2部 スペルブースト 編 5章 不幸な1日の始まり 1話
書き直しに次ぐ書き直しで時間が開きました。「6章 覚醒」執筆途中で大幅変更をしていました。
結局、朝から綾香に謝り続ける羽目になった。不幸中の幸いなのが家を出る8時まで時間が有った事で、汚れたシーツの洗濯やシャワーを浴びる位の時間が有った事ぐらいだ。
しかし、朝起きてから少しでも勉強しようと思っていた追試対策が全く出来無いどころか、アネットや能力の事やあの出来事の感覚で動揺してしまい完全に昨日やった試験勉強の事すら忘れてしまった。
学校に居る間の僅かな時間は真紗美から借りたノート試験範囲のヤマを張り、その部分だけを暗記した。
しかし、そうして張ったヤマは見事に外れ、そのままの勢いで追試2日目の教科が終わり、俺は頭を抱えていた。
さらに追試の日程は、午前中は皆と通常授業を受けた後の午後から追試試験を行う。
普通に試験を受けた連中は午前中迄で午後は部活などを行っていた。つまり、帰宅部なら半日授業だと言う事だ。
だから、追試と言っても期間中は十分な時間が無い上に試験問題が本試験の時と帰られていて山を張った問題が出なかった。
その為に一夜漬けで覚えた試験問題は全く役に立たず赤点すれすれになるのでは無いかと心配している程壊滅的な現状になっている。
以前の追試とは試験に時間制限はあったものの早く終われば次の試験問題に掛かれるのだが、学研都市では追試者の人数が多く先に試験を終わらせた者がまだ試験で残っている者へ不正が横行する。つまりカンニングが頻発する為追試でも本試験と同じく区切って行われ、その間は途中退席出来ない様になったそうだ。
「終わった・・・」
何故か渡邊一樹が追試を受けている。
「なんで渡邊が追試受けているんだよ」
「今日の追試の日本史だけ取りこぼしてな、だけどやべー、戦国じゃないから分からねーよ」
試験範囲は縄文時代から平安時代迄の範囲になっていた。
「お前が得意としている戦国時代もゲームからの知識だったら俺は心配してやるよ」
ゲームでも史実と大体合っているだろうが完全に一致とは行かない。
「その時はゲーム会社を訴えてやるわ」
渡邊は荷物をまとめ俺に「頑張れよー」と呑気に教室を出て行った。
今日の追試が終わり、残る明日の追試は数学2B、現代文、音楽の3科目、数学は何とかなるのだがダークホースは音楽になる。まあ音楽は捨てても良いだろう?楽器演奏や歌を歌う訳でも無く単なるペーパーテストなのだから分からなくても困らない・・・はず?
学校の帰りに一度ブルーバンド15支部へ立ち寄った。5月13日の12芒星魔法陣事件以来、11日ぶりになる。
「朝倉君お久しぶり、もう怪我は大丈夫なの?」
「ええ、ありがとうございます」
椅子に座ると藤井先輩が椅子から立ち上がり入り口から机に向かう俺に向かってのぞき込んできた。
「何でも随分大怪我したらしいけどホントに何とも無い?」
藤井先輩の大きな胸が迫ってくる。思わず椅子の背もたれに体重を掛け後ろに仰け反った。
「ホントに大丈夫ですって」
「麻未先輩の胸ばっか見てますよ」
浅野が相変わらず悪意に満ちた顔で冷やかした。
「もう、おっぱいが嫌いな男子なんて居ないわよ」
「先輩・・・それ、フォローになっていません」
苦笑いで藤井先輩の胸に言い返した。
「あら、ごめんなさいね」
藤井先輩も悪戯小僧の様な顔をして俺をからかった。
12芒星魔法陣事件の後、あちこちでテロが起きたが、学研都市都市設計理事会。通称「設計理事会」が事態の収拾に当たっている。
ブルーバンドこと風紀委員はその治安管理に従事する事になったそうだ。
「朝倉君はまだ明日も追試なんでしょ?」
「ええ、明日で最後ですけど」
藤井先輩の質問に答えた。
「そう言えば入院していたのでしたね」
「先週のテロで怪我をしたからな」
「それにしては怪我の痕が無い様に見えますけど」
「そりゃ学研都市の医療技術は最先端行ってるからな、再生医療も進んでいるから傷跡も綺麗に消えるだろう?」
「そりゃそうでしょうけど、傷がこんなに綺麗に消えるとは・・・ホントに怪我してたんですか?」
浅野は疑い半分、残り半分は不思議そうに俺を見ている。
「ああ、もうそりゃ酷い怪我をしたぞ、何しろオートマトンと戦ったんだからな」
「そんなの無理に決まってるでしょ、生身で機械に勝てる訳が無いじゃない」
