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サディスティック愛国心  作者: 蠍戌
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全文

 保守派右翼の一部から、若き愛国の士、真なる大和撫子、将来の模範的夫婦、などと称揚されていた、佐渡(さど)()(くに)日埜(ひの)(まどか)の離別の真相は、互いにしか知り得ないものであった。

 もっとも、二人の仲が決裂していたことすら、円の自殺体の発見によって、初めて第三者が知ることになったわけである。

 美国が円の死の事情を知悉しているという疑いは、彼らに近しいものさえ抱くことだった。他ならぬ彼が彼女を殺害したのではないかという嫌疑さえもあった。もっとも後者は状況証拠から潔白であることが明白であった。彼女は同志たちの居合わせた場に単身姿を現し、程なくして自決に及びそれを遂行したのである。救命行為はさらに多くの同志が居合わせる中で行われたわけだ。

 それでも何らかの手段や理由により、彼女が美国に追い詰められたと見る者は少なからずあった。しかし美国は自分に向けられる軽重濃淡数多の疑いに対し、屹然と言い切るのだった。

「僕はこの国を愛するように、円を愛していた」

 それが疑念を晴らす最も強固な言い分であった。

 ただし、美国にも円が自ら死を欲し、それを決断、実行した心当たりはあったという。

 美国によれば、その前日、晴れて夫婦となった二人は、その夜に初めての契りを交わしたという。

 そのときの円の違和感を、美国はこう述懐した。

「円は僕のようにはこの国を、そして僕を愛することは、できなかったんだろう」

 後に、美国の無差別テロ行為が未然に防がれた折、その証拠とともに押収されたものの中に、美国と円の唯一の契りを捉えた映像があった。それは円を彼岸に追い遣るには十分な内容のものであった。


 佐渡美国。T都S区にて出生。25歳。私立K大学卒業。

 学齢期より主に学術面で神童と謳われており、右派系の私立K中学校および同高校在籍時に司法試験予備試験ならびに司法試験に合格。同大学入学と同時に年単位の休学を挟んで司法修習を経たため、弁護士登録した当時は現役大学生であった。

 中肉中背より頭ひとつ上乗せしたぐらいで、特別に体格が優れていたわけではないが、中学高校の必修科目であり、部活動としても参加していた武道においては、一般生徒の中では一、二を争うほどの実力を持ち合わせていた(もっとも、特待生には手も足も出なかった)。大学入学直後に同大学系列の某右翼組織の一員となっていたわけだが、これがあったからこそ先達による口添えを得られたともいわれている。

 文武両道でありながら眉目秀麗。なおかつ温厚篤実な人柄のため、好もしく慕われることは多々あったが、浮ついた噂のひとつもなければ当然その事実もなかった。しかし、幼少時より小動物の虐待や殺傷によって性的興奮を高めまた充足させていたことは、円に対する行為を収めた映像とともに、無数の映像群として発見されることで、明らかとなった。

 日埜円。T都S区にて出生。享年18歳。S区立O中学校卒業。ただし、同校への通学はほとんど皆無であった。

 物心ついた頃より扱いにくい子どもであったことは、彼女を知る誰もが抱く印象である。同区立O保育園在籍時から、気に入らないことがあれば癇癪を起こし、手を上げること度々であった。それは見境もなく相手も選ばず他児はもちろん大人に対しても向けられ、重いまたは鋭いあるいは硬いもしくはその全てを満たした得物を伴うことも屡々あった。

 同区立H小学校に入学していつからかは、その行動原理と判断基準は愛国に資するものであるかどうかということになり、幼若故に国家や民族を意識することのできない同窓生から距離を置かれるが必定であった。式典の際に国歌の合唱を怠る級友がいれば、伴奏の終えた途端に攻撃を加え、どれだけ泣き喚こうとも国旗に平伏し謝罪するまで赦免せず、教師たちから過剰である旨を指弾されても反抗し決して改めることはなかった。

 進学先のO中学校にはかなり早い段階で級友との諍いを生じて不登校に至る。これは左右双方における思わぬ論客を得たためであるが、仇敵と見做した相手との意見の相違のみならず、同胞と目した身内に思考の先鋭性を非難されたことから、一方的に論議を打ち切り、双方に対する暴力沙汰に発展したためである。

 しかしその名を広く世間に轟かせる出来事は、それから程なくした折、未だ一年生時のこと。首相官邸前において時の右翼政権の汚職疑惑への抗議活動を行っていた某左翼団体に対し、日の丸鉢巻学生服姿に模造刀一振りという出で立ちで単身挑みかかったのである。

 もっとも構成員の全てを抹殺するという当初の目的は果たせず、実質的に同団体の監視の任にあたっていた警察隊により直ちに捕縛されるわけだが、「罰せられるべきは国家に唾する非国民どもであり、自身は愛国心故に天誅を下したものであるから、このような仕打ちは不当である」旨を声高に主張。

