけ……そんな姿だった…………
確かに、頭は2つある…………
でも、これなら、“龍尾の竜”とか、普通に“竜と龍がくっ付いてる”とか言って欲しかった…………
ちょっと、カッコいい姿を想像していたので、ペットにしようかと思っていたのに…………
それに、残念な事がもう1つ。
年齢が335歳だった事だ。
300年前に姿を見せるまで、魔導神の作った地下施設に眠っていて……とか、考えていたが、本当に突然変異の可能性が高そうだ…………
正直、やる気は全く無くなったが、折角来たので、ちょっとだけ、気になる事も確認しようと、“殺気コントロール”で、気絶させる。
近付くと、年齢やレベルの割にかなり大きい竜だった。
角と牙が白いだけで、全身美しい真紅の鱗で覆われていたが…………
「なあ、誰か、赤い“雷竜”って、聞いたり見たりした事あるか?」
「「「!!!!」」」
「主様、それならば、龍にも赤い者はいません」
「レンジ様、火竜と雷竜の子供という事は考えられませんか?」
と、言う、ルナルーレの質問をキスラエラが否定する。
「いいえ、ルナルーレさん。
それならば、火竜、雷竜、雷火竜になる可能性は有りますが、この色で生まれたならば、火竜か雷火竜でしょう。
それに、この色は、火竜や火炎竜よりも深い赤の様に感じます」
「そおっスね。
色だけで言ったら、“業火竜”のヤロウと同じくらい赤いっスね」
おそらく、“原初のモノ”だろう、“業火竜”と同じくらいだと言うクロリュウに、シロリュウも同意する。
「うぅ〜…ん……。
でも、仮に“業火竜”の子供だったとしても、“火炎竜”だよな〜……」
「主よ、“業火竜”の子供が、その年齢でいる事はあり得ない。
“業火竜”は、1万年近く前に死んでいる」
「そうなのか?」
「うむ、先日、調べていた時に確認した。
“業火竜”は、“豪雷竜”に殺され、“豪雷竜”は、山々の主 パルヴァテーシュヴァラ ヒマヴァットに殺されている。それが、1万年程前の事だ」
「その、ヒマヴァットって、こないだ言ってた、山羊か?」
「ええ、クルスさんが、『もう山羊は飽きたから、無視で』と、言っていた“原初のモノ”です」
クリシュナが、オレの声真似をして、若干棘のある言い方で答えてくれた。
「…………じゃあ、火竜と黒竜の子供が、雷竜と子供を作って、その子供と雷竜の間に出来た子供が、たまたま、先祖返り的に、濃い赤で生まれて来るって事は?
それなら、雷竜と雷竜の子供だから、雷竜が凄く赤い可能性は無いか?」
「…………それなら可能性があるっスか?」
「主様が、仰るなら、その可能性もあると思います」
「うむ……。尻尾の事を置いておくならば、あり得ない事は無いと思うが…………」
「ご主人様、その可能性もあるじゃろうが、非常に低いじゃろう。
火竜の住処は此処よりも更に東、黒竜の住処からは丁度、世界の反対側じゃ。
そして、火竜と雷竜は住処が近かった事から、非常に仲が悪い。
可能性が無いとは言わんが、とても低いと思うぞ」
シロクラゲが、ちょっと説得力の有る事を言う。
確かに、それなら、偶然赤かっただけの可能性と大差無いかもしれない。
「そうだな……議論するより、本人に聞いてみるか!!」
そう言って、“神聖属性魔法”で、回復する。
起きた瞬間、逃げようとしたので、足を掴んで、竜語で、
「逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ…………分かったか?」
と、笑顔で聞くと大人しくなった。
“獣操術”で契約をして、いつもの、小さくなる首輪に“スキル 言語理解LV1〜9”を付与して着ける。
「よし、今日からおまえはアカリュウだ。
じゃあ、とりあえず、コイツらみたいに小さくなってくれ」
「はい…………」
そう言って、アカリュウは小さくなろうとして、
「うううっ!!く、苦しい!!」
と、胸を抑えて苦しみ出す。
「!!アカリュウ、いい!!元に戻れ!!」
「は、はい!!……っはぁ…はぁ…………」
「アカリュウ……胸の辺りに、何かあって、それが圧迫して苦しかったのか?」
「はい、多分…………」
「…………なあ、おまえは元々赤かったのか?」
「「「!!!!」」」
「ううん、もっと小さい頃は、黄色かった」
「「「!!!!」」」
「尻尾も普通だったんだな?」
「うん…………」
「そうか……おまえの腹の中にその魔導具を入れたのは誰だ?」
「「「!!!!」」」
「…………分からない……。
でも、ヒトだった…………」
「「「!!!!」」」
「そうか…………」
それから、アカリュウから詳しく聞いてみた。
