1部 12芒星魔方陣 編 12章 プラザタウンの攻防 2話
俺は事務所を出ようと入り口に向かった所でドアが開き藤井先輩が入ってきた。
「大変な事に成ってきたわ」
藤井先輩は事務所に入るなり皆に向かって言った。
「さっき無線が入りました」
浅野と久田は誘導に必要な機材をロッカーから出して揃えている所だった。
「それにしても会議はもう終わりですか?まだ1時間も経って居ないですけど」
俺も飛び出す勢いそのままに藤井先輩に聞いてみた。
「爆弾騒ぎで会議は中止、私達は直ぐにその現場に急行する事に成ったのよ」
「プラザタウンのE-5ブロックで爆弾事件ですよね」
久田はおおよその準備を終わらせている。
「だけど、その前に昨日の12箇所の放火の目的が解ったわ、説明するから5分頂戴」
そう言うと、藤井先輩は直ぐにパソコンから、7箇所の放火現場とこれから起こるであろう5箇所の予測地点を表示した。
「これは、昨日のマップですよね?」
「そう、今日の会議で解った事なんだけど・・・」
キーボードを素早く叩く、そこから12箇所の地点を1つ飛ばしで線を引き6角形を2つ作った。
「これは?魔法陣?」
浅野が聞いた。
「そう、これは12芒星魔法陣っていうの、その目的は学研都市の破壊よ」
「破壊ってどうやって?」
俺は聞いた。こんな大規模な事をして、世界的に核軍縮を進めている中で核でも撃つつもりなのか?一部の国はそんな条約を無視して東京に核を落としたが・・・。
「これは、正確には結界なの、そしてこの領域に人も機械も入れ無くさせるの。だから実質的に、都市機能が失われる・・・だから学研都市の破壊なの」
「そんな事をしたら今都市に居る人達はどうなるのですか?」
「まだ、それは解らないらしいけど。術式の形状からこの中に居る人は全員蒸発か消えてしまうのが大筋の話みたいよ」
「それじゃあ、どうすればいいのよ」
久田が不安そうに聞く。
「それが、まだ決まってないわ2・3日中にその答えが出るわ。話はここまで、所で渡邊君は?」
「いま第2救急病院です」
久田が避難誘導の準備に取り掛かった。
「それと朝倉先輩の友達がその爆発に巻き込まれた見たいなんです」
浅野の準備が終わっていた。
「中野綾香さんの事ね」
「どうして、それを」
藤井先輩はその事を既に知っていた。
「学研警備隊から既に連絡は入っているわ、それじゃあ朝倉君は中野さんの病院へ行ってらっしゃい」
「はい、有り難うございます」
事務所を出ようとする俺に藤井先輩が呼び止めた。
「ああ、朝倉君、プラザタウンは今大騒ぎに成っているから迂回して行った方が早いわよ」
「分かりました、行ってきます」
俺は事務所を出て直ぐに第2救急病院へ走った。
プラザタウンのアーケード入り口には車が横転している。警察や学研警備隊がバリケートを張って通行を制限していて周りに沢山の人だかりが出来ていた。
「やっぱり、先輩の行ってた通りだな」
俺はプラザタウンの近くを走っている大通りから病院へ向かった。病院に着くと渡邊が入り口の待合所に呆然と座って居た。渡邊も頭にネット包帯を付けている
「渡邊!」
「ああ、朝倉か・・・悪かった」
「何が有った?」
「爆弾テロの犯人と接触したんだ」
「それは聞いてる。それより綾香はどうなったんだ」
「ああ、今から部屋に行く」
渡邊はふらふらと立ち上がり病室へ歩いて行く。俺はその後を付いていった。渡邊の怪我を見て俺は少し冷静になった。
「お前の怪我は大丈夫なのか?」
「俺はかすり傷だから大丈夫だよ」
「そうは言ってもお前、頭」
「ちょっと切っただけだから、それより中野が」
病室に着いた。入り口に『中野綾香』のプレートが有った。
「裕貴君」
病室に入ると真紗美が綾香のベッドの横に有る椅子に座って様子を見ていた。
綾香は意識が無いと言うより寝ている様に見える。顔に大きな絆創膏と両腕は包帯を巻いて点滴をしている。
「裕貴君、あっちゃんが・・・」
真紗美は今にも泣きそうな顔で訴えた。
「なんでって渡邊から聞いて来たんだが。それよりお前こそどうしてここに居るんだ?」
「偶然、現場に居合わせたのよ」
真紗美は椅子から立ち上がって俺の胸に顔を埋めた。俺は真紗美の両の肩を持って。
「とりあえず落ち着け」
