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第2章 ミミッサス大森林②

ミミッサス大森林②



▪️▪️▪️▪️



ここは、林業と冒険者の村ラットック村。


ミミッサス大森林にほど近いこの村にそのミミッサス大森林から大きな球が転がって来ていた。


2階建て住宅ほどのその茶色い球は人が走るくらいのスピードで徐々に徐々に近づいて来る。


何事かと大勢のギャラリーが集まる中、その大きな球は村の入り口の横でピタリと止まり、地面から迫り上がった台座に固定された。


球の後ろから1人の青年が現れて、そのまま村に入って来る。


そこそこ男前だが線の細い、トレーナーにリュックを背負っただけの青年だ。

ギャラリーに色々と質問されているが、笑顔のまま、無言で村の奥へと進んで行った。




▪️▪️▪️▪️




「すいません、大きな魔獣を倒したので、運んで貰えませんか?」

昨日、色々教えてくれたギルド職員のおじさんが見えたので声を掛ける。


「ん?大きな魔獣?どんくらいだ?」

その質問に、向かいの喫茶店を指差す。


「あれくらいです」


「はぁ〜?」


「取り敢えず大き過ぎて危ないので村の外に置いてるんで付いて来て貰えませんか?」


渋々、半信半疑と言う顔でギルド職員のおじさんは裏から血だらけのエプロンを付けたおじさんを呼び、着いてきてくれた。


ちなみに血だらけエプロンのおじさんは“ジャックさん”らしい、あの大きなクマもちゃんと、しっかり切り裂いてくれそうで頼もしい。




▪️▪️▪️▪️



2人のおじさんを引き連れて、村の入り口に来る。

途中、ギルドでオレ達の会話を聞いてた暇そうな冒険者や仕事をサボりたそうなギルド職員もゾロゾロついて来た。


大きな球の周りはギャラリーでいっぱいになっていたが「危ないので離れて下さい。魔法に失敗して生き埋めになっても助けませんよ〜」と、声を上げるとザザザザッっと場所が拓けた。


“グランドディフォメイション”で球を台に変える、中から出て来た大きなクマにギャラリーが大騒ぎを始めた。


「ウルトラグレートベアーか?こんなデカいの見た事ねぇぞ!!」


「爪が赤いぞ!!炎の爪じゃねぇのか?」


「そんなバカな!!アイツはBランクパーティーが束になっても倒せなかったんだぞ!!Aランクパーティーのヤツらが来てるなんて聞いてねぇぞ?」


「Aランクパーティーだって炎の爪に勝てるかどうかわかんねぇよ、Aランクに成り立ての連中が敵う相手じゃねぇ!!」


そんなギャラリーの騒ぎの中、我を取り戻したギルド職員のおじさんが叫ぶ。


「ジャーック!!鑑定ー!!」


「…………炎の爪だ!!100年以上討伐されなかった炎の爪だ!!」


「!!クルス君だったな、取り敢えずオレと一緒にギルドまで来てくれ。

ジャック、解体班集めて出来るだけ早く、バラして村の中に入れろ」


ギルド職員さんの指示でジャックさんはギルドに向かって走って行った、凄く速かった。


オレ達は歩いてギルドに戻った、着いて来ていた冒険者とギルド職員は3分の2くらいが一緒に戻って来た。クマに興味があるかオレに興味があるかだろう。


カウンターに座り、向かいにおじさん、その後ろに椅子を持ってきてムキムキのおじさんと若いお姉さん(見た目は25、6歳見た目は)が座る。


「自己紹介してなかったな、オレはビーンズウッド。

このギルドの副ギルドマスターで元Aランクだ」

と名乗った。


『!!切り裂く方じゃなくて、豆の木との組み合わせだったか!!』

と、血だらけエプロン姿を思い出しながら、


「昨日お会いしましたが、改めて、レンジ クルスです」


「まず確認したい、“仲間はどうした?”」


「んん?ああ!パーティーで倒したと思ってるんですね、で、オレが1人だから仲間が殺された。もしくは、オレが仲間を裏切った……違いますよ、オレが1人で倒しました」


「!!……」


おじさん改めビーンズウッドさんも後ろの2人も目を見開く!!