 その一部始終は居合わせた報道各社のスクープ映像として、また一般人による加工処理のされていない動画として、たちまちのうちにインターネット上に出回った。さらにはそれまでの問題行為の数々が、真贋入り混じった内容とともに広まっていった。そして幼くも可憐な容姿も手伝い、女だてらに愛国心溢れる若人として持て囃されるようになった。

 この騒動を受け、円の弁護にいち早く名乗りを上げたのが、持ち前の頭脳と容姿と物腰により、在籍する右翼組織の中で早くも頭角を現していた、美国であった。

『同志 日埜円を救う会』と銘打って行われた緊急記者会見において、真新しい弁護士バッジを胸元に輝かせた眉目秀麗の青年が、児童福祉法や少年法を皮切りに、種々の法的根拠から円の庇護を行うとともに、破壊活動防止法をはじめとした法令を交えて、被害者である左翼団体の反社会性を論う様は、世人が少女に対して抱く罪科を拭い去るのに十分であった。

 なお、颯爽と登場した美国に対しても、注目は集まった。現役大学生でありながらすでに弁護士だという肩書きは驚嘆を持って迎えられ、その際に詳らかにされた半生、特に大学入学直後に不慮の事故で家族全員が急逝したという悲劇は(正確には行方不明の扱いであるが、生存は絶望的といって差し支えないものであり、美国もまた家族を死者として扱っていた)、それを乗り越えた勲章のように若者を輝かせた。

 美国は世論に対する対外的な活動をする一方で、拘束中の円に対しては幾度となく接見し信書を送った。それは制度上可能な回数や時間数の上限であり、その内容もまたおよそ考えられるものよりさらに高邁なものであった。

 しかしながら当初の円は志を同じゅうする美国に対してさえ、敵意を隠そうとしなかった。実際、円にとって既存の右翼連中の全ては、誅殺を図ろうとした左翼連中と大同小異であった。「かくも不敬な者どもを殲滅せんともせずに崇高なる自分の同志を名乗るな」という由であり、一言一句過たずにそう告げたこともある。それでも拘禁施設を幾重にも取り巻いた街宣車から地響きのごたる喊声に交じった応援を連日のように浴び、それが眼前の男の旗振りによるものであることを知るや、いかに壁と塀に阻まれていても孤独を忘れつつあった。

 とはいえ円が美国に求めたのは、自由を取り戻した次の瞬間にその身を翻して命尽きるまで攻撃に励むための己の弁護と、美国を含めた全ての同志の死地への同行であり、それが叶わぬことを知るや再び専用の殻へと籠城して罵詈雑言に励むのだった。

 美国は血気に逸る円を宥め賺し、意に沿わないことによる悪口をも穏やかに受け入れ、円の言い分に賛意を示しつつも時期尚早である旨を、多くは論理的にときに感情を交えて、しかし一貫して静かに説き続けた。

 次第に円を覆う殻は厚みを減らし、さながら透明な皮膜のようになったところで、自らがそれよりも大きな傘の中にいることの実感を得られるようになった。やがて円は自由の身となった暁には、美国のいる右翼組織に加わることを誓い、その日その時を早めることを美国に求めるようになるのだった。

 その後も美国は組織の中心として表裏に奔走し、結果、重体者一名(後に死亡)、重傷者二名、軽傷者十余名の人的被害をもたらした円に、実質的な無罪放免を与えることに成功する。

 ついに釈放された円は、無数の街宣車、そして多くの同志からの万雷の拍手と万歳三唱により迎えられた。その人垣の真正面から真っすぐに手を差し伸べたのは誰あろう美国であった。円は美国の手を固く握り締めると、そのまま街宣車の一つに誘われていくのだった。

 ちなみに美国の活躍は今少し続く。それは円の賠償責任の所在についてである。これについてはその思想故に家族親族との関係が劣悪でありながら、監督義務者としての責務を果たさなかった廉を追及し、その全額を実親に負わせることを成就させたのである。

 この一連について美国は後に、「口八丁噓八百丁神八百万丁」と嘯いたが、それを耳にした者はほとんどいなかった。


 円にしてみれば、家族親族友人知人から納得のいく反応を得られなかった護国思想を受容・共感・称賛してもらえる組織での日々は、十分に満ち足りたものであった。

 先達からの薫陶や同胞たちとの論議により、これまで以上に思慮と見識を深めていくことができたし、美国ともども組織の広告塔として活動するという役目を得たことは、彼女の自尊心を大いに満たした。

