第16話 アイスといたずらなキス
「……あついね〜」
「ぴぃ」
「アイス日和? アイスはいつ食べてもおいしいでしょ」
誘拐事件から数日後の白陽学宮で。人がまばらになったカフェテリアでのこと。ルミとしまちゃんはアイスを食べていた。
「きゅい」
「お、今日はクレープアイスか」
たまたま通りかかったのか、フェルナンドとアンブルが二人を覗き込む。
「うん。お気に入り。フェルも食べる?」
「いいのかよ」
「もう一個あるから」
彼女は笑って氷に包まれたアイスをカバンから取り出した。
「二個買ってたのかよ」
「うん。おいしいもん」
「俺が通りかからなかったらどうするつもりだったんだ」
「その後は次の休み時間に食べる」
「溶けるだろ」
「私は氷魔法の使い手だよ?」
ルミはくすくす笑う。
「……もらってもいいか?」
「いいよ」
「ありがとな」
フェルナンドはアイスを受け取って、ルミと同じテーブルにつく。
「きゅい」
「アンブルも食うか?」
「きゅいきゅい」
「どんな味って? 冷たくて甘いぞ」
「そっか。アンブルは初体験か」
アンブルは「きゅい〜」と鳴きながらアイスをかじってみる。キュ、と目を閉じてひっくり返った。
「アンブル?」
「……きゅい」
「冷たすぎる? ただのアイスだぞ?」
「火竜だし、そこまで冷たいのはだめなのかも」
ルミはくすくす笑う。
「きゅい」
「え、もう一口? 冷たいぞ?」
「きゅいっ」
「びっくりしただけ? 美味しかった? ……そうかよ。ほい」
フェルナンドはアンブルの頭を撫でた。
「ゆっくり食えよ。頭痛になる……なるのか?」
「知らない」
「そうかよ」
彼は喉の奥でクツクツと笑った。
「アイス、おいしい?」
「きゅい」
「おいしいんだ。良かった」
フェルナンドは柔らかな笑みを浮かべるルミの唇に視線が吸い込まれる。
「……ルミ」
「ん?」
「ついてんぞ?」
「え、どこ?」
「ここ」
フェルナンドは彼女の唇に、自身のそれで触れた。ルミは一瞬だけきょとんとした表情を浮かべた。じわじわと顔が赤くなる。
「……ちょっと!」
「嫌だったか?」
「……そういうわけじゃないけど」
「ならいいじゃねえか」
「……フェルのバカ」
ルミは思わず顔を背ける。
「まだついてるぞ」
「……自分で取る!」
彼女は唇を尖らせる。フェルナンドはにやにや笑いながら「女王サマ、ご機嫌斜めですか?」とからかった。
これで完結です。読んでくださりありがとうございました。評価、いいね、ブックマークをしてくださると励みになります。
次作(2026/8/7投稿)→https://ncode.syosetu.com/n4402mm/




