悲しい旅路、そして終の棲家へ
今回から重苦しい話の始まりです。ハッピーエンドの物語をお求めの方にはオススメできません…
※この物語の舞台は「古代◯ーマ帝国をモチーフにした架空の帝国」という設定です。色々と相違があるかと思いますが、大目に見てもらえると幸いです。
彼女は、村を出たことが生まれてから一度も無かった。
自由に旅をする人や様々な土地を渡り歩く行商人に少し憧れることもあった。まだ見ぬ土地や遠い異国に思いを馳せ「私が他の場所へ行くとしたら、どんな時なんだろう?」と想像してみたこともあった。
まさか、こんな形で…一緒に居たくもない人物から連れ去られて村を離れる事になるなんて、思いもしなかった。
もっと違う形で村を出たのなら、見たこともない風景や今まで無縁だった中央都市の美しい建物に感激し心を躍らせたであろう。しかし、彼女にとっては故郷と大好きな人々と穏やかな日々との別れを実感させるものとなっていた。歩けば歩くほど気持ちが沈んでいった。
道中、将軍や兵士達の目を盗んで行方をくらませようと何回も思ったが、思いの外監視の目が厳しく不可能であった。
彼女は「どうして私まで?将軍様は最初私に興味がちっとも無さそうだったのに…」と何度も何度も思った。
そうこうしている内に、将軍の邸宅に着いてしまった。この時、まさかここが彼女の"終の棲家"になるとは予想だにしなかった。
邸宅内に入り最初に将軍から命じられたことは「体を清め新しい服を着ること」だった。
「みすぼらしく貧乏くさい女が俺の妾だと思われたら俺の評判が落ちる」と、将軍は明らかに彼女を指差しながら女の召使いに言い放った。
(そんな風に思うなら、私なんかをここに連れて来なければいいのに!)
将軍の失礼すぎる発言に苛立ちを覚えながらふと隣りを見ると、彼女と同時に村から連れ去られたリヴィア―――当時女子の個人名は存在していなかったが、父親の氏族名から「リヴィア」と呼ばれていた―――は、将軍の妾になれたのが嬉しいという表情をしていた。
「私達、幸運だったわね!これで貧しい生活とはサヨナラできるのだから!しかも美しい将軍様から愛される生活なんて、最高じゃない!」
彼女は驚いた。自分と全く同じ状況なのに、ここまで捉え方が違うだなんて。
その後、彼女は充てがわれた部屋に案内され、召使いの手により身なりを整えられた。そして「将軍様の命令ですから」と美しいドレスといかにも高価そうなアクセサリーを身に着けさせられた。
そして彼女は改めて気付いてしまった。上流階級の人間達が当たり前のように贅沢をするから私達平民は重い税を課せられ生活が苦しいのだ、と。
ドレスは上質で肌触りが良かった。しかし嫌な事実に気付いてからは「自分や両親や村の人達を苦しめる原因」にしか思えなくなり、すぐに脱ぎ捨てたくなった。
彼女は「私が着てきた服はどこですか?また着たいのですが…」と思い切って尋ねてみた。
(将軍には嫌な顔をされるだろう。でもどうでもいい。嫌われて屋敷を追い出されるのなら、むしろ好都合だ。)
そんな彼女の思惑とは裏腹に、召使いは「その服はもう捨てました。そう将軍様に命じられたので…」と返答した。
あれはお母さんが丁寧に作ってくれた大事な服だったのに!でも将軍の命令で動いただけの召使いに怒りはぶつけられない。彼女は一筋の涙を流す他無かった。
召使いに八つ当たりしなかった主人公…えらい(涙)主人公は「自分さえ贅沢な暮らしができればそれでいい」とは思えない性分で、それが彼女の良さでもあり、終わらない苦悩の原因にもなるのです。
(貴族達がよその国から食料や装飾品等を買うから貿易相手も富を得て文化も発展していくけれど、贅沢なんかできない平民には知ったこっちゃない話な訳で…)
対して、将軍!人のモノを勝手に捨てるんじゃないよ!(怒)
将軍が主人公を連れ去った理由は、いつか明かします。ひょっとしたら勘のいい人はもう気付いているかもしれませんね。
【次回予告&警告】次はもっと嫌な展開が…トラウマをお持ちの方は読まなくて大丈夫です。




