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怪人 ダンジョンに立つ!!!!元イベント会社でヒーローショーの怪人やってたけど会社が潰れて無職になったので、ダンジョンに潜ります!変身スキルで無双するオッサンは好きですか!?  作者: 怪人工房店長 死蟲(しでむし)
第二章 ダンジョンとヒーローショー

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52話 雷(イカヅチ)堕つ

良しちゃんと更新できた!!よろしくお願いします!!!!

俺様の拳が、ナムサンダーの胸部装甲に直撃する――はずだった。

だが、奴の体表を覆う電光説破ダイナモから放たれた雷撃のバリアが、俺様の拳を寸前で弾き飛ばした。ビリビリと痺れる感覚が腕を駆け抜ける。やはり、奴の防御は完璧だ。

「甘いですよ、死蟲さん。貴方の攻撃は全て読めています!」

ナムサンダーの声に、余裕が滲む。奴は俺様の思考パターンを完璧に把握している。当然だ、俺様が創り出したキャラクターなのだから。

そして、反撃が来た。雷を纏った掌底が、俺様の腹部めがけて突き進む。

挿絵(By みてみん)

直撃すれば、間違いなく致命傷だ。

だが――

「Kiai!」

思わず口から漏れたジョージの口癖とともに、俺様は体を捻った。ジョージから教わった重心移動の技術。最小限の動きで、最大限の効果を生み出す。ナムサンダーの掌底が、俺様の脇を掠めて空を切る。

そして、イチゴから教わった「タメ」を利用し、わざと大きく後ろに飛び退いた。10メートルほど距離を取る。

「逃げるのですか?それがエレガントとやらですか?」

ナムサンダーが嘲笑する。奴の表情には、明らかな侮蔑の色が浮かんでいる。

だが、俺様は余裕で笑い返した。

「逃げとるんとちゃう。『間合いを制御しとる』んや。ジョージが言うてたで――『エレガントな戦士は、常に戦場を支配する』ってな!」

ジョージとの特訓で、何度も何度も叩き込まれた教え。戦場を支配する者が、勝利を掴む。間合いを制する者が、戦いを制する。

俺様は両手を広げ、スライム緑地で何度も繰り返した「消える」訓練を思い出す。呼吸を整え、殺気を完全に消す。ナムサンダーの視界から、俺様の存在が薄れていく。

「何を――!?」

ナムサンダーの動きが一瞬止まった。奴は俺様の気配を見失った。その隙に、俺様は影のように奴の死角に回り込む。

「今や!不死身流昆虫忍術・影縫い!」

俺様の魔力の糸が、ナムサンダーの足元から這い上がり、奴の動きを一瞬だけ封じる。完全に拘束することはできないが、一瞬だけでいい。この一瞬が、勝負を分ける。

「この程度で――雷光解放!」

ナムサンダーが全身から雷を放出し、俺様の魔力の糸を焼き切る。だが、俺様はその時間稼ぎで十分だった。次の一手の準備は、既に整っている。

「ナムサンダー!お前は強い!せやけど、お前には決定的に欠けとるもんがあるわ!」

「何ですって!?」

「なんですってやないわい!!ユーモアや!」

俺様は、ジョージが最も大切にしていた「ユーモラス・エレガンス」を思い出す。戦いは真剣勝負だが、同時に、どこか楽しむ余裕がなければ、真の強者にはなれない。ジョージはいつも笑っていた。どんな絶望的な状況でも、どんな強敵を前にしても、奴は笑顔を絶やさなかった。

「お前は俺様が考えた最強のヒーローや。完璧な設定、完璧な能力、完璧な厨二センス。だが――完璧すぎて、つまらん!まぁ逆におもろいねんけどな!!?」

俺様の言葉に、ナムサンダーの表情が歪む。

「何を言っているのです!?私は完璧なヒーローです!正義の体現者です!」

奴の声には、明らかな動揺が混じっていた。完璧であることに、疑問を持ったことなどなかったのだろう。

「せや、お前は完璧や。だが、完璧すぎて、人間味がないねん!」

俺様は、ネコカイジャーたちが教えてくれた「ヒーローの本質」を思い出す。イチゴレッドの熱血、ニボシブルーの魚臭さ、そしてサンゴピンクの可愛らしさ。シナモンホワイトのスパイス臭!そして、黄色なのにリーダーのタイガオー!

