相棒
現状、リアルのほうが忙しいのとモチベーションの低下により無期限に投稿を休ませていただきます。
大変申し訳ございません。
「天羽先輩…張り込みあと何時間くらいですか…?」
「さっき時間聞いてから10分くらいしか経ってないよ。」
「ふぇ…。」
車通りの少ない民家の前をずっと見張っているだけ。
車は目立つので、道路にずっと立つしかない。
目を離してもいけない。
張り込みを始めて8時間。
足が痛い。
腰が痛い。
目が疲れる。
元気だった坂下も、疲れている様子だった。
「しかも、この張り込みほとんど無駄だしね。ほんと、笠原は何がしたいんだか。」
「捜査一課って大変ですね…。」
「三課はそうでもなかったの?」
「三課の担当は主に窃盗事件とかだったので…。こんな長時間張り込むなんてしなかったです。」
天羽のスマホに電話がかかってきた。
スマホの壁紙には天羽の妹、鈴の写真があった。
「あ、笠原からだ…。はい、もしもし。…あ、そうですか、わかりました。撤収します。」
「…何と?」
「証拠揃ったってよ。もちろん、この見張ってる人とは別の人のね。」
「ふぅ…じゃあ張り込みは終わりですか?」
「そうだね、帰るよ。」
天羽は自分の車のところに向かった。
坂下はふらふらな足取りで天羽についていった。
「はぁ〜…椅子って気持ちいいですね…!」
「初日から大変だね。やめたくなったらやめなよ。私もそっちの方が楽だから。」
「天羽先輩には申し訳ないですけど、私はそう簡単に夢を諦める気はないです!」
「こんな腐った職場にはもったいない心意気だね。」
天羽と坂下は車に乗り、警察本部に戻った。
「ただいま戻りましたー。」
「おい!天羽!」
天羽が事務所に入った瞬間、笠原に大きな声で呼ばれた。
「はぁ…何ですか?」
「あ?お前今ため息…」
「してないです。」
天羽は、笠原を睨んだ。
笠原は、少し怯んだ。
「ん?あ、あぁ…。」
笠原は、天羽を課長室に連れて行った。
「何の用ですか?」
「あのな、天羽、お前に関する事務所内の人間からのクレームが多数来てる。今までは目を瞑っていたが流石に見過ごせ無くなってきた。」
「結果は出してます。」
「それはそうだが…こっちはお前の変な噂も多数聞いてんだ。」
「知りません。私は事務所内の人間に何もしていないのですが。」
天羽は、興味なさそうに答えた。
「お前な…。まぁいい。とにかく、もう少し周りと協調しろ。前、白川を外した時も少し問題になったんだ。」
「それは私に結果を出さなくて良いとおっしゃってるということですか?」
「あのなぁ...。」
天羽が笠原に連れて行かれて、坂下は事務所で一人立ち尽くしていた。
坂下が周りを見渡していると突然声をかけられた。
「…坂下…さんだっけ?」
「あ、はい!こんにちは!」
「こんにちは。」
名札を見ると、『白川敦子』と書かれていた。
白川は顔の皺が多く、天羽よりも歳上そうだった。
「坂下さん…仕事、大丈夫だった?」
「はい!けど、流石に8時間立ちっぱなしはきつかったですけどね〜…!」
「いや、そうじゃなくて…。」
白川は坂下にだけ聞こえるひそひそ声で囁いた。
「…天羽さんのこと。」
「え?大丈夫って…天羽先輩が?特に何ともありませんけど…。」
坂下は、白川の発言に困惑した。
「天羽さん無愛想だし、何考えてるかわからないし、嫌味ばっか言うかもだけど…。私、いや天羽さん以外の刑事はあなたの味方だからね。」
「ちょ、ちょっと待ってください…!天羽先輩は普通の人ですよ!」
坂下は、白川の発言に違和感を感じた。
天羽は、確かに無愛想だ。
でも、悪い人じゃない。
むしろ、坂下は天羽を尊敬していた。
「そう言うのはいいから。ねぇ知ってる?天羽さん…実は捜査一課長とできてて、コネで捜査一課に入ったって噂。」
坂下は怒りが爆発しそうになった。
何を言っているんだ、この人は。
天羽が、コネで入った?
