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#100

〔スノーちゃん!?〕

〔冷静になろう。クオーツゴーレムだぞ!〕

〔討伐指定はA級だし。なにより――〕


 私は一度、クオーツゴーレムに敗れている。

 死に目に遭って、鈴音ちゃんや支樹さんに助けられて。

 正直なところ、トラウマになっていることには、違いはない。

 視聴者からしても、それは同じだろう。カメラを通して、(推し)が死に逝かんとしている様子をまざまざと見せつけられたのだから。

 結果、私は助かったし。命は繋がっているとはいえ。その心的外傷は決して浅くない。


 私自身が、そうだったから。よく、わかる。


(でも。だからこそ――)


 真っ直ぐに、その巨躯を見上げる。


(アレは、私が斃さねばならない)


 無謀だ、と。見ている人たちは言うだろう。

 だが、どうしてだろうか。不思議と、不安は感じない。


 きっと、やれると。自分が、信じられている。

 いや、私だけじゃない。

 鈴音ちゃんも、陽鞠ちゃんも、千癒さんも。私の宣言を止めない。私が勝てると、そう、信じてくれている。


 だからこそ。


 あの日の悪夢を。

 みんなにとっての。そして。私にとっての悪夢を、打払うために。


「陽鞠さん、千癒、陣形を少し変えます。盾持ち(タンク)は依然として私が。遊撃を陽鞠さん、千癒は火力役アタッカーをお願いいたします」


 頼りになる我らが白兵指揮官は、私の意図を汲んで、そう指示を出して。

 そして、こちらへと振り向くと。


「スノーホワイトさんは、クオーツゴーレムの討伐を、お願いいたします」


「うん。了解!」


 一切の疑いのない声音で、言う。


 魔物の大群は、鈴音ちゃんたちが引き受けてくれている。

 ありがたく、私は目の前の因縁クオーツゴーレムに集中をさせてもらおう。


 クオーツゴーレムの攻撃は、威力が高いことはもちろん。かわすことも少々難しい。

 元々の体躯が巨大なこともあって。クオーツゴーレムの攻撃自体な大振りなものが多い。

 だからこそ、見極めること自体は難しくはないが。しかし、巨大だからこそ、攻撃範囲が広い。

 面での攻撃は、動作のわかりやすさというデメリットを帳消しにするだけの制圧力を有している……が。


「ふんっ!」


 薙ぐようにして振るわれたその巨腕。そのインパクトの瞬間に、こちらも攻撃を合わせる。

 《あいしくる☆ぱにっしゃー》――魔法で作り上げた、氷の大槌だ。


 正直なところ、魔法少女らしい、かわいい感じの武器ではないのが難点。さっきも、かわいらしくない声が漏れちゃったし。


 でも、今私がやるべきは、みんなの明日を守ること。

 ならば、これが最善。


 クオーツゴーレムへの相性とか、そういう観点の話もなくはない。

 でも、それ以前の問題として。私の、適性の話。


「前はボコボコにされちゃったけど。今回は、そうはいかないよ」


 私は、魔法少女に憧れた。だからこそ、こうして魔法少女として活動をしている。

 でも、じゃあそれに対して才能があるかは別であって。

 私に適性がある()()()スキルは、たしかに氷系統だ。

 でも、では氷系統が最適性かと言われると、そうではなくて。


「だって私は、お前(クオーツゴーレム)の天敵だからね」


 地面を強く蹴り出して空中に飛び上がると、弾かれて操作がままならない状態の巨腕へと狙いを定めて。

 再度振るったあいしくる☆ぱにっしゃーは、クオーツゴーレムの腕をものの見事に割り砕く。


 私の最適性は、身体強化。

 特に、筋力強化ストレングスなどの攻撃力アップに適性がある、ゴリゴリの殴り特化(パワータイプ)アタッカーだ。


〔スノーちゃんって、あんなの使えたの!?〕


 今までも、使えるかどうかで言えば使えたけど。ちゃんと、という意味で言えば、使えるようになったという方が正しい。


