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六話

 終業間際に出動命令が出たのもそうだが、グールの出現が確認されたとあって白井の士気は低かった。グールが発する腐臭は一度染み付いてしまうと中々、落ちないことで部隊内で有名となっており官品である戦闘服も無制限に支給されるものではない。


 噛みつかれない限りは感染の可能性は低いとはいえ銃撃が有効でない敵に対してできる事は少なく、被害が出る度に警察や自衛隊に批難の声が上がり特に自衛隊が狙い撃ちにされるのである。


 普通の害獣であれば銃を持たない一般市民でも対応できることもあるが特危獣は違う。概ね空気感染する様な病気の発症は確認されていないが、それがこれからも保証されているとは限らず出動した隊員は一定期間は隔離される事が法律で決まっているのだ。


 出現、当初よりは情報が集まってきているとはいえまだ分かっていない事は多い。グールに噛まれると何故、動物もグールに変異してしまうのかとか。そもそも何故、特危獣が出現したのかなど疑問は多い。


 ローファンタジーによくある魔物を倒すと経験値が得られ、スキルを取得したりステータスが上がる描写があるが、出動した隊員が超人的な能力を得る事もなければ各地にダンジョンが出現することもないのだ。


 人や動物への被害が大きい為に駆除(殺処分)が命じられているが、今回の出動先はこれまでに無かった変異する課程が記録されており、警察官と一般市民がその被害に遭っているのだ。


 各種生命保険に入っていたが、特約によって特危獣に襲われて死亡した場合には保険金が支払われない。自衛隊による助成があった為に保険を切り替えたが、独身である白井でも保険料は負担となったのだ。


 給料の安い士や曹は悲惨であり危険が多い割には特危獣対策警備隊の待遇は良いとは言い難いのだ。二尉に昇任した事によって給料は上がったが、部隊の人員が少ない為に非番であってもおちおち外出などしている暇がない。


 藤堂三佐は出動と防衛省などへの報告以外では駐屯地を出ていないとの噂であり、小隊長・分隊長も同様だ。指揮官クラスは能力と独身であるかを選考基準にしたとも囁かれているほどだ。自衛官をしていれば料理を除いた家事能力は高くなり、駐屯地内でほとんどの事を完結する事が可能なのだ。


 春日一尉は機甲科の幹部であり、装甲車の指揮と派遣部隊の統合指揮を執ることになる。戦車乗りとしての各種モス資格を持ち、一般道で運転するために大型特殊免許も所持している。実際に運転するのは別の機甲科の隊員ではあるが、藤堂三佐以上にとっつきにくい性格であり白井との相性は良くはないのだ。


 だが、レンジャー課程での教訓が同じレンジャー徽章持ちであり幹部自衛官である春日に逆らう事を許さなかった。永遠と行われた地獄の日々は思い出したくない記憶として奥の片隅に封印されている。


 訓練用に養殖されたものと分かっていても現代日本人が蛇や蛙を調理して食べる事に抵抗を覚えない筈がない。休憩することなく行われた作戦行動で疲労と空腹が極限状態にあった時でさえ、蛇や蛙を口にするのを躊躇ったのだ。


 食べなくては体力が持たない事は分かりきったことで荷物の中にはレーションはない。缶飯と呼ばれ外国の軍隊に好評ではあるが戦闘糧食であるために味は少し濃い。好き嫌いが分かれる物ではあるが、今はそれすらも手に入らない状況で一般社会であれば手軽に入手できるコンビニ弁当など当然ない。


 敵地での作戦行動を想定した訓練であり、野生の動植物の中で食用に適した物を発見し調理する事もレンジャーに求められる資質の一つなのだ。山岳地帯が多い日本にとって山に適応するのは領海を護ることと同じくらい重要なことでだ。


 敵基地を制圧する航空兵器は制限されていても陸上部隊に基地制圧能力が無いのは、侵略戦争が憲法で禁止されている日本であっても問題であり、山岳ゲリラに対する対抗手段を持つ為に実施されるのだ。レンジャー課程中は容赦なく教官から罵声を浴びせられる。


 その間だけは少し休めると思うほどに切迫した状況で行われるのだ。そして藤堂の笑顔を警戒する様になったのも少し散歩をするかという位の感覚で装備を背負ったまま山に放り込まれ教官の監視下で作戦行動をする羽目になったのだ。落第を突き付けられれば送り出してくれた上官の恥となるばかりか今後のキャリアにも影響を与える。


 一握りしか得られないレンジャー資格だとはいえまだ白井は恵まれていたのかも知れない。幹部レンジャーと部隊レンジャーでは難易度が違うとされているからだ。脱落=幹部失格ではないが、脱落した者を藤堂は暖かく迎える事はないだろう。


