52話 雷(イカヅチ)堕つ
良しちゃんと更新できた!!よろしくお願いします!!!!
俺様の拳が、ナムサンダーの胸部装甲に直撃する――はずだった。
だが、奴の体表を覆う電光説破ダイナモから放たれた雷撃のバリアが、俺様の拳を寸前で弾き飛ばした。ビリビリと痺れる感覚が腕を駆け抜ける。やはり、奴の防御は完璧だ。
「甘いですよ、死蟲さん。貴方の攻撃は全て読めています!」
ナムサンダーの声に、余裕が滲む。奴は俺様の思考パターンを完璧に把握している。当然だ、俺様が創り出したキャラクターなのだから。
そして、反撃が来た。雷を纏った掌底が、俺様の腹部めがけて突き進む。
直撃すれば、間違いなく致命傷だ。
だが――
「Kiai!」
思わず口から漏れたジョージの口癖とともに、俺様は体を捻った。ジョージから教わった重心移動の技術。最小限の動きで、最大限の効果を生み出す。ナムサンダーの掌底が、俺様の脇を掠めて空を切る。
そして、イチゴから教わった「タメ」を利用し、わざと大きく後ろに飛び退いた。10メートルほど距離を取る。
「逃げるのですか?それがエレガントとやらですか?」
ナムサンダーが嘲笑する。奴の表情には、明らかな侮蔑の色が浮かんでいる。
だが、俺様は余裕で笑い返した。
「逃げとるんとちゃう。『間合いを制御しとる』んや。ジョージが言うてたで――『エレガントな戦士は、常に戦場を支配する』ってな!」
ジョージとの特訓で、何度も何度も叩き込まれた教え。戦場を支配する者が、勝利を掴む。間合いを制する者が、戦いを制する。
俺様は両手を広げ、スライム緑地で何度も繰り返した「消える」訓練を思い出す。呼吸を整え、殺気を完全に消す。ナムサンダーの視界から、俺様の存在が薄れていく。
「何を――!?」
ナムサンダーの動きが一瞬止まった。奴は俺様の気配を見失った。その隙に、俺様は影のように奴の死角に回り込む。
「今や!不死身流昆虫忍術・影縫い!」
俺様の魔力の糸が、ナムサンダーの足元から這い上がり、奴の動きを一瞬だけ封じる。完全に拘束することはできないが、一瞬だけでいい。この一瞬が、勝負を分ける。
「この程度で――雷光解放!」
ナムサンダーが全身から雷を放出し、俺様の魔力の糸を焼き切る。だが、俺様はその時間稼ぎで十分だった。次の一手の準備は、既に整っている。
「ナムサンダー!お前は強い!せやけど、お前には決定的に欠けとるもんがあるわ!」
「何ですって!?」
「なんですってやないわい!!ユーモアや!」
俺様は、ジョージが最も大切にしていた「ユーモラス・エレガンス」を思い出す。戦いは真剣勝負だが、同時に、どこか楽しむ余裕がなければ、真の強者にはなれない。ジョージはいつも笑っていた。どんな絶望的な状況でも、どんな強敵を前にしても、奴は笑顔を絶やさなかった。
「お前は俺様が考えた最強のヒーローや。完璧な設定、完璧な能力、完璧な厨二センス。だが――完璧すぎて、つまらん!まぁ逆におもろいねんけどな!!?」
俺様の言葉に、ナムサンダーの表情が歪む。
「何を言っているのです!?私は完璧なヒーローです!正義の体現者です!」
奴の声には、明らかな動揺が混じっていた。完璧であることに、疑問を持ったことなどなかったのだろう。
「せや、お前は完璧や。だが、完璧すぎて、人間味がないねん!」
俺様は、ネコカイジャーたちが教えてくれた「ヒーローの本質」を思い出す。イチゴレッドの熱血、ニボシブルーの魚臭さ、そしてサンゴピンクの可愛らしさ。シナモンホワイトのスパイス臭!そして、黄色なのにリーダーのタイガオー!