 あんまりかわいくないし、魔法少女っぽくなかったから。今までずっと魔法の――放出系スキルの練習をしてきたし、ずっと魔法で戦ってきていた。


 もちろん、今までにいろいろと言われてきたことはある。

 教えてくれた先輩冒険者にも、術師ではなく別の道を行ったほうが手っ取り早く強くなれる、とも言われた。

 でも、そうはしてこなかった。だって、私は魔法少女になりたくて、冒険者になったのだ。

 だからこそ。理想を諦めて現実を手にするだなんて。元より選択肢になかったから。


 ――じゃあ。なんで今、私はこんなイカつい武器を担いでるのかって。


『理想と現実のどちらか、で悩むくらいなら。理想も現実も、両方とればいいだろう』


 まあ、正論という名の無茶苦茶を言ってくる人に師事しちゃったから、なんだけども。


『できると思う?』


『それを言うなら、鈴音の方が余程無茶苦茶なことをやっているがな』


 前衛職どころか、そもそも冒険者に適性があるかどうかすら怪しかったはずの彼女は。

 剣士(理想)指揮官(現実)のその両方を手に、白兵指揮官として才を開花させている。


『その点、理想を追いかけて、理想だけでBランク(ここ)までたどり着いている分、雪城のほうが現実味があるとは思う。まあ、結局のところ、努力に左右されることではあるが』


 ――月村さんは、私の理想を否定しなかった。


 だからこそ、夢を見てみたかった。道は既に、鈴音ちゃんが照らしてくれていた。

 魔法少女(理想)を手にしながらに、強さ(現実)を得るために。


 まあ、そのために。めちゃくちゃな練習をすることにはなったけど。

 苦しくはあったけど、不思議と、辛くはなかった。


 クオーツゴーレムの片腕に強烈な一撃を叩き込んだ一方で、もう片腕は依然として動く。

 陽鞠ちゃんみたいに空中を蹴り出して動き回る、みたいな芸当は私にはできない。というか、やり方すらわかんない。

 でも。


「《滑走アイスリンク》」


 私が追いかけた理想は、足場を作ることなど、容易に叶えてみせる。

 自在に生み出す氷の道を舞い踊るように滑りながら。そのまま、クオーツゴーレムの背後に回り込む。


 ――振り抜く力は、十二分。


 背中側から腹側へと、滑走しながらに思い切りにクオーツゴーレムの身体を割り砕く。


 これで、クオーツゴーレムは絶命――、


〔やったか!?〕

〔言うな言うな〕

〔そうでなくともクオーツゴーレムには――〕


 しない。わかってる。


 根性(食い縛り)。大丈夫。ちゃんと、忘れてない。

 私は滑走先に氷の足場を作ると、それを一気に蹴り出す。


 そのまま大きく中を舞って。


「これで終わり――《まじかる☆ぱにっしゅめんと》!」


 せめて、決め台詞くらいはかわいく、ね?






     * * *






「支樹、準備はいい?」


「ああ、いつでも」


 俺の答えを聞いた海未は、満足そうにと小さく笑って。


「《紫電一閃》!」


 直後、まるで瞬間移動でもしたかのように。隣にいたはずの彼女が貪るもの(グラトニー)の向こう側へと移動して。

 彼女の軌跡には、励起した空気が仄かな光を帯びさせていた。


 貪るもの(グラトニー)は苦悶の声をあげる。海未の雷がその身を貫いた。まさしく風穴が開いている。

 しかし、致命には至らない。どころか、このまま放置をしていればまた再生をしてくることだろう。


 だからこそ。やるべきことはただひとつ。


「《偽式レプリカ:停止した世界》」


 雪城が使ってみせた魔法スキル――《氷世界》と《凍ての時間》の複合スキルを、模倣する。

 無論、全く同じことをやっているわけではない。適正の差などもあるし、そもそも、彼女がどういう機序で《停止した世界》を発動していたのかがわからない以上、全く同じことはできない。