 新設部隊の基幹幹部は必要不可欠であり、選ばれた事は光栄に思うが、レンジャー課程修了は幹部であっても高いハードルであった様にしか思えないのだ。鍛えられた自衛官でも参加資格すら得られないのがレンジャー課程である。


 そして選考に合格して初めて受験の資格を得られるのであって、そこからも地獄である。戦場も地獄であると比喩されるが、戦場の方が肉体的に楽だったんじゃないかと思われる課程なのだ。レンジャー資格を修了した後に外出した時には一般社会が天国に見えたほどだ。


 曹の中にもレンジャー資格を持つ者が多いのは心強い。一人であったのならあのような地獄を生き残る事はできなかっただろう。職務中の負傷が増えた事によって警察や自衛官になりたいと思える若者は減少した。


 物語の中であれば一発逆転があるが現実は残酷である。負傷した警察官や自衛官に居場所はない。同僚は暖かく迎えてくれるだろうが、負傷した者が仲間に迷惑をかけている事に耐えられなくなり去っていくのだ。医学が進歩したと言っても再生医療では日本は後進国である。


 技術力はあっても治験の許可は中々下りず、他国にリードされているのが現状なのだ。そして未だ各国は臓器や手足の再生治療を成功させた国はない。機械的に神経と繋ぐ事で視覚や感触の復活は可能となったが限定的であり、保険適用がされない治療もまだ多いのだ。


 日頃、人権を主張する市民団体は警察官はともかく自衛官に関する人権はどうでもよいと考えているらしい。国を護る者達が居なくなれば今の生活を維持することすら困難になるだろう。スクランブル発進したパイロットも死ぬかも知れないリスクを承知で任務に就いているし、海自や海保も日々、不審船に対して目を光らせ時には銃撃や体当たりを受けながらも領海を護っているのだ。


 裁判所は政治的な事に司法は介入しないと言っている場合ではなく、国民が司法判断を求めたのであれば司法に携わる者として最高裁判所判決を出すべきだったのだ。改憲に対しても殆んどの国民は興味を持たないだろう。正直な所、合憲だろうが違憲だろうが実生活に与える影響は殆んどないと国民が考えているからだ。


 そして誰が政治をやろうと結局はあまり生活が変わらない事に国民は気付いたのだ。野党が与党に与党が野党になった事もあったが、選挙によって政権交代が行われ、野党には政権運営能力が低い事を露呈させただけである。改憲はアメリカの保護下からの脱出であり改憲して初めて日本は独立した国家であると主張する者もいるが変えない方が良い物も確実にあり、過去の過ちを再度、犯すとは考えにくいが過ちを繰り返すのが人間でもあるのだ。


 出動する事になった春日小隊の隊員達は輸送ヘリへと物資の搬入作業を終え出動体制が整うのに暫し時間を要した。その間にも小田原城では警察官と特危獣による戦闘が行われており、突破されない為に消防車による放水も行われていた。


 用意できた消防車の数は少なく、明石の要請を受けた消防庁の協力で駆けつけていたが絶対数が足らずグールに突破された箇所もあった。藤家は危機管理センターで内閣総理大臣として防衛大臣や国家公安委員長の報告を受けていたが、迂濶に自衛隊を動かす事もまたできなかった。


 他国が関与している証拠はないが、今回の特危獣の出現には人為的な疑いが強かった。首都に近ければ何処でも良かった可能性は高く、日本の危機対応能力を観察している可能性すらあるのだ。ロシアが頻繁に領空を侵犯するのも偵察機の能力や内閣や防衛省の対応を見るためのものである事が多いのだ。


 治安出動待機命令が藤家によって承認され、事前準備の為の情報収集も許可された。情報がなくては部隊は戦えない。特危獣対策警備隊が全て出動しなかったのも一般の隊で対応出来ない事態に備える必要があると考えたからである。警戒情報指令所から入ってくる情報は特危獣対策警備隊でも情報共有はされていたが、状況は良く無いのだ。


 別の部隊にも出動命令が下ったが、規模はそれほど大きなものではない。重装備をした自衛官は周囲を威圧する。戦車でなく装甲車にしたのも戦車では威力が高すぎるという事もあったが、要らぬ不安を与える必要はないと藤家が考えたからである。


「現場まで五分を切った。各員は降下準備」


 広い場所を確保するのは難しく小田原駅の近くにある中高一貫校に臨時作戦本部とする事になった。私立ではあるが、警察官や自衛官が事件が解決するまで常駐してくれるのであれば生徒の安全を確保しやすいと学校側が考えたからであり、警察官と自衛官が展開するのには学校は都合が良かったのである。


 現場に近い事で指揮がし易く、小田原警察署も近いとはいえ少し距離があるのも事実である。公民館では既に一般市民の受け入れを始めており、避難所として機能している。降下訓練を受け資格を持った隊員達はロープ一つで降下して行く。


