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妖精カフェ  作者: 星村直樹
火龍王のタマゴ
32/96

博史とアンナのなれそめ

 ターシャもナーシャもデビットもみんな飛べるので、すぐやって来た。私は、ターシャに駆け寄って、「人魚姫のサーヤに付いて龍王城に行かなくてはいけなくなったので、帰るのが遅くなる」と、サイモンの伝言を一番に伝えた。


「そう、私もサーヤさんに会いたいわ。サイモンがずっと龍王城でお世話になっているし、後とで行ってみる。その前に、お昼を食べていくでしょ。ご馳走するね」


 龍王城は、エリシウム湾をはさんだ対岸にあり、陸路だと遠いが、飛べば割と早く着く。ターシャは、翼人。


 そんな話をしている間に、ヒイラギとアンナが、コーヒーや紅茶やカフェラテを用意して食卓に並べた。ここで、妖精カフェ緊急会議になった。横で、シルフとラフォーレも、ちょこんと食卓に座って、パイを食べながら聞いていた。



 一連の話を聞いて、マスターが腕組みして難しい顔をした。


「ふーむ、確かに、黒門から、地球側に王子が連れ去られた可能性が高いね。師匠が閉じたのなら、もう、敵が黒門を通ることはないと思うけど。地球側の出口も分からなくなった」


「これなんですけど。京爺がやっつけた魔術師が着ていた、マントの切れ端だそうです」


 そう言って、赤茶けた魔術師のマントの焼けた切れ端をマスターに見せた。


「インデアンのマントだね。でも、どの種族の物かまでは、調べてみないとわからないな」


「アメリカってことですか」


「まず、アメリカ中部だろうね。でも、師匠が戦った魔術師の出自が分かるだけかもしれないよ」


「地球を探せと言っても広すぎるわ。その魔術師を説得できないかしら」

 ナーシャが、デビットを見る

「BOSの名前を言わなかったんだろ。難しいんじゃないか。盗んだ証拠もないし」

 デビットが、一般論を言う。


「契約したのは、火トカゲだったんでしょう。リザードマンの所に落ち着くわよ。バクバに事情を話しましょう」

 バクバは、リザードマンの長。

「アンナの意見はもっともだけど、火竜たちは、拷問とか、強硬手段に訴えかねないよ。その魔術師が危険になる。まだ、怪しいというだけなんだから」

 マスターの意見も一理ある。


「私が行って、夫に仲介してもらう。人族は竜族みたいに頑健ではないから。説得のほうがいいと思うわ」

 この件は、ターシャに任せることになった。



 それで、今度は、タマゴ探しの話になった。


「サラが首につけている龍玉に私たちが力を送ると、人のオーラを認識できるようになるんです。火のオーラを出している大きなタマゴなんで、どこにでもあるものじゃないから、近くにあればすぐ見つかると思います」


「本当は、まだ早いけど、師匠に言って千里をオーラが見えるようにしてもらわないといけないね」


「みんなで、力を送ると、サーチ範囲が広がるんだよね」

 ヒイラギは興味津々。千里がオーラを見えるようになると自分たちも見えるようになる。


 これらの話を聞いたアンナが、とても険しい顔をした。

「本当は、千里たちが卵を探しに行くのは反対よ。敵がいるのよ。とても危険だわ」


「場所を見つけるだけでいいんじゃないか。後は、イギリスの魔法使い防衛隊に任せるさ。ぼくの魔法の傷もずいぶん癒えたんだよ。いざとなったら・・」


「博史さん!」

「ごめんごめん、師匠に頼むよ」


「魔法の傷って?」

 私とヒイラギは、ターシャとナーシャに、こっそり聞いた。


「今度ね」

「みんながいるときにね。だから、今度みんなで、ご飯を食べに来て」

 そう言って、ここでは教えてもらえなかった。


「千里君には、パトーナムを覚えてもらいたい。光珠で、出来るから」

「守りの魔法よ。光の魔法」


「この間マスターが、光色ができないと、光の魔法は使えないって言ってませんでした?」


「光珠が光色の代わりをするんだ。オーラが見えるようになるとできる。とにかくみんなを守らないといけないだろ」


「マスター私は?」


「そうだね。ヒイラギに、千里君を支援してもらおうか。ぼくも、オーラを見えるように押せるけど、師匠の方がすごいんだ。師匠は早くても、ここに来るのは、夕方だから。今日は、普通にカフェをやってもらえるかな」


