魔王の子、人間と出会う。
後書きロングバージョンです。やっと、シャンの出番が!!!
「ん?なんだ、ちびども。」
村に向かおうと森を抜ける途中で、2人はもじゃもじゃのひげを蓄えた大男に会った。その手には斧と切ったばかりの薪を持っている。
「珍しいな、子供なんて、この辺じゃとんと見かけねえが。お前達、親とはぐれたのか?子供だけで・・・どうやって森を抜けた?」
(やばい、どうしよう、なんて答える!?考えてなかった!!)
ギルファスとオームは、目を合わせるが、何も答えられない。すると、2人のお腹が盛大に返事をした。
「がははは、腹が減ってるのか!!まあいい・・・なんか事情がありそうだな。おい、こっち来な。取って食いやしねえから。」
「「・・・・・」」
「おい、お前達は何ていう名前だ?オレはザックだ。この村で木こりと村長をやってる。」
(見た目はいかついけど、なんか、悪い人じゃなさそうだな・・・。)
「・・・オレは、ギル。こっちはオームです。えっと森で迷って・・・親はいません。」
オームはギルファスの背に隠れ震えている。意外と小心者だ。人間など、初めて見たのだろう。人間の言葉がわからないのかもしれない。ギルファスは人間の母がいるから、話は出来る。
「ほう、黒髪がギルで、珍しい銀髪がオームだな?いいだろう。丁度これから朝メシにするところだ。付いてきな。」
2人は恐る恐るザックの後を付いて行く。すぐ側の小屋に着くと、ザックは中に入れてくれた。
「ふーん、親と喧嘩して家出ねえ・・・。まあ、オレにも経験はなくもないが。そんで、森の中でお前達は会ったのか。」
「はい。そうです。」
ギルファスはあったかいスープとパンを頬張りながら話す。オームはさっきから黙ったままだ。初めて見る食べ物に、戸惑っていた。恐る恐る一口目を口に運んだ後は、夢中になって食べている。
「そうか・・・。まあ親も心配してるだろうがな。しかし、お前達、あの森に三日間もいて、よく魔物と出くわさなかったな。」
(あれ?そういえばそうだ。魔素は隠してたし、オームの魔素も大したことない。なんで誰にも会わなかった?)
「・・・・・。まあ、事情はわかった。この村は森に囲まれてるから、追い返したりはしねえよ。悪いが、いま人手が足りないから、送ってやる事も難しいんだ。だからお前達は好きなだけいていい。代わりに、オレの仕事を手伝ってもらうがな。」
ザックは木こりだ。小さな村には、他に5つの家族が暮らしている。村の子供は少なく、一番若い者でも20歳。だが、その若者も、王都に出稼ぎに行っているらしい。ザックは妻を前の年に亡くし、子もなく一人で暮らしていた。
「ギル!オーム!倒れるぞ、離れろ!!」
オームと二人で、木こりの仕事を手伝いながら、ザックと暮らす。それは王位を継ぎたくないギルファスにとって、まさしく望んでいた暮らしだった。
だが、城の家族の様子も気になる・・・。
ギルファスとオームがザックの世話になって、一月が過ぎた頃、迎えは突然やって来た。
「セル様って、若い頃は人間界にもよく行ってたんですよね?」
「ああ、祖父上様と祖母上様に連れられて・・・あとは、一人でもよく街まで出かけていたな。」
「じゃあ、人間界で友達とかいないんですか?」
「・・・・・・・」
「(あっ察し)いや変なこと聞いてごめんなさい!!!」
「いや、ユリが気にする事ではない。そうだな、何故か、男共は、私の顔を見て避けるのだ・・・女共も、遠目からじろじろと此方を伺うばかりで・・・。」
「(あーなるほどね)セル様、尊すぎて、誰も近寄れなかったんですね。」
「??」
「(まぁ、でもそれで他の女の人と付き合ったりしてなくて良かった!南国のサハイ君みたいに・・・。)」
「ともだち、と言うのはどうすれば出来るのだ・・・?」
「(この魔王、ほんとかわいい!!)大丈夫です!セル様、とりあえずニコってしてみたら良いんですよ!(いつも笑ってくれるみたいに!)そしたらすぐ友達なんてたくさん出来ますって!!」
「?・・・こうか?」
「(えっ、ひきつり過ぎでしょ!)・・・いやもっと優しく・・・。」
「最大限笑ってる、つもりだが・・・。」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
「分かりました!!今日から練習しましょう!!ねっ?あ、シャンさん!ちょっとシャンさん相手に笑ってみて下さいよ。」
「ユリ様、お呼びですか!?(やっと、我の出番が!!)」
「はいっ、セル様笑って!」
「(笑顔、だな)シャン・・・」
「ひっ!?我が王、どうか・・・命だけはお助けを!!!!!」