 その一方で、幼いというのが当を得るほどうら若き少女には、数え切れないほどの誘惑が与えられ、克己心旺盛な少女はその全てを忌み嫌うほど憎んで退けた。

 円に粉をかけた男は組織の内外に数多いたわけである。そして一人残らず玉砕した。無傷で放免されたのは、懇切丁寧な態度で接したために同様の真摯な返礼による固辞を受けた者や、意思の伝達があまりにも不得手でそもそも好意を認識されなかった者などいずれも稀であり、ほとんどは軽重いずれかの外傷を負った。居丈高に交際を迫ったため、片方の頬に長く残る掌の痕を逆恨みした一名は、腕ずくで円をかどわかそうとしたところを美国に見咎められるや否や瞬時に首を絞め落とされて制止され、後を引き受けた同志たちの手によりいずこかへと連れていかれ、そのまま戻らなかった。

 円は自身の利用価値を正確に見抜いていた。もしも自分が同志の多くと同じように男であれば、もしも自分が同志の多くと同じようにこれほど若年でなければ、もしも自分が同志の多くと同じように醜貌であれば、このような扱いを受けることはなかっただろう。自分は所詮、年齢と性別と外形を組織に重用されているにすぎない。それは誰よりも強い愛国心の正当な評価を願う円には、堪え難き屈辱であった。

 美国はそれを否定しなかった。君の存在は君に似た若い世代を、君と同じ女性を、君への接近を狙う浅薄な男共を、この組織へと誘うためのものである。そしてそれは遠からずこの組織を強く厚く固くし、ひいては我が国を強靭にしていくのだと加えた。

 一方で美国は円に対する想いを吐露した。他の同志たちと同様に、君のような愛国心溢れる女性が伴侶であればいいのにと、思わないではないという旨である。もちろん年端のいかない少女に抱いてよい感情ではないけれど、などと己を窘めつつ、思慕の撤回はしなかった。

 このささやかな告白は大和撫子を大いにくすぐった。円としても、己の肉体はいずれ一人でも多くの優秀な日本男児の産殖に繋げる苗床としての役割を担うものであるという自覚を有し、それを崇高な目的であると信じて疑わないわけであったが、その播種を行う男の好悪や趣味嗜好を捨て切ることはできないという幼稚な一面は、未だ熟していない肉体とそれに包まれた蕾さながらな心のあちこちに根を張っていたのである。たとえそれが確たる功績や尊敬に値すべき思想を有する先達や同胞だとしても、そうでなければ唾棄したくなるほど直視に耐え難い面相風体の男たちを回避する気持ちがなかったとはいえない。

 その点において美国は、伝説的な先達にも見劣りしない思慮深さを持つばかりか、一見すると柔弱な印象を抱かせるほどの好いたらしい優男である。何より円にとっては恩人であるし、同じ職務を任じられ手取り足取り教えをいただく近しい朋輩でもある。これまでに言い寄ってきた者もそうでない者も含めて、どの男よりも好感を持ち好意を寄せられる。あるいはこれまでの円のほうにその気持ちが生じていないとも言い切れない。それでも巨大で重厚な扉の頑丈な閂となっているのは、少女の名を巷間に知らしめたその愛国心であった。

 円は美国に伝えた。自分は誰よりも、そしてまた誰のことよりもこの国を愛しており、それ故に誰かの愛に応えることはできない。それは円がこれまで受けた告白を謝絶した理由である。もっとも言葉でそれを聞いたのは、至誠を認められたごくわずかな者だけであった。

 美国は自分も同じだと答えた。それでもなお人を愛おしくも思うものなのだと。自分が愛するこの国は多くの人々によって成り立っている。考え方はそれぞれである。嘆かわしいが国を愛さない者もいる。そんな中に自分と同じようにこの国を愛している人がいることがとても嬉しい。そしてそういう人をただ一人の生涯の伴侶として得ることができれば、その喜びは至上に次ぐものであろうと。

 至上に次ぐ。この言葉を円は訝った。

 視線の方向に傾いた首の位置を直すように、美国が円の頬に手を添えた。

 頓狂に見開かれた円の目を見つめて美国は教えた。この国を愛することはそれに勝るのだと。だから。

「僕はこの国の次に君を愛している」

 程なくして美国と円の婚約が組織の同志たちに発表された。その知らせは瞬く間に他の右翼組織にも広まり、やがて遍く巷間にも知れ渡ることとなる。

 円への好意を有していた者たちは、年端のいかぬ少女を得たことへの羨望と、先を越されたという怒りに似た後悔を経て、その相手が美国であるならば致し方ないという諦観に落ち着いていった。

 そして同志たちの興味関心は、あの堅物をどのようにして篭絡したのかという美国の技倆に移った。

 円は一切口を割らず、美国も告白の微細を詳らかにしなかったものの、


 ()(クニ)

 (ツギ)(アイ)スト

 (キミ)()

 (キミ)(カンバセ)

 ()(マル)(ゴト)