「あっ、カフェは、私がやります。クリスタ先生に、ガラスのハンカチの納期を伸ばしてもらわないといけないんです。ヒイラギお願い。言いに行って」


「お昼は、二人とも私の所に来るでしょ」

 ターシャが、出発前の約束通りお昼を食べさせてくれる。


「わしは、島に怪しい奴がいないか、皆に声を掛けて捜査する。ナーシャ、弁当を頼めるか」

 ムシキングが、不審者の捜索を引き受けてくれた。


「分かったわ。じゃあ私達も、お昼は、ターシャの所でいい?」


「ごめん、うちもいいかしら」


 マスターも含めて、皆ターシャの家でお昼を食べることになった。ターシャとナーシャがお昼を作ってくれる。私たちは交代ごうたいで食べに行くことになった。




 ターシャとナーシャの家がある大樹の中腹は、高さが300メートルもある。木の枝のほとんどは、そこから枝分かれして伸びているので、よじ登るにしても大変だ。みんなは、飛んでいるみたい。


「私、飛べないよ」

 飛べないって言ったけど、それって普通だと思う。でも、私の周りを見ると、飛べないのは、私だけ。サイモンでも、ぷかぷか浮く。サイモンは竜人なので、走るように昇れる。だけど、私には無理。


 私は、森の大樹の中腹にあるナーシャの家に行く手段がない。外に出て、木を見上げて、「こりゃ無理だわ」と、思った。めちゃめちゃ高い。


「お待たせ」

「行くわよ」

 ヒイラギが、ナーシャを呼んで来てくれた。ナーシャが私を抱えて飛んでくれる。


 ナーシャたち有翼族。翼人は、容姿がエルフの様で美しく、天使の羽が生えている。たたむとコンパクトに見える羽は、広げると、とても大きくなる。翼人の属性は風なので、ふわっと浮かんだ。


「300メートルほど飛ぶわよ」

「下は見ないほうがいいよ」


 きゃーーーー


 とても高く舞い上がった。下を見るなと言うので、上を見ていると、まだ遠いけど、ぼんやり空に島が浮いているのが見える。


「あれは?」

「島よ。浮島は、空を流れているのね。パグーと公転周期が違うのよ。しばらくこの辺りにいるから、そのうち行こうね」


 浮島は、大樹よりもっと、ずっと高いところに浮かんでいる。シップウに連れて行ってもらいたいかも。


 森の大樹の中腹には湖があり、まるで別天地。そこに、デビット家とサイモン家がある。二家族とも新婚さん。


 中腹に降りて、地の上に足がついたので、ほっとした。落ち着いて周りを見ると、こういう楠の巨木がいくつもある。でも、ここは、格別大きな木だ。


 二軒ともヨーロッパ調で、少しカラフルな家。湖の周りは果樹園のように色々な果物の木が生っている。とても空気がきれいで、景色がきれいで落ち着けるところだ。


「お邪魔しまーす」

 

