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第1話 朝日

私、白羽、ノアの3名で東京防衛部隊が組まれた。白羽は北京を直属の部下に任せ東京まで来ているが、ノアは眼を通じてベルリンからの参加である。宮城などでの超知能の侵攻をノアの眼で観測したところ本当に人間と見分けがつかないような、銃をもったものや戦車のようなもの、それにネットワークを使ってそれらを操る指揮官的なものも数個あることがわかった。そして白羽が

「思ったよりも人類同士の戦争のような戦い方をしてくるものだな。あいつ(超知能)がそうするなら私たちも軍隊を組むのが得策だろうな。」

と言った。

「すぐに準備できるのは自衛隊、台湾軍、オーストラリア軍、ニュージーランド軍を中心に約60万人よ。訓練さえすれば来年には大きく増えて5000万人は用意できるでしょうけどそこまでには勝つか負けるかしてるでしょうね。」

ノアはそういった。そして私たちは早急に軍隊を整備した。


1週間後東京の街にサイレンが鳴り響く。東京湾に超知能の軍隊が上陸する。

「ついにここにもやってきたのね。」

私がそう言うとノアが口を開いた。

「全体の指揮は私が取るわ。あなたたちで前線をまとめてちょうだい。」

「任せてノア!!私たちがこてんぱんにしてくるから!」

と元気そうに白羽が言った。


戦場に赴く。そこではすでに人類と超知能による激しい戦闘が繰り広げらっれていた。

「ぱっと見た感じは互角だけどこれだとすぐに負けるでしょうね。同じ戦場でも全然統率が取れていない。ノアが指示してるというのにね。きっと情報網があいつらに破壊されてろくに使えないんでしょうね。情報網に関しては任せるからね!」

白羽はそう言ってどこかへ言ってしまった。私は私にできることをしよう。

私はすぐさまあのAIたちが操作しているプログラムの世界に入り込んだ。書き換えられているところを再び書き換え直す。何箇所も何箇所も、ひたすら書き換え続ける。しかし、私が書き換えているときもお構いなしにあいつらもシステムに干渉してくる。このままではいたちごっこだ。そうしているうちに戦況は悪化していた。ジリジリと後退する戦線。こちらは減る一方なのにも関わらず増え続ける敵の数。どうしようかと頭を悩ませていた時、白羽が再びこちらにやってきた。白羽の笑顔をみるに白羽の方の状況は好転しているらしい。

「白羽、あなたどうやってあいつら倒してるの?」

そう質問すると白羽は黙ってAIが湧いてくる方へと視線を向けた。

異能、コピーを使って彼女はAIの中でも特にでかい戦車のようなものを大量に複製し、空中から雨のように降らせた。思ったより白羽って脳筋なんだなと思いながらも戦況が好転していることに間違いはない。白羽が時間を作ってくれている間に私もなにかしなくては、、、何もできていない自分への焦りが募る。すると白羽は笑顔で私にこういった。

「異能において大事なのはそれ自身の強さじゃないの。どう使うかが大事なの。私の能力だって単に大量に複製してもごみになるだけ。だけどそれを降らしてやつらに衝撃を与え破壊する、それを積み上げて石垣のような壁にする。そうすることで簡単には突破できない要塞ができあがる。ほら、みてよ」

見るとそこには本当にやつらのコピーやすでに破壊されているAIで防波堤のようなものができあがっていた。我々は地理的な有利を得たので戦いやすくなるだろう。

1週間ほど経った。状況は良くも悪くもならないが白羽がコピーしたものは12時間経てば消失するらしく無限に積み上がることはなくAIの亡骸も数時間で消失するのでちょうどいい具合に要塞を保てている。地理的な有利で殲滅に成功しているがなにせ奴らは無限に湧いてくる。倒しても倒してもキリがない。私は1週間

「異能において大事なのはどう使うか」ということを念頭に置いて考え続けた。そして今、1つの可能性を見つけた。あのAIたちもシステムによって動いているのであれば私が直接干渉すること可能なのではないだろうか。そしてすぐに試してみた。

やつらを視界に捉える。意識を接続する。侵入する。システムを破壊する。

ーピタッー

AIの動きが止まった。

「やった!成功した。」

そんな喜びを感じながらこの感覚を忘れないように私は湧いてくるAIを倒し続けた。私がAIの破壊を初めてから明らかにAIの数が減っているように見える。白羽がいうにはどうやら私が1体のAIを倒すのにかかっている時間は1秒未満らしい。


