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『隣町』②

『隣町』②

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「あ、あの……」


「ん?」


 少し時間を置いて、また先輩が話しかけてきた。

 僕にビクビクしながら。


 えぇ……。

 そこまでして門限を守りたいのか。

 意外と強情である。


「なに、まだ何か文句が?」


「い、いえ! そうじゃなくって」


「なら、どうしたの?」


「その、うちはアナタの事なんて呼べば良いのかなって」


 ……


 何を聞いてくるかと思えば、僕の呼び方って。

 コイツ本当に魔法少女か?

 まるで、それら辺にいる普通の女子である。


 いや、魔法少女は普通の女子がなるものだけど。

 それにしたって、ねぇ。

 とてもヴィラン相手に命のやり取りをしてきた様には見えない。


 それどころか、この先輩の場合何かあると躊躇なく人の命を奪いに行くくせに……


 あれ、そう言えばヴィランって普通は殺さないんだっけ?

 もしかして、魔法少女ってヴィランに殺されそうになる事はあっても、殺そうとしたことって意外と少ない?

 一方的な物で、命のやり取りって程の物じゃないのかも。


 まぁ、結局コイツは例外なのだけど。

 ちゃんと僕のこと殺そうとしてきた。

 まともそうなまま人の命を狙えるって、よっぽど狂ってる気がする。


「先輩は僕のことなんて呼べばいいと思う?」


「ご、ご主人様とか?」


「奴隷っぽくていいね」


「うぅ……」


 ご主人様って。

 この先輩、意外とノリノリである。

 奴隷願望でもあったのだろうか?


 まぁ、先輩はSかMかで言えばMっぽいけど。

 別にそういうプレイとかでは無いんだが。

 そもそも僕にSの気はないので、別にご主人様なんて呼ばれても嬉しくない。


「普通に名前でいいよ」


「えっと、」


「ん? あ、そう言えば自己紹介してなかったね。アキだ」


「アキさん、で良いんですか?」


「うん」


 もうすぐ秋だからアキ。

 我ながら単純な偽名である。


「えっと、うちはトダユリカっていいます」


「あ、そう」


 ユリカ、ね。

 頭お花畑な先輩にピッタリな名前だ。


 ……


 流石にそれは親に失礼か。


「……あの、ずっと気になってたんですが、なんでうちの事を先輩って呼ぶんですか? もしかして同じ学校だったりします?」


「いや、知らない」


「え、えぇ」


 一応その可能性はある。

 門限がどうたらって言ってたぐらいだし、着信確認して今から間に合うって事はこの近辺に住んでいるのだろう。

 あんまり遅い時間じゃ門限の意味自体ないし、今から1時間以内ぐらいかな。


 先輩の年齢は見た感じ僕と同じぐらい。

 ポンコツ補正加味して多少年上だったとしても、その年齢じゃ使えるお金も限られる。

 公共の交通機関を使うにしても、大した距離にならない。


 もし同じ学校だったとして、どのみち僕のことは知らないだろうけど。

 僕は目立つ存在じゃない。

 妹の事なら知ってる可能性もあるが……


 でも、それじゃ偽名使った意味ないし。


 他に魔法少女を襲ったことない、って事は妹の件には関係ないはず。

 話すだけ無駄だ。

 有能な人間相手なら聞く価値もあるけど、先輩ポンコツだし。


 情報は無駄に広めない方がいい。

 妹の話は知ってるというだけで容疑者候補だ。

 先輩、口も軽そうだし。


 妹は僕に魔法少女を押し付けた。

 それは理解している。

 そこまで必死に探してやる義理は全く持って無い。


 ただ、一度は憧れた人だからね。

 それに、妹はどこまで行っても僕の妹なのだ。

 なるべく助けてやりたいのが本音かな。


「魔法少女として、先輩の方が僕より長そうだからそう呼んでただけだよ」


「そう、ですかね? うち1年もやって無いですし、アキさんの方が先輩なんじゃ」


「僕、今日魔法少女になったばっかりだから」


「えっ!? ……嘘、ですよね?」


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