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健二さんの命日当日
いつもどおりの朝
陽菜と父さんがうざい程明るい朝食に詩織さんが笑いながらも支度を急かす
多分あいつもいつも通りだったと思う
分かんねえけど
いつも以上になんかあいつを見れなかったから
花と水道水の匂い
そして今つけた線香の匂いが漂う
そんな中俺たち5人は手を合わせる
「さて
昼も過ぎたからご飯でも食べに行こうか」
「陽菜お腹へったー!
どこ行くの?」
「そうだな豪勢に美味しいものでも食べに行くか」
「やったー!!お姉ちゃんの誕生日だもんね!!豪華にいかなくっちゃ!!」
飛び跳ねながら父さんの後を追う陽菜
空気読めよバカ陽菜
つっても小学生には分かんねえよなこのなんとも言えない現実には
「あっあの!」
一番後ろから声が飛んできた
振り向くと
「どうしたの結音?」
とても優しい声で詩織さんは訪ねた
「私…今から友達と…約束があって…」
学校のあいつのように視線を伏せながら小声でそう告げる
「…そうか」
「気をつけて行って来るのよ
あまり遅くならないようにね」
「えー誕生日なのに?」
「ご…ごめんね
それじゃあ…」
目も合わせず逃げ出すようにその場をあとにした
「今日のためにお母さんとプレゼント買って来たのにな~」
「帰って来てから渡せばいいじゃないか
さあお昼ごはん食べに行こう
陽菜は何が食べたいんだ?」
「なんか変だった…」
何を食べるか楽しそうに2人をしり目に俺はそんなことをつぶやいていた
その声が思ったより大きかったようで少し前を歩く詩織さんの耳に届いてしまった
「あら気づいた?潤くん
なかなかの観察力ね」
「えっいや別に…
いつもの感じじゃないと言うかいつもの感じと言うか」
「そうねまだ結音は乗り越えられていないのよ
ほらこの間話したじゃない?
結音のプレゼントを取りに行った時にに事故にあったって
だからね自分の誕生日を祝われるのが苦手なの
トラウマなんでしょうね
誕生日だけは誰とも関わろうとしないの
小さい頃は誕生日に部屋に閉じこもったりして
中学の頃もそうだったんだけど
友達が祝に来たりしたから
その次の年からは一人出かけて日付が変わるまで帰ってこないの
自分のせいだと思ってしまっているんでしょうね」
はあ?
なんだよそれ
事故なんて仕方がねえだろ
誰にも分かんねえだろ
てかつっこんできた車が悪いだけだろ
お前が何したってんだよ
プレゼント買ってくれって頼んだか?
サプライズで取りに行ってくれって頼んだか?
なんなんだよ
どうせ全部分かってんだろ
分かってるのにそんなことやってるのがムカつくんだよ
だからお前のことが俺は大嫌いなんだよ
「…俺もちょっと用事」
「えー!?お兄ちゃんも!?」
「…ありがとう潤くん」
「別に…」
嬉しそうに詩織さんに気恥ずかしさを感じながらも
俺は消えないイライラを胸に足早で反対を向いて歩きだした