「ブルーバックスクリーン」という言葉を皆さんは知っているだろうか。

ブルーバックスクリーンが表示されるとサーバーは完全に停止する。そして再起動すらできなくなるというまさに「詰み」とも言える画面だ。

どうやったらその画面が表示されるとき、メモリ管理のコードに異変が生じていることが多い。

プログラムが動く時、OSからメモリ(作業スペース)を借りるわけだが、このメモリを確保する、解放するという大切なコードに異常が起きると、システムは一瞬で自分がどこで何をしているのかがわからなくなるのだ。この現象をバッファオーバーフローと言う。


前世がSEでほんとに良かった。なんて思いながら私はAIを倒し続ける。

莫大なコードが綴られる中たった数行、メモリに関する箇所を削除する。それだけで眼の前にいたはずの武器を持った恐ろしいAIはただの鉄の塊に変わるのだ。そんなこんなで順調にAIを倒していると

「茜、白羽聞こえる??」

ノアの焦った声がトランシーバー越しに聞こえる。ちなみにだがこのトランシーバーが使っている無線は私が作り上げた電子界を通るため簡単には干渉されなくなっている。

「聞こえるけど、そんなに慌ててどうしたの?」

白羽が私の隣でそう言った。

「おそらくだけど東京侵攻の司令塔的存在を見つけたわ。そいつを倒せばこの無限に湧いて出てくるAIも湧かなくなると思うの」

「ノア、それほんと?」私がそう言うと

「ええ、ほんとよ。でも、、、」

「でもなによ、はやくそいつの居場所を教えなさいよ」

白羽は早くしろと言わんばかりにそういった。

「東京海底谷よ、、、」

東京海底谷。聞いたことのない場所だが名前的に海の底なのだろう。

海底か、、、どうやって倒せばいいんだろう。そう考えていると続けてノアが

「深さ約600メートル、最も深い場所だと700メートルを超えるわ。」

「そんなのどうやって倒せって言うのよずるいじゃない自分だけ安全な場所から干渉してくるなんて」

白羽は怒りと悲しみが混じったような表情でそういった。自分たちでは超知能に勝てない。まるでそう悟ったような、そんな気がした。

「私たちに干渉されないように超知能は深海を選んだのでしょうね。ほんとなんで海水で壊れないのかしらね。白羽、諦めるのはまだ早いんじゃないのかしら。」

「早いってこれ以上どうしようもないじゃない」

「そこにちょうど良さげな異能力者がいるじゃない。茜っていうね。」

「え、私?」

「ええ、あなたよ。だってあなたAIのシステムに意識を接続できるのでしょう?だったらそのAIのシステムを解析して指示を出している司令塔の場所を解析する。そして指示の信号を逆走して司令塔のシステム内部に入り込む。それが実現さえすればまだ可能性は0ではないんじゃないかしら。」

確かに理論上は可能だろう。やるかやらないかで言えばもちろんやるのが最善だ。しかしこの作戦あまりにも私の責任デカくないかな、、、

そんなことを思いながらも私は着々と準備を進めた。まず司令塔を見つける作業からだ。司令塔が1体出ない可能性も大いにある。なので私は10体ほどのAIのシステムに意識を接続し信号の出どころを割り出し、解析済みのAIは破壊した。10体とも信号の出どころは同じだったので今回の司令塔は1体とみていいだろう。司令塔の数を特定したところで私は1つの可能性を思いついた。司令塔を解析し信号の出どころを割り出す、それを繰り返せば超知能のありかを特定できるのではないか、と。2人にも伝えたところ白羽はテンション高めに「天才じゃん茜!」と言ってくれたが、ノアの反応を見るに微妙らしい。日本への侵攻は超知能にとって初めての物体を用いた作戦なので失敗した時のことも考えて何らかの対策をとっていると思われる、それがノアの考えだった。そう言われればそうだ、超知能が1回目の侵攻で失敗するケースを考えていないわけがない。この作戦はダメそうだなと少し残念に思いながらも私はひとまず東京侵攻における司令塔を破壊する作戦を実行することにした。


AIのシステムに意識を接続。接続完了。信号の発信元を特定。特定完了。司令塔の内部への侵入。侵入完了。司令塔のシステムの解析。解析完了。システムを破壊。破壊不可。

「対象ノ干渉ヲ検出、構造更、、、」


「え、」

どうやら破壊できないままシステムから追い出されてしまったようだ。

「システムの解析まではうまく言ったのに、どうして、、、

それに最後なんて言ってたんだろう。」

私がそうつぶやくと白羽が言った

「たまたまミスしただけかもだし、もう1回やってみようよ。」

「そうね。」

今のはミスなんかではない。そもそもとしてシステムに書いてあるメモリ管理のコードを消すだけなのだ。ミスのしようもない。再び司令塔に侵入し解析する。

「は?」

おかしい。さっき見たときよりもシステムが大きく書き換わっている。いや、現在進行系で書き換わっている。どうやら先程は構造更新(アップデート)と言いかけていたのか。不審に思った私はシステムの構造だけでなくシステムの内容まで解析することにした。

