夢と模擬戦
妖艶な雰囲気のリン姉にベッドに押し倒され、お胸さまに押さえつけられる。
柔らけ~。幸せ~。ってそうじゃない。
「ちょっ・・・リン姉ダメだって俺達実の姉弟じゃないか」
「ふふふ、ジン君異世界に来たから言うけど、私達実の姉弟じゃないんだよ」
・・・なん、だと?
リン姉と俺が?
一つ屋根の下で、今まで我慢してたのって一体・・・。
「リン姉マジで?」
キスで唇を塞いでくるリン姉。
「・・・リンって呼んで。ずっとジン君が我慢してたの知ってたよ。でももう我慢しなくていいんだよ?でも初めてだから優しくしてね」
ああ、俺の鋼より硬いはずの理性が・・・。
「ジン君だけの女にして・・・」
「リーーン!」
「リーーン!」
布団から跳ね起き上がると昨日泊まった宿の扉が見える。
布団にはクロが入り込んできていて、隣のベッドには、さっきまで妖艶な雰囲気だったリン姉が反対側を向き眠っていた。
「ゆ、夢かよ・・・。なんて・・・なんて素敵な夢だったんだろう・・・また、見たい」
「俺達が実の姉弟じゃなくて、しかもリン姉から誘ってくるだなんて。そんな都合のいい夢見るなんて・・・。俺、相当溜まってんのかね?」
それにしてもめちゃくちゃリアルな夢だったな。夢の中のリン姉の唇とお胸さまの感触。俺は忘れません。
もう本当に正夢になりませんか?
眠気は一切無くなってしまったので、早かったが朝練に行くとするか・・・。
宿の庭に出ると、見たことない女の子と、少し離れてマリーちゃんの二人が剣を振っていた。
近くに居たマリーちゃんに挨拶をする。
「おはよう」
朝の挨拶は大事だよね。
「おはようございます。良く眠れましたか?」
「ええおかげさまでね」
物凄くいい夢見れたし。
「それは良かったです。ジンさんも朝練ですか?」
「ああ日課みたいなもんなんで。マリーちゃんとそっちの子も?」
「あ、この子は友達のカーナちゃんって言います」
「はじめまして、カーナと言います」
リン姉ほどではないがこの子も中々にいいものをお持ちで。
「はじめまして、俺はジンって言います。二人はいつも剣を振ってるの?」
「はい、実は二人で討伐者になろうって、それで3年前から毎日練習してるんですよ」
「マリーちゃん宿屋の娘だよね?討伐者なんて危険なことしなくてもいいんじゃないの?」
「確かにそうなんですけど・・・男手一つで育ててくれたお父さんに少しでも恩返ししたくて、自分達で新鮮な食材を手に入れれば喜んでくれるかなって」
・・・なるほど。親孝行なめっちゃええ子やん。よっしゃここは一つチートステータスの俺が鍛えてあげよう。
テンションがいつもよりおかしい?まああんな夢見たからしょうがないだろ。てか誰がいつもテンションがおかしいって?・・・俺か。否定は出来ん。
「なるほど良く分かった。3年もずっと素振りだけやってるのは、自信が無いからかな?」
図星を突かれたのか二人とも驚いた顔になった後、悔しそうな顔になった。
「失礼ですけど、ジンさんは昨日登録したばっかりなんですよね?」
「そうだよ、でも今の君たちよりは確実に強いよ?」
「そこまで言うなら、私と勝負してくれませんか?」
いいねちょっと強気なマリーちゃんも可愛くて、お友達のカーナちゃんもおろおろと狼狽えるのも、いいね。
「いいよ。でも条件がある」
「条件ですか?」
「そう、条件。一つ目は二人がかりで来ること。二つ目は全力で来ること。三つ目は・・・」
「ちょっと待ってください!そんな条件飲めません」
言ってる途中にマリーちゃんに止められる。
「そうですよ、私達二人で攻撃したらいくらジンさんでも」
ああ、俺の心配してくれてんのね?
