潤、江戸城に怒る
広瀬潤(39)は食後、テレビをつけた。
画面には歴史番組。ナレーションが流れる。
「こちらは江戸城。徳川幕府の中心として——」
潤は画面を見て固まった。
「……え?」
画面に映っているのは、広い石垣と芝生。そして、ぽつんと建つ天守台の土台。
潤は眉をひそめた。
「……城……?」
◇潤、怒りのスイッチが入る
潤はテレビに向かって叫んだ。
「いやいやいやいや!どこが城なんだよ!!」
母が驚いて振り返る。
「潤、どうしたの?」
「母さん、見てよ!これ、土台しかないじゃないか!」
潤はテレビを指差した。
「これで“江戸城です”って言うのは……さすがに無理があるだろ……!」
◇潤、独自の“城定義”を語り始める
潤は真剣な顔で語り始めた。
「城っていうのは……天守がなければ始まらない……なんかこう……城感が出るだろ!」
母が言った。
「潤、城感って何?」
「城感は城感だよ!」
潤はさらに続けた。
「土台だけで“城です”って言うのは……煮つけの皿だけ見せて“煮つけです”って言うようなもんだよ!」
「潤、例えが変よ」
◇潤、怒りのピークへ
テレビのナレーションが続く。
「現在、江戸城の天守は失われていますが——」
潤は叫んだ。
「失われてるなら“城跡”って言えよ!!なんで“城”って言い張るんだよ!!」
父が新聞をめくりながら言った。
「潤、落ち着け。江戸城でいいんだよ」
「いや、僕の中では合ってないんだよ!」
潤は拳を握りしめた。
「僕の中の“城”の定義は……天守があること!これが絶対条件なんだ!」
母がため息をついた。
「潤、あなたの定義は一般的じゃないわよ」
◇しかし潤は立ち直る
潤は突然、顔を上げた。
「いや……逆に考えるんだ……」
母がつぶやく。
「どうしたの」
潤は胸を張った。
「江戸城は……“シュレーディンガーの城”なんだ!」
父が新聞を閉じた。
「潤、もう寝なさい」
◇夜、潤は満足する
潤はテレビを消しながらつぶやいた。
「土台しかないのに城を名乗る江戸城……」
こうして潤の一日は、また奇妙な怒りとともに幕を閉じたのであった。




