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妖精カフェ  作者: 星村直樹
アルバイトはカフェで
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涼夏堂

 翌日、妖精カフェに行くと魔法学校の先生が、手ぐすね引いて私を待っていた。その後ろに、しょんぼりしている3人。マスターは、私を見て、ホッとした顔をした。


「来たか、千里君。こちらは、トラングラー魔法学園のクリスタ学園長だよ。お話があるそうだ」


 6次元膜を「えいやっ」と、急いで通り抜け、あの奈落の底のような暗黒を見ないで済んで、ホッとしたのもつかの間、ウィンディたちより、一回り大きな妖精が、しょんぼりしている、サラとアクアと、ヒイラギを連れてやって来た。アンナが、事の顛末を簡単に説明してくれた。


「あなたは、昨日、4大精霊と、一度に契約してしまったのよ。あなたの中に、ウィンディと、この三人の因子が流れ込んだのを感じなかった?」


「みんなとハイタッチした時、なんだか温かいものが流れ込んできて、元気をもらったった気がしました」


「わたくしは、あなたの中に入った、この子たちの因子を取り除くことができます。そうしたいですか」

 クリスタ先生の言い様を聞いて、もっと下を向く3人。せっかくできた友達と、引き裂かれるような気がした。


「分からないです。私、魔法も魔術も、昨日聞いたばかりです」


「なるほど。では、聞き方を変えましょう。あなたは、これから何がしたいのですか」


「私は、服飾の専門学校に通うために東京に出てきました。将来は、自分でデザインした服を作りたいと思っています」


「クリスタ先生。私たちと千里の契約は、理に叶っていると思います」

 ウィンディが、援護射撃をしてくれる。


「それはそうですが、あなたも含め、この子たちは優秀です。本当にそれでよいのですか」


 3人とも頷いて肯定した。3人が頷いているのに驚く先生。


「では、試して差し上げましょう。1週間で、絹のハンカチと、ガラスのハンカチを作ってください。それが課題です。出来なかったら、契約は、破棄します。どちらにせよ、ご両親に、このことは、お話します。よろしいですね」


 そう言って、クリスタ先生は、悠然と浮かびながら3人を連れて学園に戻った。帰り際、3人が嬉しそうな顔をして手を振ったりウインクしているのを見て、ニコッと小さく手を振った。


 学園長たちがオープンスペース側から、妖精カフェを出て行くと、ウィンディが、頭を抱えて。昨日、私が300万って吹っ掛けた時の英国紳士見たいに「Oh NO」と言って、もがいていた。


「ウィンディ、ウィンディ」


 私が、ウィンディの肩を指で、ゆさゆさすると、「はっ」と我に返って反省のポーズを取った。


「私、遠いところに行ってた?」


「うん、とっても」


「1週間でハンカチ作れなんて、鬼だわ学園長。せいぜい糸を作るので精いっぱいよ」


「いいんじゃない。優しいわよ、クリスタ先生。雑貨店に糸車と、機織り機があるじゃない。(妖精用)だから、糸さえ作れればいいのよ」


「アンナ、冴えてる」


 マスターが。パンと、手をたたいて、この場をまとめた。

「それじゃあ、千里君には、仕入れに行ってもらうか。町の手芸用品店に行って絹糸と、駄菓子屋に行ってビー玉を買ってきもらえるかな。ここの店でも出すから、大目に頼む」


「絹糸を買っちゃったら、ずるにならないですか」


 アンナが、マスターの話を補足してくれた。

「現行の絹糸を妖精サイズに合うようにもっと細くして織ったものが、妖精の絹のハンカチ。同じように、ガラスの餅を溶かして超極細の糸を作ると、透明な布ができるのよ。分かったら、仕入れに行ってちょうだい。千里は、自分のおこずかいで買えるでしょう。どっちも、こっちの世界だと、お高いのよ。ウィンディも一緒に行ってね。何かいいものがあったら買ってきて」


「了解!」



 そういうわけで、ウィンディと、お買い物に行く事になった。マスターに近所の駄菓子屋と手芸品店でいいって言われたのに、ウィンディが魔法士御用達のお店を紹介してくれた。それで、浅草橋と、合羽橋まで、遠出することになった。ここに、行きつけの店があるそうだ。浅草橋と、合羽橋は、私にとって、異世界と同じぐらいワンダーランドだった。


 浅草橋には、手芸品の大きな専門店がある。物凄い品ぞろいで、1日中居られるお店だ。服のお店は、神田川を超えたところにある馬喰町にいっぱいあるそうだが、今回は行っている暇がない。ここのビーズコーナーから動こうとしない私をウィンディが引っ張った。


「千里ったら、お上りさん丸出しじゃない。ここは、試しによっただけ。行きつけのお店に行くわよ」


 私は、東京に出てきて、まだ4日目のお上りさんです。

「ああ、私のビーズ」


「これから行くお店にもあるわよ」


 ウィンディに襟首つかまれて、ずるずる後ろ向きに引っ張られた。周りから見たら、私が一人で、手をパタパタして一人芝居をしているように見えただろう。周りの人に、ウィンディは見えない。周りの人の目に気づいた私は、顔を真っ赤にして恥ずかしいと思った。


