第百二十五話
シオンさんは肩を落とし、重い空気を醸し出しながらどこかへ消えてしまった。さて、これからどうしようか。そんなことを思いながら、シャルの方をふと見ると、太陽の光が反射して胸元がキラリと輝いていた。シャルは妙な力を感じさせる黄色い円錐形のペンダントをつけていた。
「…ん? …シャル、そんなペンダントつけてた?」
「違うよ。ノームがくれたの…。よくわからないんだけど、お守りみたいなものかな?」
「そっかー…。…ん? そういえば、ノームはきてないのか?」
「うーん…。よくわかんないけど、あの国からあんまりでれないんだって…」
「ふーん…。そっか…。まあ、仕方ないか…。…なあ、シャル? ところでなんかいいアイデアないか?」
「うーん…。アルがみんなを連れて空を飛んでいくんじゃダメ?」
「うーん…。流石に海の上で寝る度胸はないな…」
無人島でもあればいいが、都合よくはみつけれないだろう。僕がそんな事を考えていると、シャルは空をみながら話しだした。
「そっかー…。船が飛べばいいのにね…。うーん…。なにかいい方法ないかな」
「…ん? ちょっと待って…。…今、なんていった?」
「船が飛べばいいのにって…。…そんなの無理だよ」
「…それだ、それだよ! 飛空艇だ!」
RPGをやった人間なら誰もが一度は乗ってみたいと思う乗り物…。そう…。飛空艇だ。そうだ…。飛空艇を作ればいいのか!
「ごめん…。冗談でいったんだけど…」
「いや、ナイスアイデアだ…。今の俺なら…できるかもしれない…」
「ふーん…。…ええっ!?」
「…ステータス! …ドゥラスロールで飛空艇を作ることはできるのか?」
僕が青色の画面に向かって話していると、シャルは不思議そうな顔をしてキョロキョロと周りを見ていた。茶色い髪の毛が横にふわふわと揺れている。
「…アル、誰と話してるの?」
「…ん? 魔法みたいなもんだよ。…どうなんだ? …ステータス?」
「…不可能です。Ⅲの影はあらゆる物質をクリエイトする事…。あくまで素材を作ることです。複雑な構造体はイメージ力に大きく左右されます」
「結構いいアイデアだと思ったのにな…。他にいいアイデアは…。…ん? …なにか喋ってる?」
僕が次のアイデアを考えようとしていると、ステータスが話し続けていることに気がついた。僕はステータス画面にもう一度耳を傾けた。
「…ただし、既存の船を利用し、魔力回路を作成することで、飛空艇に改造する事はできます」
「…んっ? えっと……それって…つまり…できるってこと?」
「…はい」
「…シャル、やったぞ! あとは船だな…。そうだ! シャルが乗ってきた船って、もらう事はできないのか?」
「うーん…。難しいと思うよ…。あの船は商船で、たまたまこの国にくるから乗せてもらっただけなんだよ」
「そっか…。…ちなみに船って買ったらどのくらいするんだ?」
「うーん…。どんな船?」
「うーん…。部屋が十室くらいはほしいかな…。欲を言えば…頑丈で武器もついた格好いいやつ…。あと、できれば…」
「…すっ、数億ギルくらいはすると思うよ」
「だよな…。…あとは船だけなのに……」
僕が理想に近い船の条件をどんどん言っていくと、シャルは困った顔をしていた。これからどうしたものかと考えていると、後ろの方から突然声がした。振り返るとそこにはルナがポツンと立っていた。
「…どうしたんですか?」
「…ん? ルナか…。…ノスクは大丈夫そう?」
「ええ…。とりあえずは…。部屋でアバンがみています。…ところで、船というのは?」
「ルナ…。…尻尾が動いているのわかる?」
「ええ…。…それがどうしたんですか?」
「よく見てほしい…。この尻尾、同じ方向をずっとさしてる…。これは予想なんだけど…。この尻尾の先にこいつを操ってる本体…黒い魔物がいる…。そいつを完全に倒さなければノスクの言った通り、いつかこの国にやってくるかもしれない…」
僕がそんな恐ろしい事をいうと、ルナは目を見開いて声を震わせていた。白い尻尾もプルプルと震えている。
「そっ、そんな…」
「それで、本体を倒しにいく為に頑丈な船がいるんだ…。でも…金もないし、やっぱりイカダでも作るしかないか…」
「……わかりました。私が手配しましょう。…ついてきてください」
「…いっ、いいのか!?」
「ええ…。アル様はこの国を救ってくれた恩人です…。なにより、我が国を助ける為に船がいるのでしょう? ………本来なら、私達が行くべきなのに…。本当にすみません……」
「気にするなって…。どっちにしろ黒い魔物なら倒したかったんだ。むしろ、船が貰えるなんて感謝したいぐらいさ…」
「アル様は優しいのですね…。船は用意しようと思います。…ですが、まだお礼を言うのは早いかもしれません。まずは厄介な団長に見つかる前に…」
「……誰か厄介ですかにゃ?」




