エピローグ
国王様に案内されて来た、豪勢な広い部屋。
そこにある椅子に座る国王様の対面で、私とユリウスは隣り合わせにソファに座っていた。
座っているときも私の手を離さないでいてくれるユリウスが愛おしい。
すると、国王様が口をひらいた。
「マリアローズ嬢。
儂の息子がすまなかった」
そう言って、国王様は頭を下げた。
それを見て、私も慌てた。
「こ、国王様!
頭を上げてください!
悪いのは、全てジェラルド様なので……」
流石に国王様に頭を下げられると私も気まずい。
どうにか頭を上げてもらうと、国王様は苦々しい顔で呟いた。
「ユリウスに言われたときは半信半疑だったが。
まさか、ジェラルドが本当に浮気をしているとは。
その上、婚約破棄までしようとするなんて信じられない。
ハートヴィーナス家には、これまで何度も助けてもらった。
本当にこんなことになってしまったのは残念だ。
申し訳な……ん?」
と、再度謝っている最中。
国王様は私とユリウスを見て何かに気づいた様子。
「なんだお前たち。
手をつないでいるが、いつの間にそんなに仲良くなったのか?」
と、目を丸くしながら私達の繋ぐ手を見る国王様。
すると、ユリウスはニコリと笑いながら国王様を見る。
「お父様。
実は俺達、一月前のパーティーのときに出会いまして。
そのときにジェラルドの浮気も発覚したのですが。
それからは、マリアローズには俺からアプローチしまして。
今は、マリアローズと付き合っているんです」
「なんと!」
仰天した様子の国王様。
その顔は驚きと歓喜の両方が混じっているように見える。
なんだか、改めて言われると恥ずかしい。
実は、私とユリウスはあのパーティーの後も交際を重ね、付き合うようになった。
そして、タイムリープによってジェラルドが私に婚約破棄を告げることを知っていた私達は、国王様をあの部屋の扉の前に呼び、ジェラルドが私に婚約破棄を告げるところを聞いてもらったのである。
これによって、ジェラルドが婚約破棄によって降りかかる問題から逃れられないようにするためだ。
この婚約破棄問題を国王様が知ることによって、ジェラルドは王位継承権を剥奪されるだろうとよんでいたのだが。
実は、元々国王様はジェラルドの王位継承権を剥奪するつもりだったらしい。
優秀なユリウスに対して、ジェラルドはいつも不真面目どころか各所に迷惑をかけていたらしい。
そのしわ寄せがいつも国王様に来るので、そろそろ王位継承権の剥奪を告げようと思っていた矢先に、ジェラルドが婚約破棄までしたので堪忍袋の緒が切れたというところだろう。
そして、目の前にいる国王様はユリウスに似たニコリとした笑い顔で私達を見た。
「そうかそうか。
ユリウスとマリアローズ嬢がくっついたのであれば、安心だ。
むしろジェラルドより、最初からユリウスとくっつくべきだったのかもな。
儂は、お前たちを祝福するぞ!
わっはっは!」
と言って、陽気に笑いだした。
その国王様の笑い顔を見て私とユリウスもつられて笑っていたのだった。
ーーー
それから一か月が経ち。
私とユリウスは、レイランド城の中でも特別な空間「謁見の間」で、向かい合っていた。
そこには、私達だけでなく、たくさんの王族・貴族が集まっている。
その中には、ムスッとした表情のジェラルドやセリカもいた。
あの後、セリカは、ジェラルドが王位継承権を剥奪されたことを知り別れたらしい。
それにショックを受けたジェラルドは、泣いてセリカにすがったという話を聞いた。
聞くだけでも悍ましい話である。
だが、今の私にあいつらのことはもう関係ない。
なんたって、私は今日ユリウスと結婚をするのだから。
すると、私達の前で壇上に立つ国王様が口を開く。
「ユリウス。
お前は、マリアローズ嬢を一生愛し、マリアローズ嬢を守り抜くことを誓うか?」
そう国王様に言われて、ピシッと背筋をただし、いつもと違う真面目な顔をするユリウス。
その騎士のような恰好をした男らしい姿に、思わず抱き着きたくなるが、ここは我慢。
「誓います!」
大きな声で宣誓するユリウス。
その声に、見に来た貴族たちも歓声をあげる。
そして、今度は私の方を向く国王様。
「マリアローズ嬢。
お前は、ユリウスを一生愛し、ユリウスを支え抜くことを誓うか?」
私は、チラリと隣にいるユリウスを見る。
すると、ユリウスはニコリと笑って頷いてくれた。
それが嬉しかった。
そして。
「誓います!!」
大きな声で宣誓すると、国王様は大きく頷いた。
「この宣誓をもって、我が息子ユリウスとハートヴィーナス家のマリアローズ嬢は婚姻したものとする!
それでは、ユリウス!
誓いのキスを!」
国王様がユリウスに目配せすると、ユリウスは頷いて私の方を見た。
そして、片膝をついて私の右手をとる。
ドキドキが収まらない。
これで私もユリウスと結婚出来るのかと思うと、多幸感で一杯だった。
このとき、色んなことを思い出す。
親の決定でジェラルドと婚約したこと。
ジェラルドと結婚するために努力してきたこと。
それなのに、ジェラルドに婚約破棄されたこと。
ジェラルドを平手打ちしたら、タイムリープしたこと。
そして、そこでユリウスと出会ったこと。
これまでの経験、辛いことも多かったが、無駄なことは一つもなかった。
思えば、あのタイムリープも私がユリウスと出会えたきっかけである。
もしかしたら、神様が私にくれた恵みなのかもしれない。
そう思うと、これまでの経験全てに感謝しかない。
ジェラルドとセリカはこちらを睨んでいるが、それすらも視界に入ってもニコリと微笑んでしまうくらいには幸せだった。
そんな幸せを噛みしめていると。
片膝をついたユリウスが私を見上げながら口を開く。
「マリアローズ。
君と結婚出来て良かった。
愛しているよ」
そう言って、私の右手に口づけをしたのだった。
私は幸せ者である。
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