嘘つけないのよ〜
自然と足は速くなる。
二人とも急いで私に着いてきてくれてるけど、行きたくないと言っておいて急に足早になった、どうもイクザです。
ごめんね、私の機嫌が最悪なのを感じ取り無言でいてくれているのは有難いけど振り回しているのはわかっているので心の中で拝んでおきます。
朝から書類に埋もれてしかめっ面をしていればこうなるのはわかっていたようだけど、説明できるものでは無いので迂闊に話せないし、変な事に巻き込みたくないし…まったくもって面倒に巻き込んでムカつくぞ狐宰相め。
先触れなんて余裕は無かったのでバンッと重厚な扉を押し開け、お付きの侍従も官吏も政務官もすっ飛ばしてバンッと包みを叩きつけた。あら?徹夜ですかやつれてますよ。
では一つ結びをほどいてあげましょう。
他の人に見せてはいけないものだものね、宰相様向けだけピラリとして。
でもまだ全開しないよ。
宰相様は私の勢いに多少引いていたが叩きつけた資料の一部を見た途端に人払いをしてくれた。やはりヤバイモノだったか。
全ての人が部屋を出たのを確認してエリオット君も出てもらった。ドアの側に控えておりますのでと言われアンナちゃんもドアを開けておりますので何かあればお声掛けくださいと心配そうに視線をくれた。
ごめんねありがとう。
よし戦ってやるぜ!
「これって必死に作物を作っている領民に失礼すぎます。偉い人が率先してこれやっちゃったらダメなやつです」
声は抑えないとと思いながらも昂りが治らないよ〜パサリと風呂敷を解き書類と纏めを差し出した。
私のまとめと関連帳簿を見て宰相様らしからぬ舌打ちが響き驚きを隠せなかったが、そうなるのも仕方がないだろう。風呂敷はテーブルクロス抜きよろしく回収してリュックに仕舞い、徐に帳簿を開けてまず一番に見て欲しい場所を指し示す。
一時の利益と利権を得るためだけにした事ならば、そこに居る事など誰も許さない事だ。何せ国庫の横領になっているのだから犯罪さ。
これによって困るのはいつも平民なんだよ。
あんた達貴族ではない。
守る立場のやつが一番やっちゃいけない事だよ。しばし言葉を発せず読み終わるまで待って
「宰相様はどうなさるおつもりですか?」
「この時期に‥チッ」
おお二度目の舌打ちいただきました。
前回がいつだったか忘れる様にしたので覚えておりませんが2回めだと言う事は覚えています。
「ふ〜、少し他が忙しくて確認を怠ってしまいましたね。あっちこちと手の込んだ誤魔化し事を‥。至急手を打ちますが‥はぁ〜、その前になんで貴方がこれを持っているんでしょうか?これは人事院と財務院の出納管理局と領地管理局にある物で、こちらは何処の業者の帳簿なんでしょうか?城の出入り業者ですよね?城を出ない貴方がこれを見れる訳がないし、各管理者のまして業者が部外秘の書類を貴方に見せる訳が無いですよね?」
「え?‥ほほほほ、ほほほ、ほほほほ何のことかな〜?」
ホント、嘘はつけないんだよ私。
逃げたい一心でもう口が勝手に動くし、でも怯んじゃったから変な間が出来て余計に怪しいじゃんか。
逃げたい‥でもあの人は善意でしてくれた事‥だよね?
私だけでは出来ない事なんて勿論わかっているからメチャ黒さが増してるよ宰相様。
落ち着け自分、しらを切れば‥ん
あれ‥宰相様は何も知らないの?
って事はこの調査の指示は出してないと?まさかの影さんの独断とか言っちゃう?
言っちゃうか…
黒いよ〜怖いよ〜
穏便に逃げたいのだけど
小馬鹿にしたような言葉しか浮かばないじゃないの、自殺行為だよ〜
言葉で勝てる気がしない。浮かんだ言葉を呑めそれを言ったら死ぬぞ!
オホホなんて笑ったから煽っちゃった?怖いの増してるよ〜
宰相様の眉がピクリとして口端が上がるの見ちゃったよ。
「何処からこの資料を?」
恐怖以外の何も浮かばん!
ニッコリ笑って全て押し付けて
逃げるんだ!
