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交渉してみるものだ

今晩は、本日分の投稿でございます。

さて、本日やることですが、お嫁さんが増えたことを両親に伝えるべく手紙を書くことにしました。

もしかするとどこからかすでに情報が言っている可能性もあると思うけれど、ちゃんと伝えておかないとね。

しかし両親に改まって手紙を出したことなんて小学校の低学年以来無いような気がする、なんて書こうかな。いざ書こうとすると中々書き出せない。


「 うーん 」


やっぱり書き出しは 拝啓なのだろうか、お父様お母様? 父上母上?? 

なんか違和感が凄い、しかも照れる。


などと羊皮紙の前で悶えていたら、マーサが覗き込んできた。


「 リックぅ 何してるんだよぉ 」


肩越しに覗きながら顔を摺り寄せてくるのがとても可愛い。

あぁ良いお嫁さんを貰ったなぁ


「 うん、両親に手紙を書こうと思ってね。セオの事も伝えないといけないし 」


「 そっかぁ お母様に報告しないといけないよね 」


マーサはうちの母親には会っているけれど(?)、父ちゃんとはまだだしなぁ。いずれはエルフの国にも行かないといけないけれど、いつになることやら。


「 だからちょっと手紙書かせてね 」


「 うん、あたい良い子で見てる 」


そう言いながらじーっと手元を見たり、僕の顔を見つめるマーサ。

正直なところ若干やりにくいのだけれど・・・ まぁいいか。


しかし、セオのことをなんて説明したらいいのかな、素直に亜神だってことを告げてよい物やら。


『 構わないと思われます。ルーナリエ様のご性格からして隠しておいて後にバレた時の方が面倒かと思われます 』


『 そうだねぇ、素直に書いておこう。セオも加護持ちになったし、そのあたりの経緯も含めて報告しておこうか 』


僕は事実関係をなるべく簡潔にまとめて手紙に書くことにした、こんな短期間で嫁が二人も出来たし奴隷も引き取るしね、報告だけはきちんとしておかないと。


今日はあの犬族の女の子を引き取りに行くことにしているしね。

色々やることが多い、あの子にも洋服とか装備とか揃えてあげないといけないし・・・


「 あーーーーー 」


そんなことを考えていたら、とんでもないことに気が付いた。


「 ど、ど どうしたんだよぉ いきなり大声あげてぇ 」


すぐそばにいたマーサは一番驚いただろうけれど、ベッドに腰を掛けていたセオも、こっちを心配そうに見ている。


「 乗合馬車!! 」


「 乗合馬車がどうしたんだよぉ 」


いきなり単語だけ聞かされても分からないよね。


「 馬車の乗車予約は3人分しか入れてない。犬族の女の子が座れないんだよ 」


そうなのだ、あの時乗合馬車を予約した時に言われた。ちょうど僕ら3人で満員・・・ あの時はセオが居なかったので犬族の子を加えて3人で予約していたのだけれど。


「 座れないとどうなるんだよ まさか置いてくなんて言わないよね 」


マーサがひどく心配そうな顔で聞き返してくる。基本優しい子なので心配になってしまったようだ。


「 とりあえず、もう一人乗れるか聞いてくる。マーサもセオも小さいし詰めれば何とかなるかもしれないし、多少余分に払うとかすればきっと大丈夫だよ 」


「 私でしたら転移術で移動も出来ますので、馬車には乗らなくても大丈夫ですよ 」


セオからはそんな申し出があったけど、どうせならみんなで旅をしたいよね。その方が移動の間も楽しいしねきっと。


「 ありがとうセオ、どうしようもなかったらそうしてもらうかもしれないけれど、基本はみんな一緒に旅をしよう。せっかく家族になったばかりだしね 」


「 家族・・・  あい 嬉しゅうございます主様 」


セオがとても嬉しそうに微笑み、マーサもそれを見てニコニコしている。何かいいよね、こういうの。







そんなわけで二人には留守番をしてもらって、僕が駅家うまやへ行ってもう一人乗れないかを確認してくることに。

善は急げだし、女の子はすぐに出かける支度ってわけには行かないでしょ。






「 なんとかもう一人乗れませんか お願いします 」


駅家うまやに飛び込んで前回もいた職員の人に聞いたのだけど、やっぱり満員でしかも今回は出発が遅れていることもあって荷物が多いらしい。


「 うーん 困ったなぁ いくら連れの子たちが小さいって言っても子供じゃないしなぁ ずっと膝の上って訳にもいかないだろう 」


マーサにしろセオにしろ、膝の上に乗ってとお願いしたら喜んで乗っていそうだけど他のお客さんもいるしそういうわけにもいかないか。


「 そうですよねぇ 困ったなぁ 」


僕が考え込んでいるのを見た職員の人が突然聞いてきた。


「 なぁ兄ちゃんは、傭兵あがりだよな 」


「 はい、今は仕事を探しながら旅をしていますけど 」


身分証に書いてある情報なので予約の時に見せたし知っていてもおかしくは無い


「 今回出発が遅れた理由は知ってるよな 」


「 前回来た時にお聞きしましたけど 確かがけ崩れですよね 」


「 そうだ、そのがけ崩れの影響で道が変更になっててな、う回路は夜盗が出る可能性があるんだよ 」


町と町を結ぶ街道も場所によっては治安が悪いところも多い、中規模以上の隊商で有れば専門の護衛部隊を雇うことも多い上に商人自体が武装しているため中途半端な野盗では返り討ちに合うのが関の山だが。