「さっきのは“グランドディフォメイション”だよな、取り敢えずステータスプレートを見せてくれるか?」


“スキル 偽装”を発動してステータスプレートを渡すと後ろから怒鳴られた。


「おい!!にぃーちゃん、大法螺吹いてんじゃねぇーぞ!!」


その声に『“新人冒険者絡まれイベント”来たぁ〜!』と、思いつつ振り向く。


金髪、革鎧、ロングソードのザ冒険者な同年代くらいのにいちゃんとムキムキ戦士、金髪ロング美女魔法使いが直ぐ後ろにいた。


「お前、昨日移動届け出してただろ!!オレらはその横で買取手続きしてた。

お前はレベル30のDランクだろ!!

横からステータスプレートが見えたんだよ!!」


凄腕の冒険者が他所から来たのか?と、半信半疑だった視線が一気に疑いの眼差しになる。


「静かにしろランド!!嘘かどうかはこれからオレが聞く!!」


「!!どう考えても嘘に決まってんじゃねぇか!!わざわざ聞く必要なんかねぇだろ!!」


「そうとも言えんから聞くんだ!!

クルス君、すまないがコイツらにステータスプレートを見せてもいいか?取り敢えず大人しくさせたい」


「良いですよ、減るもんじゃ無いですから」


オレがそう答えるとビーンズウッドさんは後ろの人にも見える様に立ち上がってステータスプレートを向けた。


「!!レベル130!?昨日は30だった、間違いない!!」


ランドが後ろを振り向くと後ろの2人も頷く。


「たった1日でレベルが100も上るか?」


「そんなの聞いたことねぇよ!!でも、たったレベル130で炎の爪が倒せるか?

アイツはレベル2,000以上だぞ!!」


ザワザワし出したギルド内にビーンズウッドさんの声が響く。


「分かっただろ、ランド達の見間違いじゃねぇ!!オレも昨日見て確認した!!

それに昨日は土属性魔法のレベルも3だった!!詳しく聞くから静かにしてろ!!

ランド、お前らも座れ!!」


「ビーンズウッドさん、オレは昨日この村に来たばかりだし、冒険者にも今月なったばっかりなので良く分かってなかったんですが、アレは凄く強い魔獣だったんですよね?

