魔王の子、人間界の村へ行く。
テーマソングその2ですが、こちらは外伝プロローグと同じでどうぞ!(以前活動報告に詳細アップしてます!)
「だから、オームこっちだって!」
「いや、そこはさっきも通っただろ!?」
少年達の声が夜の森に響く。辺りはすっかり暗くなっている。あれから2日。ギルファスとオームは、人間の村を目指して森をさまよっていた。
『俺様』に名を付けたのはギルファス。名前などないという彼に、ギルファスは『オーム』という名を付けた。ニレの木、という意味だ。
「だめだ・・・地図がないとわからないな。仕方ない、今日はここで野営しよう。」
ギルファスが左手を小枝にかざすと、小さな火が付く。周りの枝を寄せ集めて、焚き火を作る。
「なあ、昨日も一昨日もだけど、お前、なんでそんなに色んな魔術が使えるんだ?やっぱり魔王の子だから・・・。」
目を輝かせたオームの口を、ギルファスが慌ててふさぐ。
「ばか、魔王とか言うなって!!いま、オレ家出中なんだから!!」
「むむはふ・・・わかった、ごめんって。」
「・・・この魔術は、2番目の兄上に教えてもらった。」
ギルファスは、嬉しそうな顔をしている。オームはまだ2日しか一緒にいないが、ギルファスが兄達の事が大好きだというのだけは解る。
「いいな・・・俺なんか、落ちこぼれで、集落の中でも嫌われ者なのに・・・。」
「お前は、オレの友達だろ?オームも、オレの家族みたいなもんだ。まだ、2日しか一緒にいないけど。これから一緒に強くなればいいじゃないか!!」
少年達にとっての2日間は、大人達の2日間よりも長い。同じ食べ物を分け合い、一緒に眠り、一緒に走る。オームは、ギルファスにそう言ってもらえた事が嬉しかった。泣き虫なオームの、目に涙があふれる。
「ああ、友達か。そうだな・・・。」
夜が明け、陽の光が森に差し込む。朝だ。
「ん・・・よく寝たな・・・あれ?おい、ギルファス!!起きてみろよ!!あれを見ろ!!」
隣でぐっすり眠るギルファスは、オームの声に目を覚まし、目をこする。
「なに・・・?」
「あれ、あの煙。もしかして、人間の村じゃないか!?」
オームが指差す先には、いくつかの白い煙が立ち昇っていた。
ギルファスも飛び起きる。二人がその煙に向かって走ると、森を抜けた先辺りに、人間の村が見えた。
「おい!やったな!」
ギルファスが村に向かおうとする。それを慌ててオームが引き止めた。
「おいっ、そのまま行ったらだめだって!!お前、眼の色が!!」
黒髪に紅い瞳。それは魔王と同じ眼の色だ。このまま人間の前に出れば、どうなるか分からない。
「あ?ああ・・・そっか。えーっと、あ、母上の眼の色に変えられるかな。」
ギルファスの紅い瞳がたちまち緑色に変わる。
「おま・・・そんな事もできるの?」
「まあね・・・あ、お前も、魔素出しっ放しじゃないか。それ、しまえないの?」
オームの身体は、少ないが魔物特有の黒い魔素で覆われている。
「え。しまった事なんてないけど・・・。どうやってしまうんだ?」
ギルファスは、魔素を隠している。だが普通の魔物はそんな事出来ない筈だ。
「ああ、これ?これは、吸収してるんだよ。ちょっとやってみる?痛くないから。」
ギルファスが左手をかざすと、オームの身体から出る魔素をその手に吸収していく。
「えっ、魔素が無くなっちゃったじゃないか!!」
元々わずかな魔素しか持ってない。それすら無くしたら、オームは悪魔族ではなくなってしまう。
「大丈夫!消えてないから。後でちゃんと戻すよ。オレの中にしまったんだ。とりあえずこれで、人間の村に行けるな!」
「セル様の目の色は、なんで他の魔王達みたいにオッドアイじゃないんですか?」
「ん?おっどあい、とは?」
「あ、片っぽずつ目の色が違うってことです!」
「眼の色か・・・初代の魔王は、人間の娘を4人妻にしたが、皆それぞれ違う土地から娶った。だからその子供達は其々の土地の特性を魔力として、受け継いでいる。魔王としての力は人間と半々、と言ったところか。だが、私の高祖母上は、聖女としての強い力を持っていたから、魔力が混ざり合う事なく、魔王と聖女の両方の力をそのまま継承しているのだ。」
「ん?つまりそれが目の色として現れてる、ってことですね?」
「そうだ。北国は水、西国は風、南国は火、だな。私は魔王と聖女の力以外に、地としての特性は持っているが。」
「へえー。地かぁ。あ、だからセル様は、魔素を吸収とか放出とか出来るんですね?植物とか土みたいに!!」
「そういうことか・・・それは今まで考えもしなかったな。ユリ、矢張り私の妻なだけあるな・・・。」
「(いや、実はお兄ちゃんのゲームの知識の応用なんだけど。)ははは、ですねー。」
「ユリ・・・お前が妻で、私は・・・。」
「えっ、ちょ、いまの感動するとこですか!?・・・いや、こんなところでだめだってば、セル様!!」
「ユリ、もう我慢できぬ・・・閨に行こう。」
「はあ!?」