奴らは完璧じゃない。だからこそ、カッコいい。
「ホンマのヒーローっちゅうんは、完璧やないからこそ、カッコええんや。失敗して、泥臭くて、それでも諦めへんから、みんなが応援するんや!」
ナムサンダーが一瞬、動きを止めた。奴の雷が、わずかに弱まる。
「お前は、俺様が『考えた』最強無敵のヒーローや。せやけど、俺様自身は、お前みたいな完璧超人ちゃう…。泥臭くて、アホで、すぐ調子に乗る、ただのおっさんや!」
俺様は、ジョージから教わった全てを思い出す。エレガントな動き、重心の制御、カウンターのタイミング、そして――ユーモア。全てが、今この瞬間のためにあった。
「せやから、俺様はお前に勝つ!俺様の『不死身の不完全さ』で、お前の『完璧さ』を打ち破る!」
俺様は、最後の力を振り絞り、ナムサンダーに向かって突進した。全身の筋肉が悲鳴を上げる。だが、止まらない。止まれない!!
「不死身流奥義――エレガント・死蟲…パンチ!」
必殺技に自分の名前入れんの何気に恥ずかしいけど!
エエ歳して!!!!
ジョージから教わった全ての技術を詰め込んだ一撃。完璧ではないが、無駄がない。エレガントではないが、俺様らしい一撃。泥臭くて、不格好で、だからこそ、誰にも真似できない一撃。
ナムサンダーの電光バリアを突き破り、俺様の拳が、奴の胸部装甲に直撃した。ガキィン!という金属音が、響き渡る。
「ぐああああああああ!」
ナムサンダーが吹き飛び、壁に激突する。電光説破ダイナモが火花を散らし、機能停止する。奴の体から、雷が消えていく。
「こんな……こんなはずでは……私は完璧なヒーローのはず……」
ナムサンダーが膝をつく。その姿は、どこか寂しげだった。
俺様は、倒れた奴に近づき、手を差し伸べた。
「お前は強かった。だが、完璧すぎたんや。もうちょい、肩の力を抜いてみぃ。そしたら、もっと強くなれるで。」
ナムサンダーは、俺様の手を取り、立ち上がった。その手は、もう雷を帯びていなかった。
「……貴方に負けました、死蟲さん…貴方のような半端者に…。」
「おいコラ待てやお前!?!?」
「またお会いしましょう……因果の果てで…………。」
奴の姿が、徐々に光の粒子となって消えていく。
「金輪際、まっぴらごめんやて……。」
ホンマ疲れた…。
ナムサンダーが完全に消え去ると、システムさんのゴキゲンなアナウンスが響いた。
『パーソナルイベント:最強のヒーローとの対決、クリア!
報酬:スキル『電光説破』獲得!
ついでに今回のバトル、イイ感じに編集して動画にしときました!ファイル送っときますね!!』
サービス過剰やな!?
変身を解き、俺様は俺に戻る。全身の疲労を感じながらも、満足げに笑った。持ち込んだおにぎりをもしゃつきながら、久宝寺ダンジョンの入口に向かう。
久宝寺ダンジョンの入口に戻ると、ジョージが待っていた。両手を広げて、ハグする気満々で。
「ワオ!アキヲ!君は勝ったんだね!その顔を見れば分かるよ!」
「ああ、おかげさまでな。お前のおかげや。」
ジョージは満面の笑みで俺を抱きしめた。その抱擁には、師匠としての誇りと、友としての喜びが込められていた。
「これで君は、真の『エレガント・ウォリアー』だ!さあ、祝勝会だ!最高の鶏白湯ラーメンを食べに行こう!」
「ええで!今日は奢るわ!」
俺とジョージは、久宝寺ダンジョンを後にし、ジョージのクソ派手なファイヤーフェニックス号で「麺屋 一掃」へと向かった。鶏白湯ラーメンを堪能しながら、俺たちは一週間の特訓を振り返った。
特訓の一週間は地獄だったが、得たものは計り知れなかった。そして、俺はまた一歩、真の強者へと近づいたのだった。知らんけど…。
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