サイモン家のご飯は、私から言うと和風。ちょっと赤いもちもちっとしたご飯に、焼き魚とおしんこだった。話を聞くとムシキングの家の方が、洋風でパンとお肉主体。

 今回は普通の昼食。「ご馳走は、みんなと一緒にね」と言われている。


「ターシャの所のが、天空園料理ね。私の所は、火の国料理よ。お肉やスープが主体。今度食べに来てね」


「甘いの食べたい」

 ヒイラギが、妖精は、「甘いもの主体よ」と、訴えてきた。


「じゃあ、はい。自分で、赤飯を丸めて、きな粉をまぶして、おはぎにして」


 そう言って、砂糖たっぷりのきな粉をヒイラギの前に置いた。


「美味しい、初めて」


「これも、天空園料理よ。美味しいでしょう」


 日本と一緒。やっぱり、明星様の文化が生きているんだわ

 私は、普通に焼き魚を美味しくいただいた。



「あのう、マスターの怪我の話を聞いていいですか。アクアとサラは、東京に行ったことが無いんです。それにも慣れないといけないから、聞けるときに聞きたいです」

「私も聞きたい」


 ご飯を食べ終わって、お茶になった。もう少し休憩時間がある。


「サーシャが話して」

 サーシャが双子の妹。博史を最初に見つけたのは、虫の聖戦士たち。


「博史は、死にかけて、精霊界に来たのよ。京爺が、時限事故で亞空間に落ちたことがあるのね。偶々、博史もそこに堕ちたのよ。そこに、京爺が、道しるべを残していなかったら、死んでいたわ。瀕死だったの」


「魔法の傷って何ですか」


「呪いの傷よ」

 重い話なので、ターシャが、皆にお茶を注いで間を作る。

「気の流れがめちゃめちゃだったわ。あれじゃあ、癒しの魔法は使えない。だから、火の魔法で受けたやけどを治すことができなくて、目も当てられない状態だった」


「でも、驚いたわ。博史の傍らに、光の女の子が、ずっと付き添っていたのよ」

「アンナ、泣いていたね」


「私の夫は、虫の聖戦士でしょう。博史を助けるために京爺を探したわ」


「話の出来ない光の女の子が、アンナだったの!」

 ヒイラギが、話にのめりこんでいた。


「そうよ。私たちには、光の魔法を使える人がいないでしょう。そう言うのは京爺なのよ。京爺は、バクバとお酒をの飲んでいたから、すぐ見つかったわ。でも、ものすごく酔っぱらっちゃってて。ただね、光の女の子と話し出したのよ。それで、気の流れが、左右逆になっているだけだってわかった」

「酔っ払いにしては手際が良かったわ」


「普通、気の流れって右外回転と、左外回転よ。それが逆だった。酔っぱらっているのが良かったのかしら、それを一挙に逆回転させて元に戻したのよ。私たちは、博史が死ぬんじゃないかと思ったけどね」

「でも、ちょっと無茶な話でしょう。あれから、3年経つわ。殆ど直っているんだけど、まだリハビリ中よ」


 それを聞いて、水竜王のオーラを思い出した。水竜王の左右の回転しているオーラがそんな感じだった。


「アンナさんは、どうなったんですか」


「アンナは、京爺と話ができたのよ。京爺は、時限事故に遭った人だから、次元門を作るのを嫌がっていたけど、アンナの泣いている姿に負けてね。新しい門を開いた。それが、妖精カフェの門よ」


「アンナって、最初は、押しかけ女房だったのよ。まだ、高校2年生?17歳だったのよ。あの子」


「京爺がね、学校だけは卒業しなさい。じゃないと門を閉じるって言われて、バスク魔法学校に戻ったわ。ちゃんと卒業したのよ」


「でも、光体になって、ちょくちょく来ていたけどね」


「敵って言うのは?」

「犯人は?」


「それが、言わないのよ。あの時は、それどころじゃなかったし、でも、今は、博史もアンナのことも信用しているわ。力になるのに」

「私たちに迷惑がかかるって思っているんじゃないの」

「そんな感じね」


 すごい話を聞いたーと、思った。


「この話をウィンディは、知らないわ。だから、もう一回みんなに話すから聞いてね」


 私とヒイラギは目を合わせて、もう一度この話を聞こうと打ち合わせた。


「パトーナム、覚えないとね」

「多分、私、使えるんじゃないかな。浄化魔法でしょう。でも、守りってい言ってたね」

「光魔法だもんね」

 ヒイラギのは、土の魔法。


 この後、ヒイラギとは、東京にみんなを招待しなくっちゃいけないという話になった。サラとアクアが異世界に慣れるためだ。そう言えば、ウィンディと和菓子を食べに行く約束してた。涼夏堂のあゆも誘って、和菓子を食べに行こうという話になった。

 それに、東京側で、サラが、タマゴをサーチできるかどうか試さないといけない。焦ってもしょうがないので、京爺待ちになった。

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