 装甲車は重量があるために直ぐには展開が出来ないが隊員だけを先に下ろしたのは警察官には荷が重いとしか見えなかったからだ。負傷した警察官を後送するために救急車が近くで待機していたが、それ以上は近付けないようだった。


「白井分隊は負傷した警察官の後送を支援。鴨宮分隊は放水している消防官の後ろで待機だ」


 春日に近付いてくる警察官は部下を引き連れ敬礼していた。春日も自衛隊式の敬礼で返礼した。


「神奈川県警、小田原警察署署長の立花(たちばな)です」


「特危獣対策警備隊、小隊長春日一尉です。ここの指揮は秋津(あきつ)二尉が執ります」


 特危獣対策特措法によって警察から現場指揮権が自衛隊に移る。階級としては一尉では不足であるが、危機管理室から直接、藤家の指揮を受ける事になるために問題はない。一つの現場に中隊が派遣される事はまずなく、小隊規模での派遣となる。


 自衛隊でも階級に則った指揮系統が確立されているが特危獣に関しては特危獣対策警備隊に優先権があり周囲の隊に対して協力を要請する事ができるのだ。指揮権の委譲に伴い春日は指揮車輛へと乗り込む。


 小田原城とは目と鼻の先であっても安全を確保しつつも直接、指揮を執るのが重要だった。第一小隊で着地に失敗する様な者はいないだろうが、ヘリからの降下は狙われる危険もあり、所持出来る弾薬も少ないのだ。本来なら人員が乗るスペースには武器弾薬が積まれ救護キットの用意もされていた。


「分隊は状況を報告しろ」


「こちら白井分隊です。グールの数が多くアサルトライフルでは対抗できません。負傷した警察官の収容は順調に進みつつありますが、救急車の数も足りていません」


「こちら鴨宮分隊。狙撃班による後方支援をしておりますが、やはりグールには効果が薄いようです。手榴弾の使用許可を求めます」


「両分隊は現状維持に努めよ。俺も直ぐに現場に向かう」


 春日は直属の分隊員に小田原城周辺の安全確認を命令している。装甲車の運転で人手が必要であり、なるべくであれば被害を受けたくはないのだ。警察官には規制に注力して貰わなくてはならない。


 臨時本部にも秋津と通信士を残してきた為に確認に向かわせられるのは班規模でしかない。警察官には限界が近付いていてももう少し頑張って貰わなくてはならない。指揮権は移動しても警察官は臨時本部での仕事があるのだ。


 元々、近かった事と渋滞の車を退かしていたことで春日はすんなりと現場へと到着した。装甲車を止める警察官はおらず、機動隊員の下へと案内してくれた。機動隊員達は銃撃が効果がないと判断してからジェラルミンの盾でグールの侵入を何とか防ごうとしていたが、すり傷を負った者も多く感染が危惧されている。


 心停止さえしなければ発症の可能性は低いが、本人が発症しないだけで菌を保有している可能性は否定できない。グールが確認されたことで中央即応集団司令部に属する中央特殊武器防護隊に支援要請が為されている。


 即席の火炎瓶を作り投げる様に警察官に対しても要請をしていく。消防官がいるのであれば延焼する可能性は低く、グールに対して火が有効なのはこれまでの経験で判明している。


 鈍器で骨を折っても動きを鈍らせるだけであり痛覚が消失しているのか骨を完全に粉砕しなくては動きを止める事は難しいのだ。対人地雷で手足を吹き飛ばすのも有効的だが、撤去作業には時間がかかり、隊員の負担になる。


 銃撃でも衝撃で止める事は出来ても戦闘不能にするのは難しい。周囲の被害さえ無視していいのであれば個人携行弾や戦車による砲撃、航空支援など様々な方法がとれるが、銃が使えるだけでも有難いことなのだ。


 従来であれば指揮官が進退を賭けて発砲命令を下すしかなかった。自衛隊に隊する国民の理解がなかった時代には災害が起きても自衛隊が出動するまでに多くの時間を要したのだ。


 火炎瓶の費用対効果は高く警察官が手こずっていたグールの動きを徐々にではあるが止め始めた。グールが活動しなくなれば負傷警察官の搬送も順調に行える様になり、殲滅するのは時間の問題であるのだ。


「白井二尉は衛生科の隊員を連れて救護の支援に回れ。寺尾二曹は小田原城の上部から狙撃支援を行うために配置につけ」


 他の隊員にも命令を出し春日は臨時指揮所へ掃討作戦を実施する旨を通達した。現在は小田原城の敷地内の安全確保は急務であり、長く留まる事はリスクではあるが、二次感染するリスクは限りなく低いと判断していたのだ。


 特危獣を相手にするとはいえ屋内戦闘にならないとは限らない。跳弾を気にしなくてはならず、人型特危獣も存在しているために念入りに消毒しなくてはならないのだ。一体でも取り残せば数を増やす可能性がある。


