54 肉片サイコロ
無茶ぶりシリーズ、今回のお題は創作仲間の宮内ミヤビさんからです。
千字以内というお題もありました。文字数は951字でした。なんとかクリア。
「チンチロリンでイカサマをした奴の末路って知ってるか?」
彼は笑うでなく淡々と。
「二つのサイコロを目に潰して埋める」
話にあげられている男は震えながら許しを乞う。
彼は淡々と。
「残りの一つのサイコロは、どうするか、二十一個の穴をその糞野郎に開けて川に流す」
怖いよな、彼は同意を求め、男は震えて助けてを繰り返す。
蹴りが飛ぶ。男が転がる。
「怖いよな?」
「あ、が、は、はははい! こ、わい、こわいですこわい!」
「そんなお前にラッキーチャンス」
「は、はい、はい? え、えぇ、え?」
「もう一度チンチロリンで俺と勝負して勝てたら見逃してやるよ」
男は彼の意図がどういうものか分からず呆けたように口を開けていた。
彼の言葉を聞いて更にわからなくなる。
「お前が作るサイコロで勝負してやるよ、まぁ好きにすればいい」
それに関して否応はしない、彼の言葉を聞いて男は希望を見出した。
それも、すぐに散る徒花ではあった。
「お前の身体を削って作れ、それ以外は認めない」
そして彼はナイフを男に渡した。
同時に屈強なボディガードが彼の前に立つ。それによって男の取るべき道が決められてしまった。
受けなければ死ぬ、受ければ運が良くて死なない。
その差から男は葛藤した。
葛藤して左手の中指にナイフを置いた。
汗が噴き出る。痛みの想起が男を躊躇わせた。
そして、彼がダメ押しとばかりに言葉を投げる。
「俺の気が変わるまでにあと十分」
言葉によって男は眼をきつく閉じて歯を食いしばり――中指を落とした。
絶叫が迸る。痛みにあえぐ男は落ちた中指を懸命に探した。
中指はあった。
もう離れてしまった肉体を彼は躊躇なく捌いていく。失血の寒さと痛みの熱さになぶられながら。
「気を失ったようですね」
「まぁ、そうなるだろう」
彼はボディガードと話しながら結末を見た。
男は頑張ったほうだと彼は思う。大概指を切り落とすという選択にまでいかず、歯向かうというのが普通だ。
「このまま死なせてやりますか?」
「その方が世のためなのだがな、まぁ、活かしておけ」
「――よろしいのですか?」
「落とし前は十分につけた。あとはどこで死のうと生きようと自由だ」
もっとも、彼は言う。
「サマ師としての命は奪った、イカサマ野郎は死んだから、こいつは善良なお客だ」
またのご来店をお待ちしております、彼は呟いて男を放り出した。
お題提供者のミヤビさんの作品はこちらからどうぞ。
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ピエロこえぇ。この道化殺しにかかってきてるよw