皆さん気になるみたいですし、あっちのテーブルで皆さんにも分かる様に説明しましょうか?」




オレの提案で席を移る。4人掛けの酒場のテーブルの向かいにビーンズウッドさん、ビーンズウッドさんの隣にムキムキさん。


お願いした紙とペンを持って来てオレの隣に若いお姉さんが座る。

テーブルの周りは大勢の冒険者とギルド職員の輪になっていた。


「では、まずこの中に土属性魔法がLV4以上の人は居ますか?」


と、声を掛けると、ランドの後ろに居た美人魔法使いを含めて5人手を挙げた。


「なら、貴方達も頑張って、運が良ければ倒せます」

ザワザワする。


「やることは単純です。落とし穴に落として埋める。これだけです。

ただ、工夫が必要です。

その工夫を説明する前に、貴方、自分が1番“凄い”と思う“ストーン”を見せて下さい」


そう言って、ランドと居た美人魔法使いを指名する。


「“ストーン”?ここで?分かったわ、ちょっとその辺りのテーブルと椅子を退けてくれる?」

ささっと、テーブルと椅子が退けられる。


「“ストーン”!!」


縦横、2m位の大きな岩が現れた。


「それが1番凄い“ストーン”ですか?」


「ええ……」


ハテナ顔でこっちを見る美人魔法使いに、にっこり笑ってオレは席を立って美人魔法使いの周りをジロジロ見ながらゆっくり周って席に着く。


「見ていて下さい。“ストーン”」


オレの魔法でテーブルの上にペットボトルサイズの美人魔法使いが現れた。

目の前に実物が居たのでパーフェクトな仕上がり、もちろん色付きだ。


「「「おおぉ〜〜!!」」」

と、歓声が上がる。


「頑張ったらと言ったのは、このように魔法のコントロールがしっかり出来たらって意味です」


さっきまでの興味本位と疑いの視線が一気に真剣なものになった。掴みはバッチリだ!!


「さて、本題の落とし穴ですが、もちろん使うのは“グランドディグ”です。

こういう形に掘ります。」


そう言って、準備して貰った紙に底がギザギザで口の長いフラスコの様な絵を描く。


「このギザギザはストーンで出来るだけ鋭く作ります。これによって足場が悪くジャンプし難くして、飛び出にくい様に入り口は細くなってます。そしてよじ登りにくい様に側面は球状にしてあります」


そして、フラスコの絵の中にグルグルと渦を描く。


「最後に“グランドウェーブ”をこの球状の部分から内側に渦を描く様に使って埋めます。

後はただ、窒息死するのを待つだけです。

ああ、“グランドウェーブ”は最後じゃ無かったですね。

“グランドディグ”で掘り出して完了です。


運の要素は落とし穴に落とせるかどうか、オレは今回使いませんでしたが、餌を使ったり、囮が誘き寄せたりしても良いかも知れませんね」


説明を終えて、周りを見る。目を見開いてる人と尊敬の眼差しと半々位だ。


「すげぇ……天才だ……」


「こんな方法があったなんて……」


「ああ、強い魔獣は落とし穴くらいじゃ、直ぐに飛び出して来る。

時間稼ぎにしかならないと思ってた…」


「落とし穴の発想もすごいが、穴の中で“グランドウェーブ”を使うなんて考えた事もなかった」


「そもそも土属性魔法なんて戦場の準備係か大工位しか使い道がないと思ってた」


「ああ、土属性魔法だけで戦う奴なんて初めて見た」


口々にみんなが感嘆を漏らす中、ビーンズウッドさんが姿勢を正して真剣な表情を作る。


「クルス君、脱帽だ。正直、疑っていた謝らせて欲しい。

ただ、どうしても、もう1点理解出来ない事がある。移動だ。


昨日、オレと話して直ぐに森に向かったとしても、炎の爪の生息域へ往復出来たとは思えない、まして帰りはあの巨大な球を持ってだ。


疑うのは申し訳ないと思うがどうか教えて貰えないだろうか」


「そうですねぇ〜……なら、実演して見せましょうか?ここでは危ないので村の外で」


「そうして貰えると助かる」

ギルドにお留守番を1人残し、もう一度村の外に向かった。



▪️▪️▪️▪️



日も沈みかけ、村の入り口では大急ぎでクマ運びがされていた。

その様子を尻目に解体場から少し離れた所で立ち止まる。


大分減っていたギャラリーも何事かとチラチラ見ていた。


「じゃあ、まず森の奥まで行った方法を見せますね」

そう言って“高速ストーンキック走法”をゆっくり目でやってみせた。


“高速ストーンキック走法”今日思いついたオレの必殺技だ!!

これは、地面を残して“グランドディグ”を使ったとこから思いついた。


見えない所に魔法が使えるなら、そもそも手を翳して魔法を使う必要があるのか?


と、考えた。そう、オレは知っているじゃないか、両手をポケットに突っ込んで魔法を使う者達を!!