 という歌を詠み、そばにいた大和撫子をそのときと同様に赤面させた。

 以後の二人の活躍はそれまでにも増して目覚ましいものであったが、具体的な戦績や成果については割愛する。公になっているものもあれば秘密裏に行われたものもあり、算出することが困難ということもある。

 ただ、かねてからそれぞれが恣にしていた、若き愛国の士、真なる大和撫子といった美名に加え、将来の模範的夫婦と綽名されるようになったのは、この頃からだ。

 その片割れが早々にこの世を去るなどとは、原因を作った美国ですら、知り得なかったわけである。


 映像として残されていた佐渡美国と日埜円のただ一度きりの接合は、両名が揃って寝室に現れるところから始まる。

 当日は円が結婚可能年齢となった日であり、二人が晴れて名実ともに夫婦となった日でもある。昼日向のうちに籍を入れるため役場を訪れた後、同志たちによる祝言を経て、夜が更けてから添うようにして新居に現れたのだ。

 もともとは美国の単身の住まいであった。大和撫子たる円は当然それまで貞節を貫き、美国もまたそれを求めることはなかった。しかし互いの想いは存分に伝わっていた。さながらここはオノゴロ島である。

 簡素なパイプベッドの傍らで二人は向かい合う。片方がもっと早くこの日を迎えたかったと伝えれば、片方もまた一日千秋の想いで今日までを過ごしていたと応じ、抱擁と口づけの応酬が始まる。そのささやかな交接は幾度か体勢を変えながら、いつ尽きるともなく続く。

 あるとき美国は円の背後に回り、その体に両腕を巻き付け、首筋に唇を軽くあてた。薄く微笑んでむずかる円を許さないように片腕で制止し、短く突き出した舌先で目的の個所を探りながら、もう片方の腕を持ち上げていく。

 やがて頸動脈に達した腕は、俄かに固く膨れ上がり、その内側の厚く濡らした一点を絞り上げた。学生時代の武道の心得は、この瞬間に結実したものであった。首を絞められるかたちになった円は俄かに顔を強張らせるも、程なくして失神した。

 美国は弛緩した円を腕の中からベッドに移し、手早く準備を整えたのち、姿を消す。残されたのは轡を噛まされ、全裸で仰向けに寝かされ、ベッドの上部に両手首と両足首を括られ、陰部を剥き出しにした大和撫子だった。

 やがて意識を取り戻した円は、途絶した記憶の想起もほどほどに、自由が利かず、あられもない姿を強いられ、一人残されている我が身を知り、戸惑いの声を上げようとして、それさえかなわないことに気が付いた。さらなる混乱が極むより早く現れた夫の姿に安堵したのは一瞬のことで、その次の瞬間にはさながら思考停止に陥った。

 美国は鍛え抜かれた一糸まとわぬ精悍な裸体に、天まで届かんばかりに屹立した陰茎を携えていた。その先端には赤い円形のちょうど中心が位置する具合に、我が国の国旗が被せられていたのだ。

「初めて君を目にしたときから、今日のこの日を待ち望んでいた」

 愛妻のそばに侍った夫はそう囁いた。見開いた目を白黒させて顔と陰部を見比べてくる円に、美国はこれまで誰にも明かしたことのない自身の性癖を披瀝した。曰く「日の丸を陰茎に巻き付けるのは快感」であり、「日の丸の赤い部分を白く染め上げるのは至高」であり、「日の丸のどまんなかを突き破ってする射精は最高に気持ちがいい」と。

 円の顔面が烈火のごとく赤く染まっていった。動かぬ全身を寝台ごと持ち上げる勢いで暴れさせ、轡の隙間から呻くように漏れるだけの声は、それでも内容が罵詈雑言であることがわかりそうな音の連なりだった。

 美国は意に介することなく悠然と旗を広げる。旗はひとときはためいてから円の下半身を覆い尽くし、その中心は無垢な陰唇を包み隠した。

 円が蒼白となったのは、己の穢れで日の丸を汚すことへの恐れからだろう。しかし生娘の生娘たる部位は主の如意になるものではなく、陰唇に触れた旗の中央は阻むための微かな蠕動に、むしろ誘われるようにして食い込みわずかに湿った。

 落胆に嘆息する間もなく円の陰唇に美国の両手の拇指が旗の中央ごと抉り込んだ。およそ愛撫とは程遠い乱暴な侵入に円は悲鳴を上げる。実際のところ美国にそのような情緒はなかった。ただ目標に印をつけただけのことだ。

