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◇◆ 十三 ◆◇

娘の名前は陽菜とつけた。太陽の光を浴びて真っ直ぐ育つ植物のように、ゆっくりでも着実に育って欲しいという願いを込めてだ。

「う、あ、あ」

明子に抱っこされた陽菜は、私の方を見て言語としてはまだ成立していない音を発した。

「お父さん抱っこして、だってさ」

明子が笑顔で陽菜を私の方へ差し出してくる。

「え、お前何言ってるか分かるの?」

「ええ、もちろん」

「凄いな…」

「ってウソウソ。何となくだよ」

明子はそう言うと、舌を軽く出した。

私は陽菜を受け取ると、高い高いをした。思ったよりも体重がずっしりとしており、これが命の重さなんだと思った。

妊娠が分かってから、明子はギリギリまで会社で一生懸命働いた。私はそれを最大限支援してきた。そして時期が来て、明子は産休・育休を取ることにした。出産は特に問題なく終わり、元気な娘が生まれてきたのだった。

私は愛娘の記録を残そうと思い、奮発して一眼レフのカメラを購入した。毎日何枚も撮影し、その度に幸せを感じることができた。さらには携帯電話の待ち受け画面も陽菜の画像にし、私の生活は陽菜一色に染まっていった。

「しばらくは目が離せないし、色々と苦労をかけると思うよ。ありがとう」

「いいのよ、全然。あなたはあなたで一生懸命働いてくれてるし」

「いや、もしかしたらお前の方が辛いかもしれない。孤独だろ?」

「大丈夫よ。すぐにママ友もできるだろうから」

「そっか…何かあったらすぐに言ってくれな?」

「ええ」

こうやってまた人生が動いていくのだと思った。

陽菜の誕生が、私がこれから生きていく道しるべとなることは間違いない。陽菜のために汗を流して働き、歳を重ね、そのまま定年までいくのだ。人生の目標が定まった気がして、私は少し落ち着いた気持ちになった。


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