第百二十六話
僕達が声のする方を向くと、神輿のようなものに乗った王様とステッキを持った紫色の猫が兵士を連れて立っていた。
「おっ、お父様…。それに…団長…」
「やはり、あの船を…。王よ…。私の予想通り…この者が今回の首謀者です」
「うーむ…」
「なっ!?」
こっ、こいつ…。ぼっ、僕を疑っているのか!?
紫色のブサイクなデブ猫の団長は、僕を見るなりとんでもない事を言いだした。僕は少し動揺したが、団長になんとか反論しようとすると、ルナが勢いよくに前に飛びでた。
「口を慎みなさい! この国を救ってくれた恩人にそのような言葉…。到底許されるものではやありません。撤回しなさい!」
「…救った? …尻尾は逃げてしまったではないですか?」
「そっ、それは仕方のないことです…。アル様は充分やってくれました…。それに比べて……一体、貴方達はなにをしていたのですか!?」
「ですから、国の危機を救おうとしているのですよ。…おわかりですかな?」
「どういう…意味ですか?」
団長はクルッとなったヒゲを少し触りながら笑った。高価そうな宝石のついたステッキを回しながら歩いている。
「つまりですね…。彼はあの船を手に入れる口実が欲しかったのですよ…。考えてもみてください。こんなにもいいタイミングで尻尾が逃げますかな?」
「…別の何者かが封印を解いたのです」
「何者かが…ですか…。ふっふっふっ…」
「…なにがおかしいのですか?」
「いや、そもそも偶然にしては出来過ぎている…。これは初めから仕組まれていたのです…。その何者かは…彼の仲間…。むしろ…彼が逃したのでは?」
団長は僕の方に近づきピタッと止まると、ステッキの先を僕の顔に向けた。ステッキの先から嫌な魔力を感じる。逃げれないことはなさそうだが、下手に逃げると彼らを敵に回すことになりそうだ。
「なっ、なんて、無礼な!?」
「…それとも、証拠でもあるのですかな? 彼が無実であることを示す証拠が!?」
「それは…。ぐっ…!」
「まぁ、尋問すればわかることです…。兵隊共やつをとらえなさっ…。ぐはっ…」
目にも止まらぬルナの強烈な後ろ回し蹴りが、団長の顔にクリーンヒットしてバタッと倒れた。あまりのことに周りの兵士は目を丸くしてピタッと固まっていた。彼らも流石にルナ相手だと攻撃はしてこないようだが、仮にも一国のお姫様であるルナの立場を心配した。
「…ルナ…さっ、流石にまずくないか!?」
「いえ…この者を放って置く方がよっぽど問題です。…お父様! いえ、国王陛下!」
「…なんだにゃ?」
「私は…もうあの時のような間違えをもう二度としたくありません! 次期国王として私は彼にあの船を与えます。…よろしいですね?」
「うーむ……。わかった…。好きにするがよい…。ただし、問題が起きればただではすまされないぞ。…わかっておるな?」
「…わかっています」
「おっ、おい、ルナ! ただではすまないってどういう意味なんだ!?」
「大丈夫です…。気にしないで下さい…。アル様に頼ることしかできない愚かな私達ですが…許して下さい…。ですが、この国を…」
「許してくださいなんていうなよ…。…きっと、この呪いを終わらせてやる…! …いや、絶対にだ!」
「…はい! 信じています」
「まかせろ!」
「…そうと決まれば急ぎましょう。食料などの準備はしておきます。アル様は皆さんを城の中に集めておいて下さい。では、私はこれで…」
ルナは駆け足でどこかへと走っていき、王様はそれを見届けると兵士達を連れて城の方に戻っていった。ちなみに団長はというと兵士達にズルズルと巨体を引きづられながら運ばれている。兵士達は大変そうだ。
「さて…急いでみんなを探すか…。シャル、いくぞ」
「うん…。あっ! …そういえば、この剣どうするの?」
シャルは地面に突き刺さった折れた剣を眺めていた。国宝なのかと思っていたが、ずさんに置かれている。そういえば誰も持って帰ってないようだった。
「うーん…。どうするかな…」
…ノスクに返すか? …いや、今は見せないほうがいい気がするな…。寝込みそうだ…。うーん…。
「…ドワーフなら直せないかな? こういうの得意だと思うよ」
「そうか…。ドワーフといえばそうだよな! 今日のシャルはすごいな。お手柄だぞ!」
「えへへへ…」
シャルは頭をかきながら、はにかんだ笑顔を浮かべた。僕は地面に刺さった剣を抜き、柄と一緒にバッグに入れた。
「よっと…。それじゃあ、預かっておこう。さてと、時間がもったいないし二手に別れよう」
「うん」
「俺はアリスを探してくる。シャルはシオンさんを頼むよ。見つけたら城の中に集合だ」
「わかったよ。…アル?」
「…ん?」
「もう喧嘩しちゃダメだよ?」
「…わっ、わかってるよ。じゃあ作戦開始だ」
こうして僕はアリスが消えた城下町の方へ足を進めた。僕は周りは猫だらけだったので、探せばすぐに見つかるかと思っていたがアリスの姿はどこにもなかった。




