13 国王の崩御
どれ位の時間が経っただろうか?かなりスピードの速い馬車の中でお互いの手の感覚が無くなるほどフィスティアとニーナはずっと握りしめ合っていた。夕刻はとうに過ぎ去り辺りは真っ暗闇。時折月明かりが道を照らすが、今は不安が胸を占めているフィスティアにとっては闇夜を照らすその明かりさえも届かない…
早く……早く………
「皇太子妃殿下…!!城が見えました!」
永遠とも感じた時間が終わりを告げる…!
ばっと顔を上げたフィスティアの目に、松明に彩られた荘厳な懐かしい王城が映った。
「城からの連絡は無いのですか!」
泣き声に近い声を張り上げて、馬車に並走してくる騎士に声をかける。
「皇太子妃殿下!もう、城へ着きます!殿下が到着される事を先触れが城へと伝えておりましょう!直ぐに陛下の元へとご案内申し上げます!」
精悍な騎士の顔が、緊張と不安で更に強張っている。
あぁ、騎士であっても不安なのだ……国王あっての国だ…もしもの事を考えると、今更の様に背筋が凍る思いしかしない………
常であれば考えられないほどの猛スピードで城内に馬車が入っていく。一気に国王の側まで行くつもりか、城内にも通達があったのだろう。見廻の騎士さえも見当たらない。本宮の入り口の一つに松明を振っている騎士が合図を出している。あそこから入るのだろう。
「皇太子妃殿下!?……皇太子殿下!!お戻りになりました!!」
出迎えに来た騎士、侍女と共に医官と思しき者も数名。馬車の中のフィスティアを確認すると、直ぐ様騎士が城の中へ叫びながら走って行った。本来ならばこんな事無礼に当たる。貴人が乗っているであろう馬車の中を覗き込んでくるなんて事は。それだけ自体が逼迫している証拠だ。
「陛下!!国王はどちらに!?」
フィスティアとて礼儀作法云々を端折って自ら馬車の扉を開けて外に出てくる。
「こちらに御座います!お早く!!」
医官が先導し、フィスティアもニーナと共に後を追う。足が、震えて縺れそうになってくる。
陛下……!!
酷く寒々しい城の通路を走って行くその時、城に備えられている大鐘が重苦しく鳴り響いた。
ゴォーーン……ゴォーーン……ゴォーーン…
「……まさか!」
医官の口から短く悲鳴の様な声が上がった!
「何なのです?この鐘の音は?」
「お急ぎ下さいませ…皇太子妃殿下!お急ぎ下さいませ…!」
鐘の音が響き渡る中、一つの客間らしき所に行き着いた。部屋の外には大勢の重鎮達が部屋の中を覗き込む様な状態で取り巻きつつも皆頭を下げて敬意を示す礼を取っていた。
「…!?…皇太子妃殿下!」
医官の声と走り寄る足音で、その部屋に来たフィスティアに気が付いた重鎮の一人が声を上げた。部屋の前にいた重鎮達が扉の前から離れるとフィスティアは部屋の中へと走り込む。
「陛下!!ルワン様!陛下は!?」
走り込んで来たフィスティアとは逆に部屋の中にいた人々は時間が止まってしまったかの様で、誰一人として慌てて動いている者はいない……
「………フィスティア………間に合わなかったのだ………」
息を切らせて来たフィスティアの息遣いの他、シンと静まり返った部屋の中は重苦しく、絞り出す様に発せられた皇太子ルワンの声だけが響き渡っていた……