「これから僕は君の純潔を日の丸とともに突き破る。どれだけこの瞬間を夢見ただろうか」

 円は歪めた顔を力なく振った。打って変わって哀願の色さえ浮かんでいる。しかしその弱々しく無様な姿に美国を加速させる効果はあれど、制止するものは微塵もない。

 美国は萎んで濡れて濃く色づいた日の丸の中央に向けて、怒張した陰茎を近づけていく。先端が触れる寸前で日の丸の両端を左右に引き伸ばし、一挙に張り詰めたところをさらに穿った。反応にも満たない抵抗はそれでも拒絶を示し、しかしそれで逆行することはない。赤丸は徐々に膣口に吸い込まれて撓み、やがて薄膜と重なり合う。陰茎は硬度と体積を増したかのようにさらに膨張し、大儀そうに往路を遡ると、同じ道筋を再び、しかし今度は高速で突撃した。

 二枚の膜が同時に破られるのに瞬間遅れて、乙女の絶叫が轟いた。早鐘のように二度三度、四度五度と打ち付けられるうちにその声は嗚咽の様相を呈していき、代わりに響き渡ったのは高らかな哄笑だった。そして美国は実に愉快そうに円に語り掛けるのだった。

「君はこう言いたいんだろう? 愛する国に対してどうしてこのような仕打ちをするのかって。教えてあげるよ。愛しているからだよ。僕は僕の愛するこの国を、この手で傷つけ汚して壊してやりたいのさ。君だって嬉しいだろう? なぜなら君はマゾヒストなんだから。そうでなければあんなにもこの国の言いなりになるはずがないもの。むしろ君はもっとこの国に尽くさなければならない。肉体も精神も時間も思想も何もかもすべて捧げるんだ。それがマゾヒストたる君が行うべきこの国の愛し方だ。その見返りとして君が得るものは何もない。あえていえばこうして僕のような愛国心溢れる者に踏みにじられることだ。幸せだろう? 僕は幸せだよ。この国を肥らせる君のようなマゾヒストの国民を辱しめることは、この国そのものを辱しめることだからね。君の苦痛はこの国の苦痛。君の悲鳴はこの国の悲鳴。嗚呼、なんという快感だろう。先の大戦にしてもそうだ。勝てない戦争に挑んで大勢の国民を殺すことで、国を牛耳る連中は絶頂を感じていたのさ。愛するこの国を、そして国民を辱めることで、最高の快楽を味わっていたんだ。嗚呼、なんと羨ましい。いやその後も変わらない。今だって同じだ。この先もずっと。僕もいずれそうなる。僕は必ずこの国を支配する。そしてマゾヒストの国民は僕に凌辱されて歓喜する。君と同じだ。でも大丈夫。僕は君を誰よりも愛してあげる。これからもずっと僕が愛してあげる。僕がこの国とこの国の国民すべてをこうして愛するそのときまで。愛しているよ」

 まとめるならばこのような趣旨のことを何度も囁きながら事を続け、長い時間をかけて幾度となく射精を繰り返し、やがて生涯のすべての精を注ぎ込んだように力尽きると、美国は愛する妻を掻き抱くようにして深い眠りにつくのだった。


 円の拘束が緩んでいたのはまったくの偶然であった。しかしあれほどまでに美国が愛情を捧げていた弾みであり必然だったともいえる。

 我が身の自由を取り戻した円はしかし、夫へ一瞥すらくれずに閨を後にした。

 そこから先の円の足跡はある程度明白であるが、いかなる心境でいたのかはもはや誰にも知れることはない。しかし、最愛の夫であり、命の恩人であり、尊敬の対象であり、全幅の信頼を置いていた美国の豹変、否、本心を知ったこと、それを看破できなかったこと、その失意と絶望から一刻も早く逃れたかったことだけは確かだろう。

 組織の一員となってからの円は本部のほど近くで同志とともに共同生活を営んでいた。そこに一人現れた円を認めれば同志は当然驚くが、昨日までの住まいを訪れたことにそこまでの違和感は持たれない。初夜についての冷やかしさえ受けた。

 円の自室だった一室にはまだ主の痕跡が残っていた。戸を開ければ壁一面に掲げられた巨大な日の丸が円を迎えたはずである。

 しばらくして円を訪ねた同志が目にしたのは、引き裂かれた日の丸と、それを用いて縊れて果てた、大和撫子の骸だった。


 円に対する美国の行状が知れたのは、喪も明け切らぬうちのことであった。

 思わぬかたちで組織が把握することになった、内乱と外患の双方の強力な誘引による致命的な国家滅亡を目論んだ計画はしかし、およそ考えられないほど拙劣で実現可能性など全く皆無という代物であり、その首謀者が佐渡美国その人であるという疑念が持ち上がったときは、その蓋然性がいかに高くとも誰もが俄かには信じられず、計画実行の現行犯として捕らえられた下手人が当人であることを加味してもなお、極めて浅い陥穽の類と一蹴されるところであったが、やや遅れて発見された円との接合の映像や、幼少期から積み重ねてきていた小動物への虐待殺傷行為の映像群は、疑念を確信に変貌させるには十分な内容であった。

