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40話 キノコと怪しい実験

【実験一・音楽鑑賞】


「……耳に該当する器官ってどこにあるのかしら?」


「とりあえず、携帯で適当に曲を流してみるよー! これ、私のお気に入りなんだぁ」


「お、ヘヴィメタルか? いいセンスじゃないか橙乃」


「騒音。うるさくて、工事音……みたいです……どこどこどこっ、ぎゅあん、ぎゅあーん」


「シーナちゃーん? ちょっとこっちに来てくれるかなぁ? いいものあげようねー」


「接近。いいもの? わーい……え、なんで……ヘッドフォン? ちょ……ぎゃああああああ!」


「メタルは慣れるまでは抵抗あるからなぁ。でも一度ハマると抜け出せなくなるぞ」


「私は結構好きかも。杏、今度CDを貸してくれる?」


「うんっ! とりあえず布教用のアルバムを百枚くらい持ってくるね!」


「えっ……ひゃ、ひゃく?」


「ぶくぶくぶくっ……」


「シーナが泡を吹いて倒れてるけど、いいのか?」


成果報告その一・ヘヴィメタルは奥が深い。


【実験二・視力検査】


「曲がうるさくて起きてみれば……なぜシーナ・ロイド・バレトリアが倒れている?」


「うるさい……? 江園君にも【いいもの】が必要かなぁ?」


「こら、遊んでないで次の実験に移るわよ」


「おーい。なんで俺だけ、こんなに後ろに離されているんだー?」


「視力を検査するの! 黒板にひらがな五十音を大小バラバラに散りばめて書いておいたから、ランダムに指差された文字を順番に読み上げてくれるー?」


「ああ、分かった! いつでもいいぞー!」 


「行くわよ。はいっ! テンポよく口に出していって!」


「えっと……ま、し、ろ、ゆ、う、む、を……あ、い……し、て、る!」


「……はぅっ」


「優夢ちゃん……?」


「ひぃっ! ち、違うのよ杏! これは偶然なのっ!」


「そっかぁ。それならいいけど……今の、もう一回やるよね?」


「も、勿論よ! 次は杏の番だから! ねっ! 好きに指差していいわよ!」


「えへへっ! わぁーいっ! じゃあ、いっくよー!」


 成果報告その二・抜けがけはダメ、ゼッタイ。


【実験三・嗅覚】

「幼稚な実験ばかりだな。ここは俺が本気を見せるとしよう」


「次は針馬の番か。今度こそまともなのを期待するよ」


「まずは丈人、貴様の視界を奪う。この布でお前の傘全てを覆わせてもらうぞ」


「うへぁ、真っ暗で何も見えなくなったなー」


「では……ハァ、ハァ、この匂いを嗅いでみてくれ……」


「くんくん……なんだ? 汗っぽい」


「ハァ、ハァ、ハァ……どうだ? なんなら舐めてみてもいいんだぞ」


「何をしてるのよこの変態っ! 死ねっ!」


「その細いモノを握り潰されたいのかなぁ? 私、容赦しないよぉ?」


「ま、待て! これからがいいとこ……ぐべぁっ!」


「……? よく分からなかったな」


 成果報告その三・指先を近づけるくらい、いいではないか。


【実験四・味覚】


「凄惨。目を、覚ましたら……江園先輩の、指が……あらぬ、方向に……ぷぷっ」


「うぐぉ……おのれ橙乃杏、この借りは必ず返す……」


「はーい、お次は私の番だね! じゃじゃーん、ここに五つのコップを用意したよ!」


「五つ? 中身は何が入ってるんだ?」


「それぞれに砂糖、塩、お酢、わさび、私の愛が入ってるの!」


「甘い、しょっぱい、すっぱい、辛いまでは分かるけど……愛って?」


「き……木之崎君のえっちぃ……もじもじ」


「ホワイ! マジで何を入れたんだよ橙乃!」


「御託はいいから早く飲みなさいよ丈人君。全部にストローをさしてあげたから」


「え、全部飲むのか? こういうのって普通は一つだけだろ?」


「推薦。これを、どうぞ……木之崎、先輩」


「このコップだけ緑色だぞ! わさび入りって丸分かりじゃないか!」


「あはっ。優夢ちゃんに劣らず、木之崎君もツッコミが上手だねー」


「くっ! ええい、ままよ! こっちのコップを……ちゅー……ちゅー」


「やったぁっ! それね、私がたっぷり愛を込めたコップだよ! 美味しい?」


「凄く…………普通の水だ」


「ほぇーっ」


 成果その四・私の愛は無味無臭。


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