 しかし、実際にこの目で見たものであり。かつ、道理がとおる現象であるならば。

 支援バフによる底上げに次ぐ底上げで、無理矢理の模倣ができる。それが、偽式レプリカ


 紡ぎ上げられたそれは、瞬時に貪るもの(グラトニー)を分厚い氷で覆う。体組織の大部分が水分になっているヤツにとっては、相当に苦しい攻撃のはずだ。


「すごいすごい! さっすが支樹!」


「いや、これも偽式レプリカだから、俺がやったというよりかは」


「それでもだよ――って、次は私だね!」


 過剰火力なスキルを。交互に絶え間なく浴びせ続ける。

 まさしく、力技。海未自身の実力と俺の支援バフがあるからこそ成立する、ゴリ押しの権化。

 だが、悲しいかな。おそらくは、これが()()()

 遍くを喰らう貪るもの(グラトニー)は、こちらの放つスキルでさえも食べてくる。

 しかし、その吸収のスピードが間に合っていない。

 吸収と回復を、ダメージが上回っている。


 どうやら、仮説三は正しかったらしい。


 波状攻撃に、貪るもの(グラトニー)はただひたすらに吸収に徹するしかなく。しかし、それでもダメージのほうが勝る。

 身体の再生も全く間に合っておらず。時間が経てば経つほどに、その巨躯はだんだんと萎んでいく。


「支樹、今なら狙える!」


 スライム種の魔物だとするならば。いくら災害級ディザスティアとて、ある。

 魔物としての、中心。スライム種の、(弱点)が。


「行くよ、支樹!」


「……ああ、了解」


 貪るもの(グラトニー)を中心に、挟み込むように陣取った俺と海未は、互いに視線を交わして。


「《偽式レプリカ》」


 そして、よく見知った。幼馴染の動きを、模倣する。


「「《一刀両断ニノタチイラズ》」」






「倒したー! やったー!」


 わーい! と。子供のように両腕を突き上げながらに喜ぶ海未、二十六歳。

 まあ、そうしたい気持ちもわからなくはない。それくらいには厄介な敵ではあった。


 溜まっていた魔力の澱みも解消された。次第に、大侵攻スタンピードも終息に向かうだろう。

 とはいえ、まだ全部が解決というわけではない。


「ほら、海未。まだ仕事があるだろ」


 コツン、と。彼女の頭に軽く手を当てて落ち着かせる。

 大侵攻スタンピードの元凶は討伐したが、その狂気にあてられた魔物たちの侵攻はまだ止まっていない。こちらを対処しなければ、大侵攻スタンピードが終わったとは言えない。

 もちろん、鈴音たちも対処してくれていることだろうし。海未が来ているということは《海月の宿》の他のメンバーも来ていることだろう。それ以外にも、ダンジョン警報の発報からしばらく経っているから、援軍もいる。