 これまでの間、誰に対しても自身の性癖やそれに由来した行為の数々を見抜かれることなく過ごしてきた、それだけ思慮深く日々を過ごしてきた美国が、およそ考えられない斯様な失態を犯したのは、ひとえに円を喪失したことによるものだった。

 美国にとって円はいわば、無限に湧き起こる愛国心を注ぐための代償であった。本来ならば傷つけ破壊し蹂躙したい我が国に対して、未だそれができない代わりに仕方なく用いる器であった。まさしく至上に次ぐものであった。我が国の次に愛するものであった。それでも漸く得ることのできた生涯の伴侶であった。溢れんばかりのとめどない愛を一心に伝えることのできる最良の相手であった。そしてそれを永久に失った。それを上回るためには至上そのものに接近するしかなかったのだ。

 美国の計画は稚拙とはいえ、その目的は壮大であり、極刑に値する大罪であった。即ち円に対する深い愛が明るみにならずとも、美国の死は免れようのないものであったわけだが、それが知れたことによる同志の憤慨はひとしおだった。円はただの同志ではなかった。娘のような存在であった。あるいは妹のような立場であった。はたまた密やかな慕情や秘すべき劣情の対象であった。それは美国と昵懇であっても変わるものではなかった。だからこそそれを辱めた罪人への怒りは甚だしかった。

 満場一致で処罰と量刑が確定した。特に議論を重ねるまでもなく実施時期まで即刻と定まった。しかしその方法と場所は紛糾した。無論大筋で腹は決まっていたのだ。ただ折り合いをつけるための論争がいつまでも繰り広げられるだけのことだった。

 同志の全てが美国に惨憺たる死を与えたがっていた。およそ考えられる限りの痛苦と煩悶を一寸でも長く続けた果てにようやく事切れた死骸をさらに切り刻むことさえ望んでいた。しかしそれを行うことは不可能だった。それを行うことそのものがではない。それを行ったとして自分たちに向けられる疑念を恐れたのだ。

 今や佐渡美国は組織の顔である。保守派右翼の希望とさえなっている。美しい国として称揚される我が国の将来の国家元首と目されるほどである。幼妻の夭逝はその肩書に更なる箔を与えていた。その亡失にいかほどをも疑義を抱かれてはならない。若き英雄として葬られなければならない。しかし健康体である美国の病死や自然死は望むべくもない。悪漢による暴行を捏造することは容易であるが、それはそれを防げなかったという具合に組織の面子を損ねることにも繋がる。何より美国の武技からは到底起こり得ぬ不自然なことであり、殉死者を増すことも懸念される。そうなった際の理由付けはさらに困難である。となれば誰の目にも変異のない死骸を作り出さなければならないし、それができる場所も自ずと限られる。

 数多の私刑を行ってきた組織本部の一室で、美国は身体の自由を奪われてなお泰然としていた。事が露見し拘束されたときから早晩こうなることを理解し、自らの生存はとうに諦めていた。けれども安穏とした死を迎えられることもまたそのときから承知していた。そしてまただからこそ持ち前の愛国心を遺憾なく発揮した。自身の処遇に苦悩する、愛する同志たちへと、最適な頃合を見計らって、時折声をかけたのだ。

「いつだったか円を襲おうとした男がいただろう。彼を唆したのは僕なんだ。あのようにすれば円を得られるとね。申し開きを許さずに君たちが彼を始末してくれることはわかっていた。おかげで円を口説き落とすのが容易になった。彼も君たちも実にいい仕事をしてくれた」

「×! ××××! ××!」

「円の具合はとても良かったよ。それを想像しながらあの映像を自由に使うといい。次のときはあれを見せながらやろうと思ってたんだけどな」

「××××××!」

「非国民だって? 僕ほど国を愛している国民はいないよ。そうでなければ、あんなことしやしないだろう」

「×××!」

「売国奴。そうとも。それが僕のこの国に対する愛のかたちだ。愛するこの国が僕のこの手で痛めつけられて滅んでいく。なんて素敵なことだろうか」

「××! ××××!」

「君たちだって同じだろう」

「××××××! ×××!」

「君たちが目指しているものは保守なんかではない。ただの保身だ。それが証拠に君たちは僕を傷つけることさえできないじゃないか。それどころか他殺と疑われないようにと丁重に扱ってさえいる。君たちのそんなやり方では、いつまでたっても君たちの望むように、この国に人を惚れさせることなどできやしないだろうね」

