第1話 アイスが好きな氷姫
常夏の帝国、ヴァイデソル帝国にある白陽学宮にて。照りつける日差しを避けるように、ルミは中庭にある日陰のベンチでソフトクリームを食べていた。使い魔のしまちゃんも一緒だ。
「あついね〜」
「ぴぃ……」
しまちゃんも羽を広げ、ぐったりと溶けている。生ぬるい風が頬を撫でたときだった。
「だーれだ」
冷たい手で目元が覆われる。ルミは笑いながら「フェル」と答える。
「あたり」
ベンチの背もたれ越しに顔を出したのはフェルナンドだった。
「びっくりした」
「そうか? 悪かったな」
「……手、冷たくない?」
「おう。冷やしてみた」
「……過保護」
ルミはクスクスと笑う。フェルナンドは彼女の持つソフトクリームに目を向けた。
「それ、新作?」
「うん。キャラメルマキアート味。最後の一個だった」
「ラッキーじゃん」
「一口食べる?」
「いいのかよ」
ルミはそう言いながらフェルナンドにアイスを差し出す。彼は少し視線を彷徨わせ、耳をほんのりと赤くしてそれを一口かじった。
「……あっま」
「でしょ。美味しいよね」
「コーヒーだからもっと苦いかと思った」
「ぴちぴ」
「しまちゃんも食べたい? 仕方ないなぁ」
今度はしまちゃんの方へアイスを向けた。しまちゃんは美味しそうにアイスを啄んだ。
「……そういえば、しまちゃんの言葉はなんか分かるな」
「フェルは竜と波長が合いやすいのかも」
「……竜?」
「しまちゃん、氷龍の眷属だから」
フェルナンドの目はまん丸に見開かれる。
「……シマエナガ、じゃねえの?」
「見た目だけ。シマエナガはアイス食べないよ」
「確かにそうだけど」
「あと一年中真っ白じゃないし」
「……そうなのか」
「あとイルヴェリアにシマエナガいないし」
「まじかよ」
軽く笑ったフェルナンドは、小さくあくびをする。
「……悪い」
「眠い?」
「寝てんだけどな……。なんか、寝た気がしなくて」
彼はゆっくりとまばたきをした。あくびが漏れる。
「暑いもんね。寝苦しい?」
「これぐらいの暑さ、うちじゃ暑いうちにも入らねえ」
「30度なのに?」
「たかだか30度だろ」
フェルナンドは背もたれに背を預ける。
「……寝たら?」
「そうするわ。先に寮戻っとけ。暑いだろ」
「考えとく」
彼は目を閉じる。すぐに呼吸が寝息に変わる。ルミはくすりと笑い、そっと彼の頭を膝へ導いた。その時だった。
「きゅい」
彼のお腹の上に、一匹の小さな竜が舞い降りた。
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