アカリュウはこの山の近辺で、生まれ、生まれて間もなく、ヒトに攫われたらしい。
そこで、身体を裂かれ、魔導具を入れられたらしい。
その後、檻に入れられて、手足を拘束され、しばらくエサだけを与えられる生活をしたそうだ。
最初は、何の肉か分からないモノだったそうだが、それが魔獣の死体になり、弱った魔獣をエサにされる様になった、ある日、広い部屋で火竜と戦わされたそうだ。
戦わされたと言っても、火竜は拘束されていて、一方的に攻撃するだけだった様だが、アカリュウが攻撃する中で、火竜の拘束が千切れて、火竜が暴れ出し、建物もアカリュウの拘束も破壊した。
飛び経って行く火竜を見て、自分も飛んで逃げたらしい。
その後、本能の赴く方に飛んで行くと、風龍と争いになり、風龍を倒して喰らったところ、尻尾が龍に、火竜と何度も争い、何度も火竜を喰らう内に、どんどん、赤くなって行ったそうだ。
「…………ここに戻って来たのは、帰巣本能とかだろうが、この場に居続けたのは、龍脈の魔力で、食事を摂らなくてもいい様にする為か?」
「はい…………」
「相手の能力を吸収すると、どうなるんだ?」
「……だんだん、自分が自分じゃ無くなる様な感じがして…………」
「「「!!!!」」」
「分かった、オレが何とかしてやる!!」
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クルス商会本部の応接室。
オレは、“魔王達”と、向かいあって座っていた。
「済まないな。つい、此の間、代理で良いって言ったのに」
「そんだけの事なんだろ?」
西の魔王の後ろには、聖剣と天使種族対策の代理責任者、最初に魔王のフリをしていたムキムキさん。
「ええ、クルス様、ルザンクス陛下の言う通り、クルス様が必要と思われた事であれば、ご遠慮なくお呼び下さい」
南の魔王も代理責任者のほっそりしたメガネの男性を連れている。
キスラエラの後ろにも、宰相が控え、オレの後ろにもダルグニヤンが控えている。
「じゃあ、早速進めよう。ダルグニヤン」
「はい」
そう言って、ダルグニヤンは一旦部屋を出て、アカリュウと共に入って来る。
「「「!!!!」」」
オレもディファレントルームから、金属の板を1枚取り出して、テーブルに置く。
「トルナ王国の元“豪雷竜”の住処で、この“雷竜”を見つけた」
「な!!確かに雷竜だな…………」
「ああ、そして、この金属板が体内に埋め込まれ、“雷竜”が風龍と火竜を取り込んだ結果、この姿になったんだ。
この金属板の効果は、“喰らった相手の長所を自身と取り替える”と言うモノだ」
「“聖剣”の等価交換の理ですな。
別の聖剣の効果をこの金属板に移したか、聖剣の一部もしくは、全部をこの金属板にしたか…………」
「ああ。そして、この“雷竜”が、この金属板を埋め込まれたのは、ほんの300年程前だというのも問題だ」
「つまり、どっかの誰かが、まだ、聖剣を持ってる可能性が高ぇって事か…………」
「ああ、それともう1つ。
もしも、この金属板の効果の聖剣が、天使種族と悪魔種族を撃退した際にも活躍していたら、天使種族の歌の力を持つ者や同じ効果の魔導具が存在するかもしれない」
「「「!!!!」」」
「歌への対策の必要性が高まってしまった。
それと、ギムルスタ陛下の言った様に、仮に聖剣1本全部を費やした金属板だったとしても、第2の聖剣ならば最低、もう1本。第4の聖剣ならば最低、もう3本存在する可能性がある。
もしも、一部だった場合は、あと、何枚の金属板があるかも分からない」
「研究してやがる施設の場所は分かってんのか?」
「いや、まだ分からない。
だが、風龍と出会っている事を考えるなら、オオサカ国かキルス王国の可能性が高いと思う」
「後は、ルールナ都市国家連合の南部地域でしょうか?」
「少し生息域を離れた者が居ればその可能性も有ると思いますが、ムチャリンダの治める龍人の里を越えて行く風龍は殆どいないでしょうけど」
「!!クリシュナ様、失礼な発言をしてしまい申し訳ありません!!」
「いいえ、ギムルスタ。“原初のモノ”とて、絶対では無いから気にしなくてもいいから」
「取り敢えず、オレの方でも探してみる。
もしかしたら、国に準じない組織で、拠点を移している可能性もあるから、何処かに集中させるよりも今の情報網に追加くらいが良いと思う」
「そうだな、オレの方でもそれらしいモンがねぇか、さらっとく」
「私の方は、オオサカ国とは付き合いが多いので、そちら側から探ってみます」
こうして、魔王達の協力も得て、聖剣実験施設(仮)を探す事となったのだった…………