そこで、キックのタイミングで足の裏に“ストーン”で薄い足場を作ってそれを蹴る事を繰り返して空中走法を実現した。


ギャラリーが見守る中、空へと駆け上がり、調子に乗って空中で駆け巡って見せ、勢いよく着地する。

ジャンプを繰り返しているだけなのでゆっくり着地は出来ないのだ。


「クルス君、今のは……」

「“ストーン”で薄い足場を作ってジャンプし続けるんです。

足の裏で魔法を発動出来る様になれば誰でも出来ます。

これが移動方法でこっちが運搬方法です」


そう言って、“グランドディフォメイション”で転がして来たのと同じくらいの大きさの球を作ると、“ストーンバレット”で森に向かって吹っ飛ばす。


「こうやって“ストーンバレット”で運びました。

これも、“グランドディフォメイション”で作った石を“ストーンバレット”の弾丸だと認識出来れば誰でも出来ます」


「確かに……土属性魔法だけで技術さえあれば可能だ……。

クルス君、色々と疑って申し訳無かった。この通りだ」


そう言って頭を下げるビーンズウッドさん。


「討伐報酬は直ぐに渡せるが、素材の換金に時間が掛かる、大きいからな。

別々に渡す事も出来るが出来れば、明日の夕方にまとめて取りに来て貰えるだろうか?」


「わかりました、明日取りに行きます」

そう答えると、その場で解散となった。



▪️▪️▪️▪️




宿屋に戻って夕食を食べて風呂に入る。


風呂から部屋に戻ろうとすると女将さんに声を掛けられた。

オレに客が来ているからどうするか聞かれたのだ。


バスタオルを巻いただけの格好だったので、服を着るから少ししたら部屋へ案内して欲しいと伝える。

着替えて待っていると、やって来たのはランド達3人だった。


「さっきはすいませんでした!!」

部屋に招くと開口一番、頭を下げて来た。


「良いですよ、気にしてませんから」


『むしろ、イベント回収だと思ってましたから』


「ありがとうございます。それと、もし、よかったらオレ達のパーティーに入って頂けませんか?リーダーとして!!」


「え?メンバーの勧誘じゃなくてリーダー?」


「はい!!」


「皆さん、オレより高ランクですよね?」


「はい!!3人ともBランクでパーティーもBランクです!!」


「レベルもきっとオレより高いですよね?」


「はい!!3人ともレベル200は超えています!!」


「なんでオレがリーダー?」


「オレ達バカなんで!!」


正直、断る以外の選択肢は無かったがわざわざ、今日の今日で宿屋まで探して来た人達だ。


一応話しを聞こうと、座って貰った。

椅子は2脚しか無かったので椅子を勧めて、オレはベットに座る。


ムキムキさんは腕を組んで立ってるパターンの絵面を予想していたが、早々に椅子に座り、オレの横のベットに美人魔法使いさんが座った。


ムキムキさんはグッサスさん、美人魔法使いさんはルナルーレさんだそうだ。

イベント感を感じさせる口調でランドは語り出した。


「オレ達は元々は5人パーティーだったんだ……」


パーティーを組んだのは5人、ランドの兄、ランド、ルナルーレの3兄弟とグッサスと弟の兄弟だった。

5人共戦災孤児で、孤児院で一緒に過ごし軍に入るのが嫌で冒険者になったらしい。

ラットック村に来たのは18年前、この村でBランクまで上がったらしい。

ランド達の兄は戦士、グッサスの弟は魔法使いでリーダーはグッサスの弟だったそうだ。


堅実な性格のリーダーで脳筋4人をしっかり纏めていたが、3年前、“炎の爪討伐レイド”が組まれた。

丁度その時、ランドが病気になり、堅実なリーダーは4人では危険だからと森の浅瀬での討伐や採取の依頼だけを行っていた為、収入が下がっていた。


ランドの薬代で出費が増えていたのも重なり、レイドならばと参加する事になった。


結果はもちろん敗北、それも大勢の犠牲者が出た惨敗だった。

その中でランド達の兄とグッサスの弟はルナルーレをグッサスに任せて足止めに後方に残り帰って来なかった。


ランドは自分の病気の所為でレイドに参加させた事を、グッサスとルナルーレは一緒に逃げなかった事を悔いて、この村に止まり、次の討伐レイドが組まれる事をこの3年間待っていた。


