表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/23

(7)

(7)

 間違いなく、ここが教会堂の告解室でなければ、ティルは大声でトーマを怒鳴りつけていたであろう。ティルは、単にトーマのことを心配してくれたのであろう…、トーマもまた、素直に頷いた。


 溜息をついて、ティルは、ゆっくりとトーマの黒い瞳を覗き込んだ。

 呪文と唱える。

 ティルは、自分の脳裏に移りこんでくるトーマの情報を、整え、文字化していく。

 そして、…絶句した。


 姓 (ナカガミ)

 名 トーマ

 職業 【探索者】、【猟兵】

 レベル 100

 加護 支援(最高位)、祝福

 踏破 【イゼルの大迷宮】

 備考 【落人】


「トーマ、レベル100になってる…」

「!!! まさかそこまで…」

「しかも、【イゼルの大迷宮】を踏破したことにもなっているわ。」

「え、俺は【迷宮主】に会った事なんて、一度もないけれど…」

「【大浄化の祝祭】の時、身体強化の術式を加えたパーティが、【迷宮主】を倒した為かしら…」

「ああ…、あのときは…」


 額に手を当てるトーマ。


「地下7階に降りた400人全員に、常時発動型の支援を講じてた…」


 ティルは唖然とした。

 以前に説明したとおり、常時発動型の支援は、通常100の能力を103に引き上げるような技能である。一つの戦闘に際して、【探索者】の能力分が経験に反映されるのであれば、支援者は引き上げ分の3にあたる部分だけ、その戦闘に貢献し、経験を得るという形になるのであろう。

 実際には、そんなに単純な仕組みではないが、たとえ話としては分かりやすい。

 さて、その引き上げ分の3を、約400人の【探索者】に講じた場合、その支援者は、活性化した【大迷宮】の地下7階・8階の魔獣を殲滅する戦闘に、どれだけの影響を与えたことになるのだろうか。


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 2人とも、事の重大性と、ある種の馬鹿らしさ加減のため、黙り込んでしまう。


「ま、まあ、トーマ。誰かの迷惑になるわけでもないし。」

「そ、そうだよね…。」

「…」

「…」

「でもね、トーマ。やっぱり、この力は隠しておいた方がいいと思う。」

「やっぱり、19歳でレベル100なんて異常だよね…」

「それはそれで、そうかも知れないけれど…。400人に身体強化を付与できるって…まるで、【軍】の規模だよ。」

「…!」

「そう、同時に数百名の人間を身体強化できるなんて技能、【軍】が聞いたら、目の色を変えると思う。多分、規模の大小はあるけれど、【支援の加護】について、うちのエイベル司教もそのことに気が付いていると思うの…」

「エイベルさんが…」

「嘘をつくのはいけないことかも知れないけれど、『400人に』身体強化を付したことは黙っていていいと思う。それに、レベルの鑑定もしていない、って言ってもいいと思うの。」

「そうか。鑑定自体は、ほんの2か月前、探索者組合に登録する前に【ファルベーレル】で済ませているし、ずっとこの組合員証の登録レベルでごまかせばいいのか…。」

「でも、タリウスさん達の前での立ち振る舞いとかには気を付けないと。動きとかで、上級レベルに達したことがばれたら、「鑑定してもらえばどうか」って絶対いわれると思うよ。」


(ずっと、自分に身体強化術式を講じていて、トーマの魔力は大丈夫なのかと思っていたけれど…。)


 最上位のレベルに達しているのであれば、専門の術者ではないトーマであっても、その保有魔力は常人と比べものにならない量となる。本来、筋力であるとか、精神力等の要素の成長に伴い、レベルは上昇していくのだけれど、トーマの場合、先に枠が拡張し、それに身体や精神が追いかけているような状況なのであろう。


(トーマの【支援の加護】がもっとも活用できる場…それは、【大浄化の祝祭】ではなく、むしろ【戦争】…)


 そして、ティルはこのことを決して口外しないことを、神とトーマに誓った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