やっぱこの村の人達いい人が多いな。可愛い子も多いし。
「俺の練習にもなるし、大丈夫だよ。まだ三つ目言ってなかったね。三つ目は俺から一切攻撃しないし受け止めもしない」
二人は意味が分かってないのか首をかしげてる。可愛い。
ここは一押し。今の俺のテンションなら余裕だな。
「なら、こう考えたらどう?君たち二人可愛いからね、俺は今から襲おうとしています」
手をワキワキさせながら近いて行く。今の俺確実に捕まるな。
「ジンさん?嘘ですよね?」
俺は無言で手をワキワキさせながら、マリーちゃんとカーナちゃんの間になるようにカーナちゃんに近付いていく。
「と、止まってください」
後、二歩のところで横から木剣が手を掠める。
カーナちゃんに手を伸ばそうとしたらやっと二人はまともに攻撃を始めた。
ふう、やっとか。危うく本当に揉・・・当たってしまうとこだったぜ。
右から、上から、左から斜め下からくる二人の木剣を、順に薄皮一枚で避ける。
「やぁぁぁぁ!」
「当たれぇぇ!」
頭を少し下げたり、一歩前に出たり、下がったり。状態を起こしたり傾けたりして二人の攻撃を避ける。
二人の剣筋は直線的で、フェイントもなくて読みやすく、目線と攻撃位置が同じで簡単に避けれた。
20分ほど、連続で打ち込んできた二人は肩で息をしながら座り込んでしまった。
「カーナちゃんさっきはごめんね。二人とも大丈夫?」
「・・・はぁ、はぁ。い、いえ気にしないでください」
「・・・はあ、はあ。なんで当たらないんですか?息も上がってないし、汗もかいてないじゃないですか」
「まあほとんど動いてないしね。それより二人が全力でやってるのは分かった。でもね、いつもいつも全力で攻撃してたらすぐに疲れるよ?緩急を付けたりしてフェイントも入れるのを忘れない様にね。それに目線と攻撃の場所は変えないと、"ここに攻撃します"って言ってるようなもんだよ。20分間打ち続けられる体力はいいと思うから、後は実戦と基礎練習をしていけば余裕でワイルドボアとか狩れるようになるよ」
「・・・本当ですか?」
「ああ、少なくとも、近くの森では油断しなければ、楽に狩れると思う。なんだったら今日行くつもりだから来る?」
「いいんですか?」
「もちろん。それで自信がついたら討伐者登録したらいい。一応登録する時は親御さんに確認取ってからだけどね」
「はい、ありがとうございます」
「じゃあ朝食後でいいかな?」
「はい、大丈夫です。カーナちゃんは?」
「私も大丈夫です」
「じゃあ朝食を取って準備出来たら宿の受付のところに集まろうか」
「分かりましたそれではまた後程。マリーちゃんまた後でね」
「うん、また後でね。それじゃあジンさんまた後で」
「また後で」
カーナちゃんは一度自宅に帰って、マリーちゃんは宿の手伝いに行った。じゃあ、少し遅くなったが次は自分の修練を始めよう。
基本のジャブにストレート。左右のコンボにアッパーやフックの連打。ローキックからのハイキックやミドルキック。左右のジャブからのハイキックやバク転時に打ち上げる蹴り。空中での高速七連蹴り。
身体能力上がり過ぎて。思った動きが簡単に出来てしまう。
軽くなのに、拳や蹴りはほぼ見えない。し最後の蹴りなんて若干物理の法則無視してる感じがする。
しかしこれでまだ発展途中か・・・これからが、ますます楽しみになるな。
体の動きを確認していると、リン姉が庭に出て来た。
夢のことがあるからちょっと気まずい。
「おはようジン君」
「おはようリン姉」
いつも通りだよな?
「久々にやろっか?」
・・・ゴクリ。いやいや、夢の中の話じゃないから。
「いいね。けど能力上がり過ぎて、危ないから俺からは攻撃しないよ」
「じゃあ減衰魔法使うからいつも通り出来るよ」
「本当に?じゃあお願いする。出来れば負荷魔法もお願い」
「いいけどかなりきついよ?」
「その方が修練にはいいでしょ?」
「そうだね、じゃあ力と俊敏を下げるね」
「いや、リン姉全部下げて」
「分かった。『減衰』、『負荷』」
「うおっ」
一気に体が重くなる。重りつきのツナギを着て、手足に重りを付けて、拘束着を着た様な感じか?拘束着とか着たことはないけど。
思ってた以上のきつさだ。これで今からリン姉と模擬戦とかヤバいな。
「『減衰』これでステータス的には一緒くらいになったけど、負荷大丈夫そう?」
「大丈夫。余裕」
「無理そうならすぐ解除するからね」
「分かった。じゃあ始めようか」
「ちょっと待ってね。『結界』それじゃあ行くよ」
俺達の周りを囲うように、薄い膜みたいなのが、ドーム状に拡がり最終的に、庭いっぱいまで拡がった。
リン姉はアイテムボックスから木刀を取り出し、軽く振るう。
さて、リン姉の準備も出来た様だし、久々に全力で行きますか。
「うおぉぉぉぉぉ!!」
「はあぁぁぁぁぁ!!」
俺の全力の拳とリン姉の木刀がぶつかる。
木刀と俺の拳はお互いを弾いた。直ぐ様弾かれた反対の手でフックを放つが、木刀で流し、胴に打ち込んでくる木刀を膝蹴りで弾き、その脚を伸ばし連続で蹴り込むが、リン姉は少し後ろに下がり、避ける。
蹴りを放っている脚に木刀を振り下ろしてきたので、そのままバク転をし、振り上げた脚で木刀を蹴る。
回転の勢いで蹴れたので、リン姉の木刀を大きく弾く事が出来た。
体勢を整え懐に飛びこんだ。
「おらぁぁぁぁ!」
全力で左右の連打を放つが、尽く木刀で受け流される。
俺の連打の途中にも、リン姉の斬撃がくる。
ギリギリで避けるが、もう一度くる斬撃を拳を捻りながら放ち木刀の側面を流し斬撃をずらす。
目まぐるしく攻守は入れ替わる。
拳で弾き弾かれ。脚で弾き弾かれ。ギリギリ決定打になっていないだけで。何度も危ない一撃が来る。
左右のコンビネーションに蹴りを混ぜ、無理な体勢からもランダムに連打するがこれも受け流される。
ヤバいここまで技術上がってんの?