そこへオレが1人で“炎の爪”を討伐したと言う。

最初はもちろん信じられなかった。


昨日、同じタイミングでカウンターに居たのは偶然だがステータスプレートを覗いたのは他所から来た冒険者に興味があってワザと覗いたらしく、それについても再度頭を下げて来た。


オレの倒し方の説明を聞き、魔法の実演を見て、そして解体されて行く“炎の爪”……


“炎の爪”は死んだ。偶然死んだんじゃ無く、オレに倒されて。


“仇を取ってくれた事への感謝”と“自分達で仇が取れなかった事への無念”、“目標を失った事への喪失感”、3人共同じ気持ちでしばらく、ポツポツと今後について話し合った。


結果、“自分達で決められないなら誰かに相談しよう!!”、“それなら新しいリーダーに誰かになって貰おう!!”、“なら、仇を取ってくれた“あの人”しかいない!!”と、テンションが上がってしまい、オレが去って行った方の宿屋を順番に聞き込んで此処にたどり着いた。


と、言う話だった。



『家族の話しとかするから、“イベントか!?”って思ったのに、もう解決してんじゃん。

それより、最初から自分達はバカだって言ってたし、グッサスさんの弟以外は脳筋だって言ってた。

“美人魔法使い”を絵に描いた様な“知的な美女”なのにルナルーレさんもバカなんだ……

今のノリで一緒になって来たんだからバカなんだろうな…………

いや、美味しいな、“ギャップ萌え属性”なんだな!!けど…………』


「わかりました。お断りします」


「ダメですか……」

と、ランド。


「頭が悪いからですか?」

と、ルナルーレ。


「理由を聞いてもいいですか?」

と、グッサス。


「頭が悪いからじゃないですよ、ルナルーレさんが本当に頭が悪かったとしても、そこはチャームポイントでしょう、そっちの方が可愛らしいですよ」


そう言って、隣のルナルーレさんに笑顔で答えると、恥ずかしそうにして俯いた。

ギャップ萌えマジ可愛い!!


「お断りした理由は、オレがパーティーに入るつもりが無いからです。

皆さんのと、いう意味ではなく、どこのパーティーにもって意味です。

オレはずっと冒険者を続けようと思っている訳ではないので」


「!!冒険者じゃなくて、騎士か軍人になるつもりって事ですか!?」


「いえいえ、騎士や軍人には絶対になりませんよ。

まだ分からないですが、一応は自分のお店を持ちたいなぁ〜って考えてます」


「あんなに強いのにですか?」


「オレは別に強くは無いですよ。

さっきも説明しましたが、オレのやった方法は練習さえすれば誰でも出来ることですよ」


「あ、あの、クルス様、パーティーがダメなら、弟子にして下さい!!

一緒に居たいんです!!」


『!!!“クルス様?”“一緒に居たい?”惚れたのか?今日の今日で?

落ち着け、2年のブランクで対応力が下がってるな。今はまだ1人で行動したい。

今回のフラグは諦めよう』


「そう思って貰えるのはとても嬉しいですが、残念ながら、この村にもずっと居るつもりは無いんです。

1〜2ヵ月、長くても3ヵ月くらいで出て行くつもりなんで……」


「なら、着いていきます!!」


「オレ達も着いていきます!!

