12 突然の悲報 2
「どういうことです!!」
あまりの騒がしさの為に部屋から出ようとしていたフィスティアの耳にも、伝令官の叫びに近い言付けが嫌でも耳に入って来た。その瞬間、バン!とフィスティアは部屋の扉を押し開いて常ならば絶対にしない様な早足で玄関ホールまでの階段を一気に駆け下りる。
「皇太子妃殿下!!直ぐに、直ぐに城へお戻り下さいませ!国王陛下がお倒れになったのです!!」
まさか…城を出立する前まであんなにお元気に政務に励んでおられたではないの?フィスティアは声も出ない…
「して、病状は…?」
「それが……分かりませぬ!命に関わる病などはありませんでした故、もしや、毒を盛られたのではないかとの声も上がっております…!」
「…!?」
一瞬にして、屋敷の中が小さな悲鳴と共に静まり返る………
「毒だと!!…暗殺か…!?して…王は!?」
「私が城から出る時にも未だ意識がないと……」
「なんと……言う事……!…聖女…!聖女の力を持つ者はどなたか側におられたのですか!?」
意識が戻らないくらいの昏睡とは……最早薬を飲ませるだけでは間に合わないだろう。
「…それが……毒、ならば毒消しの能のある方ならば、陛下のお側に侍女がお一人おりますが、何分各大臣方が集まっての会議中であったと聞いております…直ぐにお側に参ずる事が出来ましたかどうか…この目で見る前に皇太子殿下の命でこちらに参じましたので……」
「皇太子妃殿下!お支度をなされませ!ニーナ!護衛を集めよ!直ぐに出立するのだ!」
フィスティアは手が震えている…本来ならばこの様な時に王族を守る為に聖女の力を持った令嬢は王家に輿入れをするのだから…
役に立つこそが、聖女の力を持つ私達の存在意義なのに…!!
「……なんて事…………!」
今更悔やんでも致し方ないが、王城へと急ぎ向かう馬車の中で、フィスティアは必死に手を握りしめて心から祈る。
どうか、間に合います様に………!!
「大丈夫ですわ…妃殿下の輝きは本当に眩い事この上無いのですもの。何方にも引けを取りませぬ…!」
ニーナの必死の慰めの言葉もただただ今のフィスティアには耳を掠めていく風の音と同じにしか聞こえなかった。
私の聖女としての力があれば、陛下は助かる……!助ける事が出来る…!!
何度も何度も心の中でフィスティアは繰り返した。握り返したニーナの手の震えが止まる様に強く手に力を込めながら………