戦争を止めるために
「あー、びっくりした」
「ちょっと京爺、ちゃんと説明して」
「私も」
「黒鉛の門って何?」
「おっ、お、いや」
みんなで詰め寄ったので、両手を前に出して、京爺がたじたじになった。
「皆さん、昆布茶を飲んでからにしませんか」
サーヤが、仲を取り持ってくれた。
サーヤを含めて、みんな、火龍王のタマゴが盗まれたことを聞かされた。それも、昨日会った、火龍王とリクシャン王妃の心痛を思って気が重くなった。
「それで、さっき、サーチしてたんだ」
「ごめんね。口止めされてたんだよ」
「水竜王様は、全部お見通しだったみたいだけどね」
「ええか、みんな。水竜王の予測によると、火龍王のタマゴは、千里の世界に隠された。これは、とてもありそうなことなんじゃ。黒鉛の門と言うのは、エリシウム山にある千里の世界と繋がっていた次元門じゃ。わしが閉じてしまったがな」
「私の世界に、タマゴを隠したの?」
「エリシウム山って、おじさまのお城がある山でしょう」
「そうじゃ。わしも、水竜王が言うように、千里の世界で、火龍王のタマゴを探せるのは、お前らしかおらんと思う。サラ、さっきは、アララテ海が見えたんじゃな」
「そうだよ」
「これは、みんなで、千里の世界に行くしかないわね」
「そうしましょう」
「ええか、レビアタン」
京爺がサラにそう言うと、サラの首にあるリボンのルビーの中の目が、キョロっと動いた。
ウィンディとアクアとサーヤが驚く。
「もう、大人しくしとらんでもいいぞ。どうせばればれじゃ」
― 話は聞いたが、わしの神通力は、パグーだからこそだろ。異世界で通用するとは思えん
「しかし、3人の後押しだけで、アララテ海じゃぞ。ヒイラギが加われば、千里の世界でも、それなりになるはづじゃ。戦争は、少し様子を見れないのか」
「今回のことは、わしの先走りからくるものだ。だから、少しは、先延ばしに出来るだろうが、これは、元々、行おうとしていることなのだ。だが、竜宮城にタマゴがないことは、分かった。タマゴは、サラに任せる」
「すまん、無理やり言わせて」
「リクシャンも、サラに任せる」
サラが頷く。
話が終わったと思ったサーヤが、火龍王に挨拶した。
「火龍王様、サーヤです。一度、火龍王様とリクシャン様にお会いしとうございます。よろしいでしょうか」
「海の大将軍の娘が、謁見にか。なんと豪気な。海王が良いと申すなら、我々に顔を見せてくだされ。リクシャンが喜ぶ」
「ありがとうございます」
京爺が釘をさした。
「すまん、サラのリボンのことは内緒じゃ。大騒ぎになる」
「水竜王様が、アクアの直訴を認めた件だけでは、謁見の話に飛躍できません。説得は難しいと思います」
「わしが付いて行くか」
サーヤは、京爺と連れだって、海王の所に行った。その後、ウィンディとアクアに、「もっと詳しく話しなさいよ」「そうですわ」と、詰め寄られて、隠していたことを謝り、全部話すことになった。