やっと妖精カフェに帰ってこれた
帰りは、サーヤも加わり、大人数になった。人魚は人の大きさ。メイドも3人付くので、本当に大人数だ。だけど、風竜のシップウは、平気みたい。長い首をサーヤに回して「任せろ」と、言っていた。
サイモンは、偉いことになったと、ターシャに、もうしばらく帰れないと伝言してくれと言っていた。ちょっとサイモンの気持ちが分かったかな。でも、私は、ターシャの味方。エリシウム山と妖精カフェは近いんだから。
今回、サーヤが謁見に行くことで、火龍王は、友好の意思を示すとして、戦争を先延ばしにする。この、京爺の提案と説得が、海王を動かした。愛娘を火龍王の龍王城に派遣する。両陣営とも戦争は、時期早々だと思っていた。海王も、そう、思っていたのだった。
「よう、あんたが、サーヤさんか、人魚なんだってな。シップウだ。ウィンディとは、マブダチだ」
「やあね。幼馴染よ」
シップウが、長い首を回しただけで、サーヤの前に尖った顔をずいと出した。メイドたちは、シップウに無礼者と言う顔をしたが、サーヤは、いたって大らか。
「シップウさんって、パグーいち早いのでしょう」
「任せろ、オレがみんなを守る」
「サーヤの帰りもでしょ」ウィンディが、シップウにかぶって話す。
「帰りもだ」
サーヤがクスッと笑って、とても嬉しそうな顔をした。サーヤの謁見は、リクシャンに会いに行くという名目なので非公式。非公式だけど、それ以上になりそう。サラもウィンディもアクアも、サーヤについて行く。
サラがサーヤを火龍王に紹介する。ウィンディが通訳。アクアは、サーヤと一緒で海の皇族として同行。京爺とサイモンも龍王城に行く。
私は、妖精カフェに帰って、ヒイラギとアンナとマスターに、火龍王のタマゴが盗まれた話をしなくてはいけない。それに、ガラスのハンカチの納期をトラングラー魔法学園のクリスタ先生に言って、1日延ばしてもらわなくてはいけない。
帰りがけ、サーヤが竪琴を披露してくれた。人魚と竪琴。物凄く似合う。私は、昨日から、こういう情景を目に焼き付けているだけ。本当は、すっごくスケッチしたい。絶対、服のデザインの良いヒントになる。だって、全部本物。
その日は、シップウのリュックの中で一泊した。翌朝、みんなを降ろしたシップウが、私を妖精カフェまで送ってくれた。
「また乗りたくなったら、いつでもいいな」
「ありがと、その時は、シュラの実をいっぱい摘んでくるね」
シップウは、シュラの実が大好物。
「待ってるぜー」
私は、手を振って、シップウを見送った。
「ただいまー」
やっと帰ってこれた
「千里君、お帰り」
「お帰り、ちさとー」
ヒイラギが出迎えてくれた。
あれ?
ヒイラギが、メイド服を着て、カフェになじんでいる。
「どうしたの?ヒイラギ。メイド服着てる」
「そううなんだ。今日から、正式に妖精カフェのウエイトレスだよ。昨日まで、よく手伝ってくれていたんだ」
マスターもやって来た。マスターは、妖精が一人増えて、カフェが妖精カフェらしくなったと喜んでいる。
「そうなんですか」
「千里の方が、ちょっとだけ先輩だね」
「でも学校は?こんなに急に。クリスタ先生が、よく許したね」
「昨日、親御さんが、トラングラー魔法学園に行って、正式に飛び級させたんだ。元々、その実力があったんだよ」
そう言えば、ヒイラギのお父さんとお母さんが、ずっと、カフェの隅にいたわ。
「ヒイラギ歓迎だよ。5日でも先輩は先輩だからね。それで、アンナさんは、東京側で準備中ですか」
「そうなんだ。それにしても、ウィンディは、どうしたんだい。サラとアクアも、ガラスの糸を紡がないといけないんだろ。赤夏と氷水晶の腕輪は、完成したよ」
「絹のハンカチも、完成したよ。見るでしょ」
「それがー」と、火龍王のタマゴが盗まれた話をした。ヒイラギが、慌てて、アンナを呼びに行く。ヒイラギも、次元門に慣れたみたい。私もだったけど、最初は、次元門の奈落の底を見て、めまいをおこしていた。
アンナは、同じエリシウム島の中の話だから、サイモンの奥さんのターシャ。ムシキングのデビットとナーシャも呼ぶと言って、使い魔を出した。
風のエレメンタルのシルフとラフォーレは、アンナにパイをご馳走してもらえると聞いて、張り切って森の大樹の上空にある3人の元に飛び立った。
アンナは、タクトを出して、振りながら、風の歌を歌う。するとどこからともなく風に乗って、タンポポの種の落下傘に捕まってラフォーレがやって来た。それを追うように、緑の葉っぱに乗ったシルフがアンナの前に降り立った。
「ラフォーレ楽しちゃってずるいー」
「たまたまだよ、シルフだってはっぱを見つけただろ」
「ごめんね二人とも、急ぎよ」
「アンナー」×2
二人ともとっても嬉しそうだ。アンナに呼ばれると、ケーキがタダで食べられる。
「今日は、何焼いたの」
「りんごパイよ」
二人とも、「やったー」と、大喜び。
「火龍王のタマゴが盗まれたの。ターシャとナーシャを呼びに行って。ついでにデビットも。それと、タマゴが盗まれた話は、誰にもしないで。そうしてくれたら、いっぱいパイを食べさせてあげる」
「分かった、約束だよ」
「すぐ呼びに行くね」
「アンナさん、デビットもついでって」
「ごめん、つい」
大樹の奥さんたちは、結束が固い。
「デビットがいると、虫族が、みんな助けてくれるんだ。千里は、琥珀のティアラを取って来なさい。ウィンディがいないから、デビットの声が聞き取れないかもしれないけど、頑張りなさい」
そうかーと思って、慌てて、魔法雑貨店がある二階に走った。虫の声は高音で聞き取りにくい。ましてや、話そうと思ったら、口ではその音を出せないので琥珀のティアラをつけて額から声を出す。