「俺もそう思うよ」
普通なら戦闘用のオートマトンの装甲を貫ける訳が無い。しかし俺はそれを2機も破壊した。
「それで、どんな怪我したの?」
「うーん、胴体が真っ二つになったり、全身火傷を負ったり?」
「それ嘘!死ぬじゃない」
「それが死ななかったのです・・・」
本当になんで生きているのか不思議なくらいだ。
「でもさすがにそれは信じられないわね、本当はどうだったの」
藤井先輩もその時の状況を訪ねてきた。
「テロ事件の時に犯人と遭遇してそのまま戦闘に巻き込まれたのです。でもホントに大怪我したんですから」
「事件に巻き込まれた所までは分かったわ。でもそれって、能力なの?朝倉君は今までレベル0だったよね?」
藤井先輩は椅子に座ったまま脚を組み替えてこっちを向いた。あの日俺に起きた出来事が出来事だけに信じて貰えない。まあ、俺も未だに信じられないのだがその方が都合が良いのかも知れない。
「そのなんですが、どんな能力なのかは俺もよく分からないです。ただもしかしたら、なんか凄いかも知れない・・・そんな気がします」
言ってしまったものは仕方ないので本音を交えながら誤魔化す事にする。
「はっきりしないわねーそれなら調べて貰えば良いじゃない」
「それがそうとも言えない事が有って・・・」
「何?何か問題でも有るって言うの?」
「ええ、能力に関して何ですが、入院中に警察が取り調べに来て言ったんです。どうも余り公にするのは良くない能力かも知れないと」
シルビアが俺に言った事を伝えたつもりだが上手く言葉に出来ない。
「何なの?その言えない能力って?」
まあ当然のこうなる。
「多分、今後警察が俺の能力に付いて調べると思いますので、その・・・連絡を待っている所です」
本当に警察が俺の能力に付いて調べてくれるのかどうかは分からないが、こう言わないと収拾が付かない。
「まあいいわ、追試が終わったらどんな能力なのか調べて貰いなさい」
「そうですね、わかりました」
この件については一度、シルビアに訊いた方が良さそうだ。しかし、シルビアにはどうやって連絡を取るのだろう?連絡を取る手段が無い。
「お疲れさまでーす」
今日は休みと予定表に書いてあった久田が事務所へやって来た。
「あら真沙子ちゃん、どうしたの?今日は休みって聞いていたのに」
「あのー、今日、学校で変な噂を聞いたのでちょっと気になって」
「どんな噂?」
「それが・・・能力者狩りをしている人達が居るって話し何です」
「有り勝ちな話ね、どう言う話しか詳しく分かる?」
「ええ、何かデジタル魔術師が低レベルの能力者を魔法でボコボコにしているとか・・・。その程度の話し何ですけど、そこまでしか分かりません」
「先輩、これかも」
久田の話しからパソコンで検索を掛けていた浅野が検索結果を見せた。
「どれ?」
俺と藤井先輩は浅野が開いたパソコン画面を見た。どうやら匿名掲示板の書き込みの中に久田が言っていた事と一致する内容が書かれている。
「何これ?」
藤井先輩は思わず声を上げた。その内容は能力者全体を愚弄する書き込みで、『1人ずつ処刑してやった』みたいな事が書き込まれている。それも割と具体的に。
俺は直ぐ自分の机に戻り能力者の学生が怪我や病気で救急搬送された1週間分のリスト探した。
「確かにここ2週間程前からも成神中学の生徒が5人程怪我で救急搬送されていますね」
この数字だけでは何とも言えないが怪我の内容が火傷や骨折など、ちょっと異常だ。
「確かにこの重傷者が出てるのは気になるわね、他に何か情報は無いの?」
「私はここまでの話ししか知らないのです」
まあ成神中学の生徒では無く舞藤女子の中学に通っている久田がそこまで詳しい情報を持っている事は無いだろう。
「じゃあ、一度調べに行きましょう」
「先輩、何も今日で無くてもいいんじゃないですか」
俺は藤井先輩を制止しようと言った。
「でもね、今日は追試が無い人なら半日で終わりでしょ?時間が有ると悪い事をしたがるものなのよ」
何だか分かる様な気がする。
「じゃあ俺も行きます」
「朝倉君はまだ追試が有るでしょ?」
藤井先輩が訪ねる。
「でも、今日は先輩と浅野の2人ですよね?今は久田も居るけど・・・、相手が大人数だったら先輩でも荷が重いでしょ?」
藤井先輩は考えている。
「分かった。今日はお願いね」
「では行きましょう」