 とはいえ、早急に解決することに越したことはないし、彼らの負担も軽くできるならそのほうがいい。だからこそ、立ち上がって――、


「いやあ、さすがふたりだね。任せた甲斐があるよ」


 ぱち、ぱち、ぱち、と。そんな拍手の音とともに、女性の声が割り込んでくる。

 あまりにも、聞き覚えがあるその声に。俺も海未も立ち上がり、即座に武器を構える。


「もう、別に戦いに来たわけじゃないんだから。そんな警戒しなくてもいいんじゃないかな? そもそも、私じゃ君たちふたりどころか、ひとりにだって勝てっこないんだし」


「その代わり、負けもしない、だろう? 影千代」


「ふふふ、さすが支樹。よくわかってくれてるね」


 楽しげな声音で言ってくる水色髪の女性――影千代。

 ふわりとした足取りで一歩こちらに歩いてくるその様子に、こちらを警戒する仕草はない。本当に、味方か、あるいは無害だと認識している素振り。


「しかし、相当派手にやったね。まあ、あの災害級ディザスティアをやるにはそれくらい必要だったんだろうけど」


「まるで見てきたかのように言うな」


「まあ、実際見ていたわけなんだけど」


 先刻までの俺たちの戦い方は、周囲への被害を一切考えない戦い方だった。わざわざ《海月の宿》のメンバーや鈴音たちが近づかないようにさせていたのは、そういう都合。

 本来ならば近づくことすら困難――だけれども、影千代なら。彼女の持つ《悪戯妖精トリックスター》なら、可能だ。


 俺たちの攻撃に巻き込まれないようにすることも。

 そして。追跡から逃れることも。


「影千代ちゃん。確認だけど、大侵攻スタンピードに、影千代ちゃんは関わってないんだよね?」


「さっき支樹に伝えたことではあるけど、今回の大侵攻スタンピードには関わってないね」


 影千代の回答に、海未は少しばかり表情を曇らせる。


「今回の、ってことは――」


「まあ、海未の考えてるとおりだと思うよ」


「ッ!」


 海未の込める力がわずかに強まる。

 しかし、影千代は一切気にしない。負けない算段があるからだ。


「しかしそれにしても、支樹の弟子たちもなかなかやるね。スノーホワイトっていう配信者の子なんか、クオーツゴーレムを単独撃破しちゃったし」


「……そうか」


 まさかこんなやつから聞くことになるとは思わなかったが。吉報に、少しだけ気が休まる。


「陽鞠ちゃんも、魔物化の実績持ちとしては気にはなるけど。個人的には、今一番興味があるのは鈴音ちゃんかな? あの子の適性的には、たぶん後方指揮官向きでしょ? 支樹が指導をしてるとはいえ、それがあそこまで戦えるようになってるってのは、冒険者の可能性を追求してる身としては気にはなっちゃうよね」


「……アイツらに手出しはさせないぞ」


「ふふっ。元からするつもりはないよ。怖ーい保護者がついちゃってるからね。まあ、観察はするつもりだけど」


 楽しげに笑いながら、言ってくる影千代。

 やっぱり、無理をしてでもコイツは捕まえないと――、


「やめといたほうがいいよ、支樹。たしかに君の固有スキルを使えば可能かもしれないけど。その代償はわかってるよね?」


「――ッ」


「それじゃ、またね!」


 影千代がそう言うと。直後、彼女の姿が歪んだかと思うと、姿も気配も、この場から消える。


 彼女の言うことは、事実ではある。

 俺や海未では、影千代に対して極めて相性が悪い。


 せめて、彼女の権能に対して。相性がいいなにかがあれば。






     * * *






「それじゃあ、みんな! おつすの!」


 いつもの挨拶をしながらに、配信を終わらせる。

 大侵攻スタンピードが、終息した。


「疲れたあああ……」


 地面に倒れ込みながら、私は大きく息をつく。

 鈴音ちゃんも陽鞠ちゃんも、ぺたりとその場に座り込んでいた。

 千癒さんだけはしゃっきりと立って、私たちの世話をしてくれている。……いや、すごくない?


