断定卿
断定卿と呼ばれる人物がいた。彼はあらゆるものを断定していっていた。
終末時計の謎も、夢を見る機械についても。楽器を弾く死神についても、影を修理する職人についても。月明かりの時にだけ開く喫茶店についても、星明りの宿屋についても。
泣き虫狼と笑う羊や星屑を食べる黒猫の童話についても。空を泳ぐ図書館についても。
断定卿はありとあらゆるものを断定していったのである。しかし、それは謎を楽しもうとする者たちとっては、呆れさせるものでもあった。
彼の断定はどこか幼稚なものもあった。即断即決とまで言われていた。または断定卿ならぬ断定狂とまで言われていた。
しかし、当の本人である断定卿は笑っていた。断定狂と呼ばれることを誇らしげに笑っていたのである。むしろ、堂々としていた。悪口のはずなのに、彼にとっては称号になってしまうのだから。
周囲は彼に対して、悪口を言わないようにしていた。悪口を言っても無駄なことであるゆえに。沈黙閉口。それが彼らにとって一番良い対処法だと学んだのである。
断定卿は人々が集まる社交場では悪口の対象となっていた。しかし、仕事面では有能そのものだった。彼は迷いなく断定していったのである。悩みは無かった。優れた直感によって、成果を叩き出していったのである。持ち前の断定によって。即断即決を活かしていったのである。ゆえに民衆からも支持されていった。老若男女、誰からもである。
面白くないのは断定卿のことを悪く言っている者たちである。そこそこの成果を叩きだしてはいる。しかし、断定卿には及ばない。つまりは断定卿のことを悪く言うことによって、自分たちの有利性を得たかったのである。嫉妬そのものであった。
そして、周囲の中で断定卿のことを良く思っている人物たちからは、悪く言っている者たち以上の成果を得ていた。そのこともあったのかもしれない。
ついには大公からも断定卿のことが注目の的となった。ありとあらゆるものを断定する彼によって、国は成果を得ることができていたからである。
大公は断定卿にとある事業を任せた。それは鉱山発掘の仕事である。価値のある鉱石を手に入れていくために、どのように掘り進めていけばいいのか分からなかったためである。それに、無駄掘りを避けたかったのもある。無駄なリスクを取って、何のリターンも得られないよりは、断定卿に任せてみたいと思ったのもある。大公にとっては片手間の事業なのであるが、利益が出るのならそれに越したことはないと思ってもいた。
鉱山発掘の事業に着手した断定卿は、持ち前の即断即決で当たりを決めていった。そして、断定卿の言う通りに掘り進めてみると、価値のある鉱石を次々と発掘していったのである。しかも、外れはほとんどない。不思議なことに全部が全部大当たりだったのである。
その功績によって断定卿は大公の右腕にまで成り上がった。社交場での彼は相変わらず断定ばかりだったが。それでも、断定卿の支持者たちは多くなっていった。
しかし、彼は人の子。やがて彼は老いて亡くなった。それからの国は少しずつ衰退していったという。
彼が死の間際に断定した言葉がある。それは、「この世界は偽神によるカオスである」というものだった。それを最後にして、断定卿は息を引き取ったのであるーー。




