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『隣町』③

『隣町』③

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「いや、別に嘘なんかじゃないよ」


「……」


 先輩から信じられない物を見たかのような目を向けられる。

 失礼な奴め。

 まぁ、でも気持ちは分からなくはないが。


 今さっき自分が負けた相手だもんな。

 しかも、奇襲でガン有利な状況作った上で。

 そりゃそう思うか。


 部活で後輩に負けて経験者なら仕方ないと思っていたら、実は中学で部活入ってから始めた初心者でしたとかだとね。

 なんと言うか、心にくる。

 僕はそれを妹にしょっちゅうやられた。


「アキさん、本当に今日魔法少女になったばっかりなんですか?」


「そんな不思議?」


「いや、アキさん凄い貫禄があるって言うか」


「貫禄って……」


 疑いたくなる気持ちもわかるけど、こんな事で嘘なんて付かないって。

 たいした意味ないし。

 まぁ、さっき嘘ついたばっかの僕が言えるセリフじゃ無いんだが。


「……もしかして、さっきのが初めての戦闘だったりします?」


「いや、流石にそれはないよ。一応、数時間前にヴィランと1回戦ってる」


「2回目……」


 もしあのヴィランとの戦闘経験無かったら、初撃で死んでただろうな。

 命懸けの戦い、命を奪った実感。

 昨日までただの男子中学生でしか無かった僕があのレーザーに気付けたのはそこら辺が大きかっただろうし。


 そもそも、ヴィランとの戦闘前の僕なんて……


 魔法少女への変身方法も知らないし、

 マジック・ウェポンの出し方も知らないし、

 必殺技の使い方も知らないし、


 うん、絶対無理だな。

 仮にポンコツ先輩がミスって初撃外したとしても、なされるがままだ。

 道路と同じく風穴を開けられていた事だろう。


 と言うか、考えてみればマスコットのやつこの状態の僕をヴィランの前に放り出してくれちゃったんだよね。

 変身方法だけは本当に直前に教えてくれたけど、それ以外のマジック・ウェポンの出し方も必殺技の使い方も戦闘中にマスコットから聞き出したレベル。

 戦闘前は本当に何も教えてくれていなかった。


 殺すつもり、は今考えても一応は無かったんだろうけど……


 それなら僕から何聞かれても答えないだろうし。

 というか、魔法少女への変身の方法を教えなきゃそれで終わりなのだ。

 実際、僕は契約終わっただけの状態のことを変身と勘違いしてたし。


 もっと言うなら、このポンコツ先輩を家の前とかで待機させとけば簡単だった。

 契約したばかりの僕はまともに魔法少女の力を使えないし、妹は妹で魔法少女としての力を失っているし。

 だから、きっとその時は殺す気は無かったんだ。


 あの後の数時間、そこで気が変わったんだろう。

 多分、マスコット本人の気分じゃないな。

 事情が変わったって言うのが正しいと思う。


 全部ただの妄想だけど。


「アキさんがヴィランと戦ったのって、この街ですか?」


「うん、そうだね」


「……これ、ですか?」


 スマホを取り出し、とあるネット記事を見せてきた。


『魔法少女初陣、崩壊した街並みに鮮血の花を咲かせる』


 僕の記事だ。


 崩壊した街並みに鮮血の花を咲かせる、ね。

 確かにそんな光景だったか。

 ヴィランだからと一応の踏ん切りを付けたとはいえ、正直あまり思い出したくはない。


 記事の情報をざっと流し見するに、あまり僕に対して好意的ではなさそうな内容が書かれている。

 例えるならスポーツで言うヒール側に対するそれと言うべきか。

 まぁ、僕が殺しをしたからなんだろうけど。


 確かにニュースとしてはあまり聞いたことはないかったが。

 そうか、魔法少女が殺しをすると言うのはたとえ相手がヴィランだったとしても結構忌避感を抱かれるものなのだな。

 マスコットも似たようなこと言ってた記憶がある。


 僕としては最善をとったつもりなので理解はしてほしかったが、今となってはもうどうでもいい話か。


「なんか、殺したって書いてあるんですけど……」


「敵なんだから、殺すのは当然でしょ?」


「……やっぱり脅しじゃ無かったんだ」


 メイスを向けた時の事かな?

 十分ビビってはいたけど、そうか。


「なに、疑ってたの? 分からせてあげよっか」


「い、いえ。十分理解しました」


 脅し足りなかったかな?

 なんちゃって。


「そもそも、人殺しに手を出した先輩に文句言われたくない」


「それはもう、うちが間違ってました。ヴィランは殺すべきですよね」


 あはは……、みたいな力無い愛想笑い。

 いや、先輩が引く資格は無いからな。


「僕からしたら先輩の方が不思議だけどね」


「え?」


「いや、そんなんでよく魔法少女になって1年近くも生きて来れたなって」


「うぅ、言わないでください」


 これはガチで疑問だ。


 なんたって僕に負けたレベルだし。

 僕は妹と違って、追い抜く側ではなく追い抜かれる側なのだ。

 それに負けるって……、ねぇ?


「ま、本人とは違って魔法少女としての能力は当たりみたいだったけど」


「うちの生命線です!」


「その割に、先輩ガン有利な状況から僕に負けたけどね」


「……精進します」


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