そんなわけない。
天羽は、実力で捜査一課に入ったんだ。
坂下は、白川に反論しようとした。
だが、突然白川は何かに気づいたかのように体をピクつかせて、坂下の元を離れた。
坂下が後ろを見ると天羽が近づいてきていた。
「ん?坂下、挨拶でもされてた?」
「あ、天羽先輩…!いや…あの人が…白川って人がいきなり天羽先輩のことを悪く言ってきて…!」
「あー、まぁいいよ。無視無視。時間の無駄だからね。」
天羽は横目で白川を睨みつけ、事務所を出ようとした。
白川は睨みつけられて、咄嗟に目を逸らした。
「あの人は何なんですか!?」
「私の元相方。私があいつを外したのをよく思ってないんじゃない?使えない自分が悪いのにね。私は白川に興味ないからいいけど、変な噂流したりするし、あんまあいつに変なことしない方がいいよ。」
「…!」
坂下は大きな足音を立て、白川の元へ向かった。
坂下はバン、と白川のデスクを叩き、口を開いた。
「白川さん!一つ言っておきます!」
「な、なによ。」
「私は、天羽先輩を心から尊敬しています!この意見が少数意見でも、私はこの気持ちを曲げることは絶対にしません!あなたの言う、天羽先輩以外の刑事全員が敵になるとしてもです!では!」
「は、はぁ!?ま、待ちなさい!」
「うるさいぞ!事務所内だぞ!」
白川が何か言い返そうとしたが、笠原の怒号に口をつぐんだ。
坂下の言葉は、事務所に響き渡っていた。
事務所内の刑事たち、全員が坂下を見た。
「何だあの新人…。」
「初日から早々に…。」
刑事たちは、ひそひそと話していた。
白川は顔を真っ赤にしていた。
坂下は言葉を吐き捨て、天羽のところに戻った。
「…坂下、私みたいに孤立して、有る事無い事言われたくないんだったら、今からでも謝ってきた方がいいよ。私のせいにしてもいいから。」
「私は曲げません!だっておかしくないですか!?」
「これが社会なんだよ。」
「私は捜査一課の刑事です!正義のために働いているんです!あんな女々しい奴になんか負けません!」
「ちょっと…!周りに聞こえてるって。」
事務所内にいた刑事が天羽と坂下のことを見ていた。
白川は新人に反抗されたので、虫の居所が悪い様子だった。
天羽は周りの様子を伺い、まずいと思って坂下を連れて事務所を離れ、廊下に出た。
「もう!あの白川って人何なんですか!」
「もういいって…。別に坂下のこと言われたわけじゃないんだから。」
「でも!自分の同僚の足を引っ張るようなこと許されていいはずがありません!」
坂下は事務所を出ても、白川のせいで腹が立っていた。
天羽には坂下が何で人のことでこんなに怒ってるのかわからなかった。
「はぁ…坂下、ここはこんなもんなんだよ。夢を持ってくるようなそんな大層な場所じゃない。」
「なら、私が変えます!天羽先輩と一緒に!」
「え?」
「この捜査一課で天羽先輩の実力を認めさせます!だったらコネで入ったなんて嘘つけなくなるでしょう!?」
天羽は笑った。
初めて見た天羽の笑顔に坂下は驚いた。
「え…?天羽先輩どうしたんですか?」
「いや…フフッ…いいね、坂下。」
「な、何ですかいきなり!?」
「私と一緒に捜査一課を変えてくれるんでしょ。楽しみだね。」
天羽は坂下の肩を叩いて歩き出した。
「どこに?」
「喫煙所。」
「お供します!」
「坂下吸わないでしょ。」
天羽と坂下は喫煙所に向かった。
喫煙所内には誰もおらず、煙の匂いだけが残っていた。
「天羽先輩、働くのは家族のためと言っていましたが旦那さんでもいるんですか?」
「いないよ。私にできるわけないし、いてもめんどくさいだけだし。」
「ではご両親?」
「両方死んだよ。交通事故でね。」
坂下は天羽の発言で口がぽかんとなり、気を取り戻したかと思うと頭を下げた。
「すいません!辛いことを…。」
「いいよいいよ。もう何年も昔の話だし。」
天羽は煙草に火をつけた。
「答え難かったらいいんですけど…。天羽先輩の家族とは…?」
「妹。まだ小学五年生でね。家には私と妹だけ。私は夜遅くまで仕事だから、寂しい思いさせちゃってるけどね。だからせめて、妹に不自由な生活はさせたくないんだ。」
天羽は口から煙を吐いた。
天羽は鈴のことを思い出した。
鈴はいつも一人で家にいる。
寂しいだろうな。
でも、天羽は仕事を休めない。
鈴のために、稼がなければならない。
坂下は目を輝かせて天羽を見ていた。
「天羽先輩…!素敵ですね…!あんな白川とか言うやつとは大違いです!」
「そりゃどうも。相当恨んでるね。」
天羽は少し笑った。
坂下はいい子だ、と天羽は思った。
天羽は煙草を吸い終わり、喫煙所を後にした。