コードの書き換えが終わると同時に私の解析も終わり瞬時に意識の接続を解除して白羽たちのもとへ戻った。

「どうだった?」

心配そうな声色で白羽は私にそうたずねた。

「今から司令塔がこっちに来る。おそらく2〜3日後にここらへんに来ると思う。」

向こうから来てくれるなら万々歳じゃないの?そう言いたげなノアの表情が読み取れる。

「あいつは今までのAIとは違って簡単に倒せない可能性が高い。そして、勝てなければ数日で東京は崩壊するでしょう。」

私は解析によって得られた情報をノアと白羽に共有した後作戦を考えるため1人で東京の拠点に戻った。


「眠い。」

2日後の朝私は歩いて東京湾に向かう。結局大した作戦は思いつかなかった。ノアから聞いた話だと昨日の昼くらいからはAIが湧かなくなったらしい。嵐の前の静けさとはこのことを指すんだろう。そう思いながら1歩、また1歩と東京湾へと歩みを進める。私が東京湾へ向かうと同時にあれもまたこちらへ向かってきている。

「私の計算では、、、」

私が到着すると同時にクジラが飛び跳ねたような、そんな巨大な水しぶきが舞い上がった。どうやらプログラムから秒単位のズレもなく移動してきたらしい。正確すぎて気持ち悪いくらいだ。


戦おうにも勝ち目がないことを私は知っていたからだ。なぜならば2回目の解析のときにシステムをこれ以上変更することができないようにするプログラムが最後に付け加えられたことで私が干渉できなくなったからだ。侵入することすらできない。まさにブルーバックスクリーンを見ている気持ちだった。だからといいて何もしないわけにもいかない。私は1つの結論に至った。あいつのシステム自体はこれ以上変更することができない。内部から干渉できないなら外部から物理的に破壊するしかないだろう、という結論に至った。とはいっても相手は鉄の塊だ。そう簡単には壊れてくれない。

「マジでなんなのよこいつ」

白羽は地面に落ちている要塞と一部となっているコピーされたAIの数々を操り、とまることなくあいつにぶつけようとする。しかしその攻撃が当たることはなかった。コピーされたAIも亡骸となったAIのように、あいつに当たる直前で霧となって消えるのだ。私は足元に落ちていた石を拾ってあいつに投げてみた。

コンッ

「あ、当たるんだ」

どうやらあいつは何でもかんでも霧にできる訳ではないらしい。おそらくAIの亡骸を霧にしていたのはこいつなんだろう。コピーも構造が同じだから同じ要領で霧にできるってことか。

「てかこいつ全然攻撃してこないな」

白羽がそういった途端

私のシステムが侵入者を検知した。私の防御システムが突破された、まずい、、、私はすぐさまシステムに意識を接続する。とんでもない速度でコードが書き換えられていく。


2020年、こんな火事があった。スマホが発火する。

本来スマホにはサーマルマネジメントシステム(発熱制御装置)というものがある。それが機能しなかったことでつけっぱなしで放置されたスマホの温度が上がり続けリチウムイオン電池が爆発したのだ。

そして今書き換えられているのはスマホ画面をつけたり消したりするところとサーマルマネジメントシステムだった。


私は背筋が凍るような感覚を覚えた。私の作り上げたネットワークはより強固な防衛システム付きでほかのネットワークよりも安全でこんな情勢なので東京に住む1億9000万あまりの人のほとんどが使っている。そんななかあいつはスマホを爆破することで東京を焼け野原にしようとしているのだ。やつが書き換えたコードを上書きしようとした。システムを破壊することもなぜかできなかった。色んな方法を試すこと数十分。ノアが口を開いた。

「東京の住宅街にて火事を確認したわ。」

そんな知らせだった。私はノアと白羽に概略を説明し可能な限り多くの人を連れて北京に逃げようという話になった。東京という街が火の海に変わる瞬間を目の当たりにしながら私は北京の地へと向かうのであった。1日中あいつとシステムの世界で戦っていたらしく気づけば再び朝になっていた。街の火のせいだろうか。昇ってくる朝日が少し暗い気がした。





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