「でも、私たち頑張った。とっても、すごかった」


 自分で、自分をそう褒める。

 なんとか、ではあったけれども。私たちは守りきった。


 みんなの不安を打ち払い。安心を守り切ることができた。


 鈴音ちゃんは私の言葉に「はい!」と素直に答えてくれるし。陽鞠ちゃんもぶっきらぼうながら、頷いてくれる。

 そんなふたりの反応に、私は満足して――、


「うんうん、本当にすごかったと思うよ」


 割り込んできた、知らない声。

 私たちは、反射的にそちらを向く。


 突然に現れた闖入者。警戒するのは当然……ではあるけど。

 三人の警戒は、その比じゃない。


「影千代、さん」


 鈴音ちゃんがそうつぶやく。知り合い、なのかな? でも、少なくともいい関係性ではなさそう。


「大丈夫大丈夫、なにかしにきたわけじゃないから。支樹や海未のところに顔を出しに行ったついでに、みんなのことを褒めに来ただけで」


 どうやら、月村さんたちとも知り合いな様子。でも、彼らのところに行ったのなら、なぜ一緒にこちらに来なかったのか。


「まあ、本当に褒めに来ただけだから。もう帰るんだけど」


「待ってください!」


「だーめ、待たない。だって、支樹たちに捕まるわけにはいかないもんね!」


 それじゃあね、と。彼女は言うと。その姿を歪ませて、次第に消してしまう。


「……ねえ、鈴音ちゃん。あの人は?」


「水瀬 影千代さんという方で。詳しい説明は省きますが、月村さんたちが捕まえようとしていらっしゃる方です」


 なるほど、ね。大体の事情は察した。

 そして、彼女の動き方を見るに。月村さんたちでさえ、あの人を捕まえられていない事情も、察した。


「つまり、あの人を追いかければいいのね」


「はい。そうなりま……へ?」


「わかった。それじゃ、追いかけるね」


 私の言葉に。鈴音ちゃんが。いや、陽鞠ちゃんも、普段表情があまり動かない千癒さんまでもが驚いた様子を見せる。


「追いかけ、られるのですか?」


「まあね。その代わり、私の配信の企業秘密を見せちゃうことになるから。そこのところはよろしく」


 ぱちん、と。私はひとつウィンクをする。

 彼女の姿の消し方、そして、月村さんたちでも追いかけられないということを鑑みるに。おそらく、固有スキル――あらゆる法則を蹂躙する、無法の権能に依るものだ。

 ならば。


「こっちも、おんなじやり方で、ね?」


 というわけで。私の企業秘密(固有スキル)の御開帳。……とは言っても、実はずっと発動はしてたんだけどね。


「それじゃ、お願いね。――《お助け☆アイちゃん》」






     * * *





「帰り際にもう一度様子を見てきたけど。本当に、興味をそそられるね」


 三人が三人とも、私――影千代の興味を掻き立てるだなんて。ある意味、支樹も持っていると言っていいだろう。

 とはいえ、困ったことではある。なんせ、支樹(保護者)のせいで私があんまり接近できない。

 《悪戯妖精トリックスター》があるのである程度はなんとかなるが。あまり油断しすぎると捕まりかねないし。


「――そこ、左!」


 ふと、声がした。つい先程に見た彼女。たしか、ダンジョン配信者をしているスノーホワイトという彼女だ。

 魔物の残党でもいたか? と一瞬思ったが。しかし、直後その判断は間違っていることに気づく。

 魔物の気配なんてものはない。そして、私の目の前に現れたのは、半獣半人のフェンリルと化した陽鞠ちゃんの姿で――、


「ッ!?」


 咄嗟にガードをする。私、戦闘は得意じゃないんだけど。

 不用心に《悪戯妖精トリックスター》を解いてしまったか? いや、そんなわけがない。まだ、有効なはず。姿は見えていないし、存在は曖昧なまま。

 私に対して攻撃を通すには、私の存在を確実に認知する必要がある。だからこそ、支樹や海未でも私に攻撃ができていないわけで。


「残念ながら、そのタネは割れちゃったからどうにもならないよ」


 スノーホワイト。彼女が、そう言ってくる。


 再度《悪戯妖精トリックスター》で存在を歪ませて逃げる。が、しかし、陽鞠ちゃんが再びこちらに攻撃をしてくる。

 今回は、間違いなく《悪戯妖精トリックスター》が働いていた。つまり、これは――、


「固有スキルには固有スキル。道理がとおらない相手には、こっちも道理を捻じ伏せればいいってね」


 通路の影から遅れてやってきた彼女は、存在が不確かなはずの私を、確実に見据えながらに言ってくる。


「私の固有スキル《お助け☆アイちゃん》は、見たい場所を見ることができて、視界を共有することができるスキル。これで、逃げられないよ?」


 なるほど。たしかに、私にとって相性最悪の、固有スキル持ちか。


「これは、私が不用心に近づきすぎたってことかな」


 今からでも存在を歪ませて逃げることは可能ではある。

 でも、それをしたところで。彼女の固有スキルから逃げ切れるわけではない。……というか、どう考えても不可能。


 まさか、支樹や海未以外に捕まることになるとはね。

Tips:偽式レプリカ

 支樹の使うスキル。その詳細は、支援バフによる超強化で無理矢理に他者の行動を真似るというもの。

 ちなみに固有スキルではない。曰く、支援術師なら理論上は使用可能とのこと。

 なお、難易度。




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