木刀一本に攻めきれねぇ。
全力の拳と木刀で弾き合い、バックステップで少し距離を取る。
「・・・ふう、流石ジン君。今使える最大の負荷魔法でもこんなに動けるなんて」
「・・・はぁ、リン姉こそ、魔法なしで、木刀も一本しか使ってなくてこれとか末恐ろしいわ」
「じゃあ今日はこれで最後にしよっか?」
「そうだな」
リン姉は半身になり、木刀を腰に当て居合いの形になる。いつもの綺麗なお顔から笑みは消え、鋭くこちらを射抜くような目付きになる。目付きだけでここまで別人みたいになれるのも凄いな。クールな感じで綺麗には綺麗だけど、やっぱりいつものほんわかしたリン姉がいいな。
ほんわかリン姉フィギュアとか出ないかな?色んなポーズ出来るやつ。
・・・リン姉の全力の居合い抜き。・・・確か『一閃』だったか?
叔父さんの道場で、日本刀使って鉄がバッサリだったよな・・・。
物理法則どうなってんだ?って思った。
一回こっそりやってみたが、普通に刀が折れただけやったわ。
その後、めちゃくちゃ怒られたのを覚えてるし。『素人が刀持つんじゃねぇ!』って、怒られたのも『そっちかよ』ってツッコミ入れたのも覚えてる。
・・・俺もなんか必殺技っぽいの作ろう。・・・って言ってる場合じゃない。
あの構えになったリン姉から動くことはないが、こちらが動いたら、それより早く動き、当てる所謂『後の先』と呼ばれる技術。
簡単に言えば相手の速度、質量分の威力を足した、カウンター攻撃って感じだな。
・・・前の世界じゃあ一回も止めれなかったからな。
顔の近くに構え直し、軽く前傾姿勢になり少しでも当たる面積を狭める。
リン姉が瞬きした瞬間、全力で踏み込み距離を詰める。
一瞬リン姉は驚いたようだが、すぐに木刀を鞘代わりの指を滑らせながら放つ高速の一振りは一瞬で俺の胴に迫る。
避けられないと判断し、右腕に力を込め一撃をガードする。
木刀がめり込み、右腕の骨が砕けた。
「ぐぅ」
骨が砕ける激痛を我慢しながら、左脚でハイキックを繰り出すが、避けられ、返す木刀を首に付けられて、降参した。
右腕も刀だったらスパンと斬られてんだろうな。
「『エクスヒール』」
おお、砕けた右腕は痛みもなくなり一瞬で治った。
「リン姉ありがとう」
「こっちこそ、ギリギリで手加減出来なくてごめんなさい」
・・・まだこの姉には届かないか・・・。
・・・先は長いなぁ。
「リン姉昨日のクリーンだっけ?あれかけてくれる?」
「いいよ『『クリーン』』」
「ありがとうリン姉、じゃあ朝ご飯食べに行こうか」
「うん」
お互い汗や泥で汚れた服と体を綺麗にして、リン姉と食堂に向かい朝食を食べた。朝はチキンステーキとサラダとパンで、ハーブが効いてて、これも美味しく平らげて部屋に戻った。
「そういえばこの『減衰』と『負荷』だっけいつまで持つの?」
「一日くらいかな?お姉ちゃんかジン君が"リミッター解除"って言えば解除されるよ」
「お、本当だ、解除された。めちゃくちゃ体が軽い。今日は魔の森じゃなくて、マリーちゃんとかと近くの森に行くからまたかけてもらえる?」
「いいよ『減衰』、『負荷』・・・"マリーちゃんとか"?」
「おお、まだ慣れないね。そうそうリン姉が来る前にマリーちゃんとカーナちゃんって子と話してさ、まだ討伐者登録してないらしくて、それに自信もないらしくて、近くの森で、自信を付けさせてあげようと思って」
「なるほどね、じゃあお姉ちゃんは武器と防具作ってるから、怪我させないようにね」
「もちろん。明日は一緒に依頼受けようね。それじゃあ行ってくるね」
「行ってらっしゃい気を付けてね」
「はーい」
「クロ、リン姉をよろしくな」
「わうっ」
よしよし、お土産にいっぱい狩ってくるからな。
一通りクロを撫でた後、一階に下りた。
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