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職人の街
「風雨!」
「すまない。比べるようなこと言って」
「いいよ、別に。怒ってはいないよ」
「そうか……」
二人はてくてくと歩き始めた。
「この丘の上の屋敷だ」
と帆咲が言う。
「この丘の上にシェリーが―」
と帆咲の肩から降りて風雨はかけていく。
息を切らして。
「はっはっはっ」
屋敷の中に入る風雨の後を追いかけていく帆咲。
いない。
一階のどの部屋にもいなかった。
お次は二階だ。
見ると一番大きな部屋に彼女はいた。
どうやら椅子に座っているようだ。
ドレスの裾がふわり、風でたなびいていた。
薄ピンクに白いリボンのついたドレスだった。
後ろからでも分かる。
彼女がシェリーと分かった今、迷わずにかけていく。
走って、走って、走って、息を切らして走って行く。
「シェリー」
ばっ! と見るとそこには確かにシェリーはいた。
白骨化して……。
「……」
「⁉」
「シェリーと」ただ肩を落とす風雨が立ちすくんでいた。
一方、帆咲の方は何も言わなかった。
ぺんぺんぺんぺんぺんぺんぺん。
よいっしょ!
「ふう、これでいいだろ」