プロローグ
今から一万年以上前のこと。人類は無知で野蛮なだけの存在だった。
木の実を集めて生き長らえ、最期は病に倒れるか魔物に喰われた。
神は、人類がこの世界において唯一自律的な文明を築く可能性があることに気付いていたため、それを見かねて地上に天使を派遣し、知恵と道徳を授けることにした。
とはいえ、長い時間を要するのは間違いなく、天使による統治体制を敷いた。
世界の頂点に皇帝を置き、大陸ごとに国王を配置した。
各王国内を公侯伯子男の各貴族が治めた。
これらの地位に天使が就き、人類を統治し、教育する時代が始まった。
神聖帝国の黎明だ。
当初は神の思惑通り、人々は善悪を学び、技術を知り、法を作った。
病に打ち勝つ術を研究し、魔物を狩る方法を編み出した。
人類は無知と野蛮から脱却し、地上を統べる力を得た。
だが、たかだか数十年しか生きられない人間と違い、天使による統治が五千年を超えたころ、人類を導くはずの天使たちは地上の欲にまみれ、モラルが歪んでしまっていた。
本来天界に帰るべき天使は地上に居座り、人類を虫けらのように殺すことを悦び、金銀財宝に目を眩ませ、穢れを知らぬ女性を穢した。
人類の発展の影に天使の不正が蔓延していた。
それを知った神は、怒りを爆発させた。
地上は《神々の憤怒》と呼ばれる天変地異を迎えた。
大地震・噴火・大津波等により、都市が破壊され、九割以上の命が失われた。
それとともに、神は地上に派遣した天使を魔族に堕とした。
魔族は己の居城周辺に居座ったため、天災を生き残った人類は必然的に僻地で魔族に見つからぬよう姿を隠し続けた。人類の文明は完全消滅し、すべての歴史が失われた。
神は魔族を取り除くのではなく、人類に魔族討伐の試練を与えた。
人類が自らの手でこの世界を統治するに足る存在かを問うたのだ。
とはいえ、魔族は元を辿れば天使。人類の力では足下にも及ばない。
そこで、神は人類に「システム」を与えた。
システムは自身を数値化するとともに、成長により能力を飛躍的に向上する仕組みだ。
最初のシステムが導入されたのは、神聖歴11,970年代。「オリジン」と呼ぶ。
このころには人類は都市を形成するまでに復興し、魔族との衝突が始まる。
人々は魔族がかつての天使とは知らず、恐怖の対象であり、討伐すべき存在と認識していた。また、実際に衝突が起こる中で、システムの不具合も観察された。
神が与えたシステムも完璧ではなく、バランスの調整が必要だった。
神聖歴11,980年代中盤にオリジンが進化して第一世代が導入された。
神聖歴12,026年現在、システムは第四世代まで発展している。
これまで討伐された魔王は三体。
そして、今また魔王に挑まんとする者が現れた。




