JK、魔王に自己紹介する。
この人、イマ帰る方法がないって言った。
魔王は目尻を拭いながら、あっさりと、そう言った。唖然。MJK。
「存在、しないのだ。召喚の儀は、喚ぶ方法であって、還す方法ではない。これまでに送還が行われた事は無いのだ。お前のようにこの世界に喚ばれる者は少なくはないが・・・恐らくこちらから還しても、無事に着くのは難しいだろう。最悪の場合は、肉体か精神体のどちらか、或いは両方とも消滅するという事も考えられるな。」
(イミわかんない、ありえない、どういうことですかーーー・・・)
ゼツボウ・・・こういうのを絶望っていうんだ、消滅って、なに、それおいしいの?
魔王はさっきの無表情に戻っていた。笑ったせいかちょっとだけ、ほっぺと耳が赤くなってる。
「うむ・・・異世界と此方の世界を行き来する際には、膨大な負荷が掛かる。すると、肉体と精神体が離れるか壊れてしまう可能性がある。異世界の人間は魔力を持たぬが、こちらの世界には魔素と、魔術というものが存在する。だから、召喚の儀の際、魔方陣に組み込んだ修復の魔術によって、肉体と精神体の破壊を食い止める事になる・・・ああ、子供には、難しかったか。」
イケメンて、考える仕草もイケメン、まさにファンタジーだ。お兄ちゃんなら、こんな話、泣いて喜びそう。
「理解できぬか・・・まあ、無理もないが。とにかく、お前はこの城から逃げることも、帰ることも出来ぬ。・・・お前、名はなんという?」
魔王は、はあーっと今までの中でいちばん大きなため息をついた。赤い目がこっちを見た。
(理解、したくもないですけど。なんかいろいろ無理ってことはわかります・・・。)
思わず目を逸らしちゃった。あの目に見つめられると、なんか心臓が痛い。と、喉がまた光ってる!!
「お前に声を返してやる。叫ばれるのは嫌いだが、どうだ、もう声が出せるであろう。」
ん?声・・・?
「あ・・・声出た・・・」
思わず魔王を見ると、これは、微笑んでるの?たぶんいまわたし間抜けな顔してるんだろう、さっきみたいに、笑いをこらえてる、みたいな顔してる、魔王って、ゲームの中ではもっと怖い人だよね?
「お前の名は、なんというのだ。答えよ。」
魔王が、右手の手袋を外して、その指がわたしの毛先に触れる。筋ばった大きな手、細いけど長い指、人差し指に金のシンプルなリングが2つ。ひとつは赤い石が付いてる。
「はやく、答えぬか、名を、忘れたか。」
思わず、手を観察してしまった。名前、ね、フルネーム?でもそんなの意味あるのかな、下の名前だけでいいか。
「ゆり」
あ、魔王の目が大きくなった。赤い目が、魔王がしてるリングの石みたいだ。わたしが映ってる。
「ユリ、か。意味はあるのか。」
ん?イミ?意味か。えーと、お母さんが女の子なら花の名前を付けたかったって言ってた。お兄ちゃんは樹。
「百合っていう、花の名前の、意味です。百合の花のように、優雅な、華やかなって・・・。」
「ほう・・・優雅、か・・・。」
え、ちょっとなに?呆れてない?教えてって言ったの、そっちだよね!?
また思わず表情に出てたらしい。魔王は、笑いながらわたしの髪を撫でた。
「すまぬ、可笑しくて笑った訳ではない、良い名だ。お前、いやユリに良く似合っている。私の名はセルファス。セルファスでも、魔王でも、好きに呼ぶがいい。・・・まあ、名を呼んでもらった方が、私は嬉しいのだが・・・。」
最後の方はよく聞き取れなかった。セルファス、魔王、王様、セル・・・王、うーん、なんかどれも呼びにくいな・・・。
「あ、セル様!さんづけじゃなんか変だし、様って感じ。違和感あるけど・・・年上だし!」
魔王、セル様はちょっとびっくりして、また目が大きくなった。でも今度は目を細めて、微笑みながらわたしの髪を梳かす。この人、はじめは無表情かと思ったけど、意外に表情がくるくる変わるんだな・・・。じわる。
「それで良い。歳は、そうだな、お前より100と12上だと伝えておこう。」
100足す12足す16は・・・128!?見た目は確かに二十代後半、大学生のお兄ちゃんよりも年上っぽい。でも128歳って、おじいちゃん過ぎない?色々衝撃だけど、これが一番理解できない。
「我が一族は、成人後はあまり姿は変わらぬ。が、人間の妻を娶ることで、そこからようやく老いが訪れるのだ。驚いているようだが、我らにはこれが普通のこと。先程まで世話をさせていたフェイなどは、200歳は超えている。」
あの、美少女が、12歳くらいにしか見えないのに、200歳!?
JK語広辞苑 令和二年監修
MJK 語源マジか 頭文字をアルファベット化した用語
じわる 面白い感情がじわじわとくる様