真紗美は俺の胸に顔を埋めたまま泣き始めた。俺はそっと真紗美を抱きしめながら綾香を見ていた。
「畜生」
俺に怒りが湧いてきた。綾香ここんなにした野郎を見つけ出して痛めつけてやる。
真紗美は俺の服を握りしめたままじっとしていたが少し体を離して俺を見上げる視線に気付いて真紗美を見た。
「有り難う、裕貴君、ごめんなさいねあっちゃんの前でこんな・・・」
「仕方無いだろ、ちょっと落ち着いたか?」
「うん」
「朝倉、悪い」
渡邊が病室の外から廊下へ招いた。
「爆発の衝撃を押さえ込もうとしてあんな大火傷を負わせてしまった」
渡邊は廊下を歩きながら俺に申し訳なさそうに言う。
「それで、怪我は治るのか」
俺は渡邊に聞いた。渡邊は返事をしなかった。その時、女性看護士が部屋に入ってきて点滴を外していた。
「すみません、綾香の怪我は治るのですか?」
俺は看護士に聞いた。
「ええ、治りますよ火傷をしていますが、再生治療で痕も残らず綺麗に消えますよ」
「それは、どの位で治るのですか」
「火傷は表皮までの一度だったから、それに回復魔法を受けて居るから3日も有れば退院出来ますよ」
「そんなに早く?」
「ええ火傷の範囲は広いのだけど、再生皮膚を移植・・・と言っても火傷の患部に貼るだけですし」
「そうですか、良かった」
俺は胸をなで下ろした。看護士は点滴の器具を持って部屋を出て行った。
「渡邊、ちょっと良いか?」
「ああ」
俺は渡邊と一緒に部屋の外に有る休憩コーナーでベンチに座った。
「詳しい事情を教えてくれないか」
「ああ、分かった」
俺は自動販売機で缶コーヒーを2本買い1本を渡邊に渡した。
「俺は昨日の連続放火事件の事を聞いて上原と事件の予想地点を探していたんだ」
「上原って第20支部の?」
「ああ、大体の予想地点の的を絞った所に中野にばったり」
「出会った訳だ」
「だが、中野は既に黒い服を着た男に何か言っている様だったから俺が中野に声をかけたんだ」
「そういう所は綾香らしいな」
「そうしたら、その隙に男が逃げようとして綾香が追いかけたんだ。そうしたら男がいきなりマシンガンを発砲して」
「銃を隠し持っていたのか」
「ああ、おそらくPP-19 Bizonだと思う」
「俺はそこまで銃の名前は詳しくないが、マシンガンをそんな人通りの多い所でぶっ放して他に怪我人は出なかったのか?」
「それは中野が銃弾を止めたから被害は無かったのだが連続して閃光弾を投げてきて」
「それはさすがに爆風は防げても熱波までは綾香でも防ぎ切れなかった訳だな」
「ああ、俺と上原は男に麻酔弾を撃ったのだが、前に出た俺達をかばってこんな事に」
「それで、上原は?」
「警察へ事情聴取に行ってる」
俺は飲み干したコーヒーを缶を捨てて壁にもたれた。視線の先で時計が午後1時になろうとしていた。
「じゃあ、俺はその現場を見てくるよ」
「え?朝倉、お前何を」
「悪いけど、綾香が目を覚ましたら連絡をくれ」
「裕貴君」
俺は壁から体を起こした所に真紗美が呼び止めた。
「どうした?」
「私も・・・私と一緒に居た友達がその爆発の後犯人を追いかけたみたいなの」
「なんと言う無茶を・・・」
「だからお願い、その子を見たら止めて」
「その人の名前は?」
「岡本浩子さんよ」
「岡本?もしかしてデジタル魔法を使う子じゃない?」
「ええ、でもどうしてその事を?」
「一昨日の事故で怪我したとき治癒魔法を掛けて貰ったからな」
「そうなの・・・裕貴君、お願い出来る?」
「まあ、見付ければな」
「有り難う、裕貴君」
廊下の方へ2、3歩、歩いた。
「おい、ちょっと待て」
「俺は怒っている。放火事件が起こるおおよその場所と時間まで把握していながらこんな事態になった事を」
渡邊は黙っていたが静かに答えた。
「分かったよ、俺が中野をみているよ」
「有り難う」
「ああ、少し待ってくれ」
休憩コーナーを出ようとした俺を渡邊が引き留めた。
「何?」
「ヤツの名前は『伏羲』それから爆破行為は周囲の目を引きつける目的だったみたいだ」
「どういう事だ?」
「目的が他に有るって事だろう、俺が読み取れた事はここまでだった」
「サイコメトリー能力でか」
「ああ」
「分かった、有り難う」
俺はまずプラザタウンへ向かった。




