終末の月
終末の月は奪われてしまった。今ではどこにあるのかさえ、誰も分からない。
死せる神々にとっては癒しでもあったというのに。今ではもう死神だけが探し求めている。
古き神々はマキナに対して、何をしたのか。機械仕掛けの神へとさせた。疑神とダンスを躍らせて。
死せる神々のために墓守は存在しているのか。魔王城のどこかで清掃しているのかもしれない。
世界は望んだかもしれない。逆さまになることを。生ける神々の供物を台無しにさせた因果を刈り取らせるために。
嘘つきは誰なのか。自らを偽神と名乗る者なのか。彼によって創られた世界は終わりを等しく迎えている。
魔法はゆっくりと発動している。滅びの魔法が。一つの滅びから連鎖していくかのように。全ての世界を滅ぼすのだろう。存続を逆転させるために。
それは偽神の囁きなのか。機械仕掛けにさせられたマキナの怨嗟なのか。事実は誰にも分からない。
時計の針は進みゆく。終末へと向かっていく。残された時は幾つ残っているのか。世界が逆転するまで止めることはできない。
偽神の名は残されていない。あらゆる文献を読み漁っても。隠されたのか忘れ去られたのか。
店に売られていたのは、錆びついた剣。錆を落とせば復活するのだろうか。かつての勇者が振るった剣は。守りたい者を守れなかった後悔しか残されていないというのに。
休日に紡がれているのか。月を奪った泥棒はどこにいる。なぜ月が奪われたのか。そして、マキナは生み出されたのか。
悲しいな。古き神々の所業は。永劫の安楽は奪われたのだ。あるいは、そうなるように月が望んだのかもしれない。
奪っていったのは古き神々だ。暗黒の世界を仄かに照らしていたのに、古き神々たちはそれすらも許さなかった。光を奪うことによって安楽を享受していたのだ。
ゆえに王は立ち上がる。古き神々の使者である勇者と戦い合った。争奪の連鎖の始まりとなったのだ。
長い時を経て、錆びついた剣が見つかった。されど、終末の月はいずこかへと消えたまま。
偽神の手の平にあるのは、終末の月。勇者と魔王の戦いの果てに奪ったのだ。漁夫の利として。
死神たちは軍勢を成そうとも、偽神の元にはたどり着けない。偽神のシナリオを書き換える力は、古き神々ですら持っていないのだから。
隠された魔界の闇を照らしている。終末の月はそこに安置されている。深い闇を仄かに照らし続けるために。
ホラ吹き詩人のホラ話を真に受けるんじゃない。ただ笑い飛ばせばいいのだから。
世界は逆さまを繰り返している。正転するのか逆転するのか、それは今のところ誰にも分からないのだから。
魔王の城は今も清掃されている。墓守の手によってーー。