「××!」

「これで殺す? ああ、当然そうなるだろうね。それ以外に君たちが僕の肉体を傷つけず、何よりも自らを守る手段はないものね。でも、僕が大人しく死んでやると思うかい?」

「…××××! …××××!」

「歌を詠ませてくれないか。ひとつ書くものを用意してくれ。片手だけ使えれば十分だ。その後でそれを頂こう。そうすれば円を追って自殺した、僕の死体の出来上がりだ」

「………」

「そうでなければ無理やり僕の口を抉じ開けるんだね。僕は虫歯をしたことがないのが自慢なんだ。指の何本かを失う覚悟があるならそうするといい。いつかは円の体も噛み切ってみたかったけど、まあ言うまい。彼女は自分が言うほどこの国を愛してなど、いなかったのだろうしね」

 なお、同志たちの発言および内容は極めて凡庸なものであるため、割愛する。


 美国が円の死を苦にして服毒に及んだことは、その死とともに発表された。連絡を取れなくなったことから同志が自宅を訪ね、その一室で発見したという経緯であり、検視の結果もそれを裏付けるものであった。

 葬送は多くの右翼組織を交えて盛大に執り行われ、若き英雄の喪失を惜しんだ。

 それはいかに愛国心あろうとも女人である円の比ではなく、中には理由もわからぬまま夫を彼岸へ誘い込んだ円への、主に性別的な点に由来する誹謗中傷に転じた。

 それを庇ったのもまた、目に見えて遺された美国の愛である。亡骸の傍らに遺されていたという達筆な遺書の現物が、その場で公開されていたのだ。


 (アイ)スベキ

 (ウツク)シキ(クニ)

 ()テテデモ

 黄泉(ヨミ)(クニ)ニテ

 (キミ)(アイ)スル


 その愛の深さを目にした者は嗚咽し、あるいは堪え切れずに慟哭した。

 もはや誰も円を責めることはなくなっていた。誰もが二人の永久の愛を祈念せずにはいられなかった。

 美国の遺骨は適切な日を待って、円とともに墓に埋められた。そのために拵えられた墳墓であった。組織は夫妻の墓前でその愛国心を引き継いでいくことを、声高に宣誓するのだった。


 円に対する美国の所業が、その証拠となる映像とともに告発されたのは、これと間を置かずしてのことである。

 そして美国が組織の同志たちに捕縛される場面から始まり、服毒を強いられるまでの映像が、それに続いた(ただし、彼は自ら辞世の句を提案するほど協力的だったし、突き出された毒物を嬉々として口にしたのも本人であり、その死顔は満面に笑みを湛えていた)。

 彼のような愛国者は他にもいたのである。

 組織は直ちに釈明を試みた。美国は国家転覆と我々国民の殲滅を図ろうとした大罪人であり、円に対する非道も到底許されざるものではないという趣旨である。

 また、組織は美国の悪行を示すものとして、彼のコレクションを公開した。そこには若き日の彼の嬌声をBGMに多くの小動物が虐待殺傷されていく様が映し出されており、『モルモット』と題され付番された映像には、その数と同じ数の人間が同様に扱われて息絶え、遺体の発見が極めて困難か不可能というほどに処理され遺棄されていく様が残されていた。そのうえで組織は主張した。美国は尊ぶべき家族さえもこのように残虐に殺害し、あまつさえ行方不明に見せかけた鬼畜な卑劣漢であると。

 これについての効果が全くなかったとはいえない。実験で留めたのは組織の功績だと評価する者も零ではない。しかしそれを主張する者たちがその美国を秘密裏に私刑に至らしめて死に追いやり、なおかつその隠蔽を試みた当人たちであることへの非難は、一方的な動画配信という方法を採用したことも手伝い、その風向きを凌駕した。さればこそ大方の意見は、猶更真相を闇に葬るべきではなかったではないかというところに落ち着いた。

 組織は敵対する左翼団体からは姑息な殺人集団という悪評のほかに、美国が所属していた一点において、テロリスト集団という烙印を与えられた。一般人の認識も濃淡の差はあれど、これを希釈したものになっていった。公私にわたって彼らの支持を表明したり、夫妻の葬礼に列席したりした政治家、財界人、著名人たちは、こぞって「遺憾の意」を示すのであった。

 他の右翼組織もこれに追従した。かつて円の救出に手を取り合い、その前後から連名で活動することも少なくなく、二人の葬送に大挙した者たちが手のひらを返す様は、美国が述べた彼ら彼女らの本性を露呈させた。保守ではなく保身。

 彼らの多くはそれらの指摘に対しては黙殺による返答、あるいは名誉棄損や侮辱という旨の主張による反論という具合に、徹底して対抗する態度を取った。僅かな者はその鬱憤をぶつけるかのように、天に代わって誅すると称した犯罪行為により、結果として各々が所属する集団ともども右翼全体の価値を低下させるのに一役買った。