「ちゃんと付いて行くから、もう、止めて」


「分かれば、いいわ。それじゃあ行きましょ」


 ウィンディが、肩に乗って、案内してくれた。



 涼夏堂

 とっても古そうな店で、多分昔は、反物屋さんだったんだと思う。店の奥にある壁一面の棚に反物がいっぱいあるからそうだろう。


「涼夏堂さん、絹糸くださいな」


「これは、ウィンディ様。今日はおひとりで?」


「ほら、入り口にいる子。私の初めての後輩よ」


「珍しい。日本人じゃないですか。なんて言うお名前で」


「千里よ。こっちよ千里」


「これは、これは千里様。今後とも御ひいきにしてください」


「おじさん、ウィンディが見えるんですか」


「私どもの店は、魔法界でも老舗ですよ。妖精カフェさんとは仲良くさせていただいています。それにしても日本人とは、嬉しいですね。私は、12代目、平賀伊右衛門です」


「私、宵野千里です。昨日から、妖精カフェで、働いています。でも、まだ研修中で、良く分かっていないんです」


「宵野、宵野・・はて。それで、今日は、何をお探しで」


「絹糸よ。それで、妖精の絹糸をつぐむのよ」


「それはそれは。では、どうぞこちらに。良い糸があればよろしいのですが。そうだ、あゆ、あゆはいますか」

「なに、お父さん」

「これ!お客様の前ですよ」

「ごめんなさい。ご用は何ですか」

「こちらのお二人が、絹糸をお探しです。案内して差し上げなさい」


「あっ、ウィンディ。こっちに出てきたの」

 あゆのお父さんは、あゆの話し方にちょっとあきれ顔だったが、それ以上あゆを叱らず。接客を任せることにした。


「まあね。この子は、あゆよ。それで、この子は、千里。昨日から、妖精カフェで働いているのよ。千里は、4月から服飾の専門学校に通うそうよ。ひいきにしてもらったらどお」


「私と同い年なんだ、私ね。家業を継ぐために修行中だよ、修行って言っても、昨日からだけどね」


「あゆは、魔法に詳しいの」


「そっちも全然だめ。これからよ。千里とは一緒のスタートだね。よろしくね」


 手を差し出してくれたので、握手した。また、友達が増えた。昨日から大変なことが続くけど、いいこともいっぱいあるなー


「それで? ウィンディ」


「絹糸がほしいのよ。妖精の絹糸をつぐむためだから、出来るだけ初めから細い方がいいんだけど。その上、丈夫じゃないと、今回は苦しいかも」


「太さは、21Dとか32Dとかデニールで表記されているけど、丈夫さか。私にはわからない。でも、値段が違うから、いいのがあるのかも。ちょっと待って、ここにあるのは既製品だから、奥から持ってくるね」


「あゆも、これから修行ね」


「奥からって、高いんじゃないかな」


「いいものを見て、それから、既製品の中に、それに近いものを探すのよ」


「わかった」


 あゆが持ってきた絹糸は、一見見ただけで、既製品と違うと分かる。つやつやしていて触り心地もいい。素人でもわかるのだ。ただの絹糸の束なのに、値段のゼロが1つ違う。だから逆に、既製品の中に有る、すっごく安い絹糸が気になった。


 ウィンディが、良いものは違うわねと、あゆと話しているのをよそに、その格安の絹糸が気になってしょうがなくなった。見るからにごわごわしているけど、私の目には、とっても細く見える。


「あゆ。この絹糸は、なんでこんなに安いの」


「それは、ちゅうしだからよ。絹糸って蚕の繭からとるんだけど、種類があるのよ。太さが均一で、つやがある綺麗なのが生糸。良質な生糸が作れない絹で作った生糸が、絹紡糸。最後に、けんぼうしを作っているときに出た不要な絹糸や繭くずから作られたのが、紬糸ちゅうしよ。これって、肌触りが悪いでしょう」


「でも、生糸より細く見えるけど」


「たぶん生糸より丈夫だと思うけど、妖精の肌に合わないんじゃない。そういうのは足袋に使う糸よ」


「そうなんだ。金色が混ざってて綺麗なのにな」


「なんですってー。私にも見せて」

 ウィンディが勢い込んで、格安の絹糸を見に来た。

「どれなの。いえ、何処に金糸があるの。金糸なんてそんなにあるわけない」


「ほら、ここ」

 絹糸をよって見せた。


「本当。それもすごい量。千里、お手柄よ」


 あゆは修業しだしたばかりだ。頭にはてなマークをいっぱい浮かべている。

「金糸って何なの。普通の金糸と違うよね」


「妖精にとって高価なものよ。あゆ、ご主人を呼んできてちょうだい。見つけたのは私たちよ。安くしてもらうわ」


「お父さーん」

「これ、旦那様と呼びなさい」


 涼夏堂の主人は、金糸の話を聞いて慌ててやって来た。


「紬糸の中に金糸が。それは貴重だ」


「ご主人。二束三文で売るところ救ったのは、私たちよ。安くして」


「分かりました。少しなら、紬糸の値段でお譲りしましょう。後は、ちゃんと仕入れてください」


「全部いただくわ。妖精カフェに、つけてください」


 私は、30円で買ったけど、ウィンディは、6万で買っていた。金糸はそんなにないので、21D4本双2540mの生糸も300円で買った。


 あゆは、父親に、金糸の話を丁寧に教えてもらっていた。二人の見送りで店を出た私たちは、ビー玉を買うために、合羽橋に向かった。  


「あゆも、一度は精霊界で、修行をした方がいいかもしれないわ」

 ウィンディは良い買い物をしたと、私の肩にとまって、意気揚々と足をぶらぶらさせた。


「カフェで一緒に働けると嬉しいな」


「たぶん、あゆは、6次元膜を通れないと思う。だから無理ね。でも、やり方は、他にもあるはず。マスターに聞いてみるわ」


「賛成」


 合羽橋に行くには、ここからだと、バスが早いそうだ。ひょっとして、ウィンディも東京に住んでたことがあるの?でも、他の人に見えないから、そんなことないかと、自問自答して聞きそびれた。バスの窓から見る景色は新鮮で、東京に来たなーと実感した。

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