それに、妹はおっちょこちょいですが、家事全般キチンとこなしますし、料理は一流です!!」


「ああ、ルナルーレの料理は高級レストランレベルです。お菓子も得意です」


「えぇっと……お見合い?」


「えぇ!!その、えっと……」


「貰って頂けますか!!」

「あなたになら任せられます!!」


そう言って、頭を下げるランドとグッサス。


『ノリいいなぁ〜……話し全然変わってんだけど……』


「ゴホンッ!!ルナルーレさんみたいな美人でかわいい女性なら本来は大歓迎なんですが、今はまだ1人でいないといけないんです。


恋人とか結婚とかって意味ではなくて、単独行動って意味で。

それについては、理由は話せません。


ただ、こうして出会ったのも何かの縁だと思うので相談には乗りますよ、報酬はルナルーレさんの手料理でどうですか?」


「ありがとうございます。その、すいません、1つ聞いても良いですか?

オレ達じゃあ足手纏いですか?」


「すいません、そうです。でも、能力的な意味では無いです。

オレが1人で行動出来なくなるって意味です。オレには今、余り時間がないんです」


「わかりました。よろしくお願いします。いいな?ルナルーレ」


「はい、でも、私も1つ質問してもいいですか?

クルス様は先程、“今はまだ”と、仰いました。


なら、もし、その“話して頂けない問題”が解決したら、えぇっと、そのぉ…私を貰って頂けますか!!あっ、あの!!妾でも愛人でもいいので……そのぉ〜……」


「ルナルーレさんさえ良ければ喜んで。ただ、今日出会ったばかりなので、お互いを知って、オレがこの村にまた戻って来た時にルナルーレさんにその気があればですが。

何年後になるかもわかりませんし……」


「待ちます!!待ってます!!」


そう言ってキラキラした瞳で見つめて来るルナルーレさんは少女の様に可愛らしかった……



その後、今後のルール決めを行った。


まず、ランド達に言われたのは“さん付けと敬語”を辞めてくれと言う要望だったので了承して、なら3人も“タメ口、呼び捨てで”と言うと、


「「「それは、出来ません!!」」」


と口を揃えて反対された。ならオレも今まで通りでと言うと、


「「「さっき、分かったって言いました!!」」」


と、また完璧なハーモニーを喰らった。幼馴染みのシンクロ率は半端ない。

ならせめて、苗字で無く名前呼びでと提案するとルナルーレから大賛成を頂き採決された。


次に相談内容についてルールを決める。


今後についてはこのままラットック村で冒険者をする事で異議無し。

ただ、オレを待つ事が目的なら3年後には、今後について話し合う様に言う。


「300年でも待ちます!!」と強く主張するルナルーレを無視して、ランドとグッサスに真剣な眼を向ける。


「もし、オレがこの村を出てから3年以内に戻って来れない様なら必ず連絡する。

もし、なんの連絡も無く3年経ったらオレはまず間違い無く死んでる。

必ず今後の方針を話し合え」


若干命令口調で強く念を押す。涙目で見つめて来るルナルーレに笑顔を向けて、再度真剣な表情でオレが問題を抱えている事、3年以内に戻って来る約束をしている事は絶対に他言しない様に確約させて、冒険者としての相談についてに話しを移す。


オレが家を買う予定でその為にまずBランクになろうとしている事を話すと、3人の家に一緒に住まないかと誘われたが、”オレが買う”事と“半年放置で自動売却される”からだと説明すると、それ以上は聞いて来なかったので話しを進める。

何となく察してくれたのだろう。


家を買うまでは、食事と風呂を済ませてオレの宿へ、家を買ったらオレの家で食事と風呂をとってそこで相談を受ける。

何日か森に籠る場合は前もって予定を伝え合う。


相談は基本、翌日のターゲットに対しての攻略方法をアドバイスして、その結果と課題。また、翌日のターゲットの攻略方法のアドバイスを繰り返す予定にした。

それ以外は何かあればその都度という事になった。


報酬のルナルーレの料理は、オレが家を買ってから夕食だけで良いと言ったが、宿屋に居る間はお弁当を作ってくれる事になって、家を買ってからも「出来るだけ作ります」と笑顔で押し切られた。


時間も遅くなったので相談会は明日からと、いう事で解散となった。




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