 ゴブリンは個体としては弱いが繁殖力が高い魔物として有名であり、オークに比べると駆除数が多い事は事実なのだ。自衛隊では規律を隊員に教え込み命令を実行することを体に叩き込む。


 一瞬の躊躇によって仲間が死傷する事もある。一般の普通科隊員であれば元人間であるかもしれないグールに対して攻撃する事を躊躇う者もいるがレンジャー徽章持ちの多い特危獣対策警備隊の隊員は命令を冷静に実行に移す事が出来るのだ。


 春日は気付かなかったが、神奈川DMATの一員として葛西の姿があった。特危獣に襲われるリスクがあっても紛争地帯で国境なき医師団として働いた過去を持つ葛西にとって紛争地よりもましであるという認識しかなかった。


 医療物資は不足し医療機器を動かす電力も安定供給されないのが日常としている世界なのだ。特危獣から離れてしまえば安全な場所で治療に専念できる日本は恵まれているとどうしても考えてしまうのだ。


 日本であれば下肢切断をしなくても良い筈なのに設備がないだけで、切らざるおえなくなる。どの国でも多くの命が生まれては消えていくが、葛西には理不尽なことだとしか思えなかった。だが、医者を辞められなかった自分がいるのも事実であり、日本に帰国してなお医療に従事していた。


 救いたくともどうしても救えない命があった。生きられる筈なのに自殺を選んでしまう人がいるのも現状だった。それでも葛西の小さな手でも救える命が有る限りは諦める事はないだろう。


 自衛官にも医者は居るが数は限られている。災害現場に出動するDMATは特危獣に関する研修も受けていた。現場封鎖された後も封鎖地域で医療活動を出来るのは彼等と自衛官の医官だけであり、現場で治療しなければ助けられない命があるのだ。


 護衛をつける配慮を当然ながら警察官も自衛官も行う。言い方が悪いかもしれないが特殊技術を持つ医者は一般人と比べて稀少である。医師免許をとってからが始まりであり、一人前の医者になるには物凄く時間と費用がかかるのだ。


 もし医者が負傷者の治療を行わなければ何れ人類は特危獣の餌としてしか生き残る術がなくなるかもしれない。現実に人が特危獣となった以上は誰にも否定しにくいことであり、自衛官や警察官だけが戦っている訳ではないのだ。


 後に現場に出動した全警察官と自衛官には緘口令が敷かれたが、人の口を完全に塞ぐ事は難しい。テロを完全に防ぐ手立てがない以上は抗体ワクチンの開発は急務であるのだ。葛西は医者として多くの人を切ってきたが、生きて変異している人間を切ったのは初めての経験であった。正確には治療中の患者が、緊急手術を野外で受けている最中に部分変異したのだ。


 病院の手術室でもそうだが、手術の最中に医者にミスがなかった事を証明するためと医学の発展の為に後進に残す記録として葛西の手術も記録されていた。グールに噛まれた警察官の足首は酷く腫れ上がっており、鬱血(うっけつ)していた。


 どの様な細菌が入っているか分からない為にデブリを行っている最中であった。壊死した組織を除去するのは悪化させない為の外科処置の基本であり、このまま治療を行って小康状態を保った上で病院に搬送すれば足を切断しなくて良いと考えていた時であった。


 赤黒くなっていた皮膚が徐々に拡がっていったのは、血流によって変異の原因となるウィルスが全身に回っているのかも知れないと葛西は考えた。大腿(だいたい)動脈を鉗子(かんし)で遮断するのにはリスクがある。それでも葛西は血流を止めた。


 赤黒くなっていた皮膚の色が緑色となり、明らかに人ではない物へと変質していく。下半身への血流を止めているのにも関わらず足首から膝上へと徐々に進行していった。このままでは人為らざる者に変異するばかりか、警護の為の自衛官に撃ち殺される事になるだろう。


 その場に居た白井も自身の判断では行動できない為に春日へと無線を入れた。


「こちら白井分隊。本部応答願います」


「こちら本部。白井二尉どうした」


 白井は葛西が処置中だった患者が変異していくのを内心で驚きながら報告した。


「護衛中の葛西医師が治療中の患者が現在、ゴブリンと思われる姿へと変異中、対応を請う」


 報告されていないだけで日本以外の国で確認された現象かも知れないが、少なくとも特危獣の駆除に幾度となく駆り出された白井であっても未知の出来事であった。命令があったとしても人間を撃てるかという葛藤が白井にはあった。


 レンジャーとして過酷な環境に耐え強靭な肉体と精神を手にしたとしてもこれまでの常識が殺人を禁忌とするのだ。


「人を襲うなら躊躇うな。撃て」


 特危獣対策警備隊の小隊長として春日は白井に命令し、白井は引き金に指をかけた。

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