「天の御心ではないかしら?目が覚めたら机の上にあったので、中身を見てみたらびっくりしたわ〜なので急いでこちらに来た次第です」
これ本当。
私の引きつった笑顔に些か驚いた様に眼を開き、宰相様は私の叩きつけたノートに私の付けた付箋の内容を再度見つめる。
何時もの鉄面皮が少しだけ動き、怒気を纏う鬼から魔王顔にジョブチェンしたのを私はただただ立つ事に専念して耐えた。
だって脚の震えが止まんないんだもの。
逃げ出したいのに動けないって。
こ、怖い。この前の威圧とはまた違う魔王?
*** ***
一部地域の水不足の為の用水路の件、それだけではないだろう国の膨大な政務に忙殺され、かつ私の厄介ごとも多少は‥関わっていて超忙しいから?其々の部門にまたがるものの串刺しチェックを見逃したのだろう(政務官‥官吏が…)と推測する。でも私が来てから起こったことではないのよ。前々から小額でやっていたのが、クイーンのせい?額が跳ね上がった事でおかしくなったのだから私のせいではないからね!
別々に見たら気付かない様に巧妙に隠されていたが何時もの宰相様なら見つけていたであろう簡単な隠匿だった。
そう、私にもわかるくらいのね。
でも宰相様がそれを逃した事であの色ボケ陰険守銭奴オヤジ達は図に乗ったんだろうな〜
「ゴメンね私が見つけちゃって!」
「チッ」
「ひっ」
悔しそうな宰相様を初めて見れたが、再びの舌打ち3回目いただきました。
あの人達への?それとも私へのやっかみ?
いや私がした余計な事への恫喝?
まぁ今の舌打ちで宰相様迄加担した事ではないとわかって安心しました。
でも、
凄みがありすきぎて耳の中でその音が響き、やっと我にかえるも震えは止まらなかった。
宰相様は直ぐに普段の嘘くさい微笑みに戻ってしまったが、やっぱりあの微笑みはこの世のものではないくらい怖い。
この人ちょっとイケメンだけど、普通のおっさんと思ったら大間違いだ。
この前のあの冷気で、この人が私の事を利用価値があるから匿っている事もよく分かったから(それと文房具と異世界情報だけが目当てで側に置いているだけ)足元を掬われてからでは遅い。
この人は要らないものはスパンと切る事が出来る人。
だから宰相なんか出来ているのだとよくわかった。温情なんてものじゃないから私の事を心配して匿ってくれているわけではない。
ギブ&テイク与える物がなければ即‥ブルルル:(;゛゜'ω゜'):
ここは異世界、ここは異世界。ここは異世界。私の常識はココでは非常識!
信頼できる人は少ない。その人たちでさえ気を抜けば死亡フラグが立ちまくる。
ご都合宜しく retry は無い。
ゲームじゃ無いんだから一度死ねば此処で終わる、もう一回が無い。
ゲームオーバーが即現実の死となるのだと思うと怖さしかない。
ただ、天井の影さんは少しだけ私の味方だろうと思えたのは嬉しかった。
でも次からは、やり方は考えようね。宰相様の冷圧で私は危うく死にかけました。心臓キュッてしたんです。
冷汗も出ました。
嫌な汗です臭いそう…ストレス汗は臭いんだぞ!
それとこれ以上のストレス掛かったら帯状疱疹になるかもだからもうやめてね!痛いらしいから激痛らしいからなりたくないから。もう蕁麻疹出てるから‥
影さん貴方自身の存命の為にも宰相様に内緒で動くのはもう辞めて下さい。
私のことは飛ばして宰相様に直訴して下さい。私の安全の為にもお願いします。私、目立ちたく無いんです!
そうだ、これも言いに来たんだった。
言ってみれば私はこっちが本命だもの。
調査も済み、この裏切りを誰が行なっていたか判明したので仕事は終わった。そして私は高らかに宣言する!
「城に巣食う金食い虫の発見も終わりましたので、前にもお伝えした様に廃棄パンは私が責任を持って加工の上、安全を確認してから街に届けます。詳細は後ほど報告書にて、では作業がありますので失礼します」
「虫‥ふふ、わかりました。ですが街に届けるのはあなた自身となると許可できませんよ。だから、ん‥加工って何ですか?あっもう行ってしまったか、此方の話が終わってないのにまったく落ち着きのない子だ」