奴らは完璧じゃない。だからこそ、カッコいい。

「ホンマのヒーローっちゅうんは、完璧やないからこそ、カッコええんや。失敗して、泥臭くて、それでも諦めへんから、みんなが応援するんや!」

ナムサンダーが一瞬、動きを止めた。奴の雷が、わずかに弱まる。

「お前は、俺様が『考えた』最強無敵のヒーローや。せやけど、俺様自身は、お前みたいな完璧超人ちゃう…。泥臭くて、アホで、すぐ調子に乗る、ただのおっさんや!」

俺様は、ジョージから教わった全てを思い出す。エレガントな動き、重心の制御、カウンターのタイミング、そして――ユーモア。全てが、今この瞬間のためにあった。

「せやから、俺様はお前に勝つ!俺様の『不死身の不完全さ』で、お前の『完璧さ』を打ち破る!」

俺様は、最後の力を振り絞り、ナムサンダーに向かって突進した。全身の筋肉が悲鳴を上げる。だが、止まらない。止まれない!!

「不死身流奥義――エレガント・死蟲…パンチ!」

必殺技に自分の名前入れんの何気に恥ずかしいけど!


        エエ歳して!!!!


 ジョージから教わった全ての技術を詰め込んだ一撃。完璧ではないが、無駄がない。エレガントではないが、俺様らしい一撃。泥臭くて、不格好で、だからこそ、誰にも真似できない一撃。

ナムサンダーの電光バリアを突き破り、俺様の拳が、奴の胸部装甲に直撃した。ガキィン!という金属音が、響き渡る。

「ぐああああああああ!」

ナムサンダーが吹き飛び、壁に激突する。電光説破ダイナモが火花を散らし、機能停止する。奴の体から、雷が消えていく。

「こんな……こんなはずでは……私は完璧なヒーローのはず……」

ナムサンダーが膝をつく。その姿は、どこか寂しげだった。

俺様は、倒れた奴に近づき、手を差し伸べた。

「お前は強かった。だが、完璧すぎたんや。もうちょい、肩の力を抜いてみぃ。そしたら、もっと強くなれるで。」

ナムサンダーは、俺様の手を取り、立ち上がった。その手は、もう雷を帯びていなかった。

「……貴方に負けました、死蟲さん…貴方のような半端者に…。」

「おいコラ待てやお前!?!?」

「またお会いしましょう……因果の果てで…………。」

奴の姿が、徐々に光の粒子となって消えていく。

「金輪際、まっぴらごめんやて……。」

ホンマ疲れた…。


 ナムサンダーが完全に消え去ると、システムさんのゴキゲンなアナウンスが響いた。

『パーソナルイベント:最強のヒーローとの対決、クリア!

報酬:スキル『電光説破』獲得!

ついでに今回のバトル、イイ感じに編集して動画にしときました!ファイル送っときますね!!』

サービス過剰やな!?


 変身を解き、俺様は俺に戻る。全身の疲労を感じながらも、満足げに笑った。持ち込んだおにぎりをもしゃつきながら、久宝寺ダンジョンの入口に向かう。


久宝寺ダンジョンの入口に戻ると、ジョージが待っていた。両手を広げて、ハグする気満々で。

「ワオ!アキヲ!君は勝ったんだね!その顔を見れば分かるよ!」

「ああ、おかげさまでな。お前のおかげや。」

ジョージは満面の笑みで俺を抱きしめた。その抱擁には、師匠としての誇りと、友としての喜びが込められていた。

「これで君は、真の『エレガント・ウォリアー』だ!さあ、祝勝会だ!最高の鶏白湯ラーメンを食べに行こう!」

「ええで!今日は奢るわ!」

俺とジョージは、久宝寺ダンジョンを後にし、ジョージのクソ派手なファイヤーフェニックス号で「麺屋 一掃」へと向かった。鶏白湯ラーメンを堪能しながら、俺たちは一週間の特訓を振り返った。

特訓の一週間は地獄だったが、得たものは計り知れなかった。そして、俺はまた一歩、真の強者へと近づいたのだった。知らんけど…。

来週もお楽しみに!!ブックマークやイイネやご評価☆いただけると幸いです!!

宜しくお願い致します!

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