 それらの犯罪行為のうちで最も穏便なものは、美国の眠る墓を汚損させたことであろう。死者への冒涜という点に目をつむれば、そのほかのものと比してではあるものの、実害は乏しい。その次は夫妻を擁した組織本部に対する有形無形の攻撃である。建物をぐるり囲んだ街宣車による昼夜を問わない怒声と非難、外壁の至るところに書き殴られた罵詈雑言、建物内部での鳴り止まぬ電話や危険物の封緘された封書の投函がそれにあたる。組織の構成員そのものに対する攻撃も同様のものであり、生身の肉体故の凄烈な負傷を強いられた者もいた。無関係な親類縁者が標的にされたこともあった。

 このために一部の構成員は美国が述べた保守ではなく保身という真の姿を発揮して、組織からの脱退を図った。組織もまた美国が述べた保守ではなく保身という言葉を体現するように、非国民や売国奴という表現を用いつつ、一切の脱退を認めなかった。

 非国民あるいは売国奴もしくはその双方の綽名を得た構成員の中には、組織に残ることでその汚名の返上を遂げようとする者がいる一方、その名を剥ぎ取ることには目もくれずに、強引な手法で脱退を果たそうとする者もいた。

 成功した者もいれば失敗した者もいた。後者の中には凄絶な私刑を終える条件として組織への忠誠を改めて誓う者がいる一方で、それを果たす前後に落命した者もいた。生存者の中には再度の脱退を試みた者もいた。その多くは従前よりも格段に厳しくなった監視に阻まれた直後、ほとんど申し開きも許されずに処断された。

 生還者の中にはすでに実行された組織の犯罪行為やその準備についての暴露、ときには自分が関与していたことを自白さえすることで、その立場を少しでも良好かつ強固なものにしようと画策する者も現れた。二度目にして辛うじて生還を成功させた者については、当人が述べるまでもなくその身に受けた仕打ちがその証明となった。

 それらは美国の一件が霞むほどに積み上がり、組織の印象を極限の遥か彼方まで悪化させ、我が国史上類例を見ないほどの犯罪者集団としての地位を確立させた。

 いつしか組織本部では、選りすぐりの愛国者たちと、脱退の機会を活かせなかった者たちが、息を潜めるようにして蟠るようになっていた。一目ではどちらがどちらか区別がつかず、それは当人たちにすら見抜けないものであった。

 その話題の多くは、どうすればこの窮地を切り抜けられるかという難問に対する挑戦であり、到底不可能であるという解から目を逸らすように、この立場に置かれたことへの憤懣の表出として、全ては美国の所為であるという旨から成る、美国への悪口雑言に終着するのが常であった。

 まれに誰があの映像を公にしたのかということに話が及ぶも、その誰かが名乗り出るはずもなく、誰かが誰かの瑕疵を以てその誰かだと糾弾するが、もとより薄弱な根拠は言いがかりの枠を超えず、されたほうとて潔白を証明できずとも、同様に相手方の欠点を論うことで、対等に渡り合えるようになる。斯様に闇雲な犯人探しは難航するばかりである。事実その何者かは、もはやその場に居合わせないのかもしれなかった。

 ごくわずかに建設的な議論がされるものの、その手段の多くは非合法あるいは犯罪行為に直結するものであり、実際にそれを用いて美国の死の真相やそれ以外の機密を白日の下に晒そうとする捜査機関の手を逃れてきた組織であるが、度重なる非国民の非国民たる悪行、売国奴の売国奴たる蛮行、あるいは愛国者の愛国者たる愛情の発露により、ついに強制力を伴う捜査が免れないところまで至るようになっていた。

 そしてその日、空からあるいは地上を埋め尽くす各報道機関を通じて国中の国民が注視する中、捜査機関の強行的な捜査が執行された。あくまで徹底抗戦を主張し実行しようとした構成員たちはあえなく捕縛されるが、それこそが目的だった可能性は否定できない。

 捜査員集団の建物への侵入を把握した残りの構成員たちは、組織とともに破滅する我が身を至近に控えた絶望と、それをもたらした美国に対する激昂と怨嗟の渦巻く中で、最後の抗争を勃発させた。

 なぜあのような非国民を同志に引き入れたのかという詰問と、なぜあのような売国奴を見抜けなかったのかという逆上が、その発端であった。前者は下層の構成員から上層の構成員へと向けられたものであり、後者はその逆である。

 責任の押し付け合いは平時における互いの行状に対する罵り合いにまで発展し、どちらからともなく殴り合いが始まった挙句、凶器を伴った殺し合いの様相を帯びてくる。そしてそれは同時多発的に巻き起こっていた。

 愛する者たちの阿鼻叫喚の只中で、()は、密かにしかし全国民に露見してもおかしくないほどに射精していた。早くも割腹によって現在と将来の現実からの逃避に成功した抜け殻が放つ炎熱を伴う臭気がなければ、少なくとも生き残りには気づかれていただろう。

 陰茎に巻き付けた日の丸の尖端を覆う赤色が白く汚れていく様子を想像するだけで、その絶頂は千代に八千代に続くようだった。

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