乗合馬車程度では専門の護衛が付くことも無い、街道沿いであれば魔法による警備や守護もあるのだが臨時のう回路となると狙われる公算が高くなる。


「 護衛は雇わないのですか 」


「 いつもの御者なら腕も立つし問題ないのだけど、一人は前回に怪我をしちまったうえにもう一人は女房が産気づいているので動けないんだ 」


ようするに僕に護衛が出来るかってことかな。


「 僕で良ければ護衛のお役には立てますよ、魔法も使えますし。あとうちの嫁も魔法が使えます 」


マーサは口外出来ないけれど魔法使えるし、セオは魔法どころか亜神だしね。決して嘘は言ってない。


「 それは頼もしいな。普通の御者は居るし、いざとなれば逃走用の魔法は使えるし馬車には護りの魔法もかけてある、その上であんたらが居てくれれば大丈夫だろう 」


「 でも、僕の腕前も知らないのに大丈夫ですか 」


傭兵あがりといってもピンキリだろうしねぇ


「 あぁ心配してねぇよ、兄ちゃんそこの店で毛皮を売っただろう 」


「 はい、兎と狼とか売りました 」


旅の途中で狩をした獲物の毛皮を、すぐそばの店で売ってるのは確か。


「 あの店は、俺の女房にやらせてる店だ。毛皮を見たが獲物は弓だろ、しかも相当な強弓ごうきゅうかクロスボウだろう どうだ? 」


「 よく分かりますね、クロスボウです 」


「 まぁそうだろうな、あの小さな傷口でしかもどれも一撃となれば道具もそうだが腕もいいはずだ。もしくは高価な魔道具ってとこだがいくらなんでもそんな高価な魔道具を持ってるとは思えんしな 」


すみません、持ってます。エルフ女王の祝福つきです。


「 まぁ狩は必要に応じてやりますので盗賊程度なら遠距離から行動不能には出来るかと。あと刀も使いますので、護衛の役には立ちますよ 」


日本で有れば謙遜も必要だろうけど、ここでは謙遜なんてただの弱気にしかとられない出来る事は主張しないとね。


「 ほぉ、剣じゃなくて刀とはね、珍しいな 」


この世界でも数は少ないけれど刀は使われているようで、知っている人もそれなりにはいる。

日本刀の製法も伝わっているので、刀鍛冶が居る国もあるらしいよ。ちなみに僕の刀は毎日お手入れしてます、大事な武器だからね。




そのあと、色々と話したのだけど。相手をしてくれた職員さんも若い頃は傭兵だったらしい、戦争で怪我をして片足が不自由になったので故郷であるこの町に戻って来たらしい。

顔は少し怖いけど、話してみるとすごくいい人だった。ちなみに獣人に対する差別感情も無いみたい、マーサの事も褒めてくれてたしね。


そんなわけで、僕は護衛を兼ねるということで荷物と一緒に荷台へ乗ることで運賃は半額になって僕以外に3人乗車可能になりました。

これでセオとも一緒に移動できることになった。きっとみんな喜んでくれるでしょう。



嬉しい報告を持って宿へ帰ろうとして居た僕の前に、突然複数の人間が立ちふさがった。

明らかに僕を待ち構えていた様子であり、数名の男性からなる集団を無視して通り過ぎることも出来ない。


「 リック様ですね 」


「 何かご用でしょうか 」


僕としては警戒しつつもそう答えるしかできない。声を掛けてきた年配の男性は見たことがあるような気がするのだけれど・・・


僕が戸惑いつつも話しかけてきた年配の男性に視線を向けていると突然彼を筆頭として全員が地面にひれ伏した。


「 え、えええええ 」


日中の街中、それもそれなりに人通りのある道の真ん中で、突然男性の集団がひれ伏している光景って・・・

待ち伏せして、対峙している状態の時から遠巻きに見ていた町の人たちも唖然としている。



「 なんなんだ一体 」 「 あの兄ちゃん何者だ 」 ひそひそと囁かれる声、勘弁してくださいこっちが聞きたいです。


『 ご主人様、この者達は例の奴隷商人です 』


『 え、嘘。 だってこんなに年寄りだったっけ 』


ミーネのいう奴隷商人ってこの前変装して偵察に行った店の人でしょ、確かに言われれば顔に見覚えはあるけれど・・・


『 間違いなくあの時の商人です。他の者共も店の関係者や、マーサ様を酒場で凝視していた者です 』


『 えええ、だって白髪じゃなかったよ。それにあんなに痩せてなかったと思うけど 』


目の前の男性がミーネの言う通りあの商人と同一人物だとするのならば、2日で髪が真っ白になり痩せたということ?

まぁ髪の毛は染めていたのかも知れないけれど・・・


『 間違いなく、あの商人です。理由は不明ですが、この2日であのような状態になったのだと思われます 』


たった2日でそんなことってあるのかな、あまりのショックとか恐怖で一晩で髪の毛が真っ白になったとかって映画とか小説ならきいたことあるけれど。

でもミーネが間違っているとも考えられないしなぁ


『 あれ?でもなんで僕の事知ってるの? 前にあったときは電子魔法で姿を変えてたはずだよね、まさか魔法が失敗してこのままの姿で会ってたってこと 』


『 いえ、それはありません。また魔法を見破るほどの実力者でもありません 』


分からない・・・謎が多すぎるし、そもそも僕に何の用 ましてひれ伏される覚えなんか全くないのだけれど。


でもこのままだと、多分この人達ずっとこうしているよねきっと。


とりあえず顔を上げてもらって、話でも聞くしかないよね。


「 はぁ・・・ 」


気が付けば周囲は人だかり、そりゃあそうだよね

町の真ん中で若い男を前に、いい年をした男性が人目もはばからず集団でひれ伏している。


そりゃあ野次馬も集まりますよね。


ブックマークいただきまして本当にありがとうございます。感謝感謝の毎日でございます。

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