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ネザーワールド リヴァイヴ(冥界蘇生) 1~絶望の未来を書き換えろ。地獄還りの少年が挑む、禁断のタイムリープ戦記!~  作者: たくみふじ
第四章 神々の選択

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狂乱の螺旋と、反逆の塔㈡

千年の地獄を耐え抜いた魂が、神々に抗い『陽だまり』の日常を守る!

「殺せ」


 パペットの冷淡な命令。


 ウオオオオオオッ!! 


 黒い軍団が、津波のように押し寄せてくる。武器は持っていない。だが、数百人が体重をかけて圧殺しにくる恐怖は、銃弾以上だ。


「ソラ! 吹き飛ばして!」


 ひかりが叫ぶ。


「で、でも……こんなに大勢、手加減なんてできない! 怪我させちゃう!」


 ソラが躊躇する。その迷いが、致命的な隙を生む。先頭の学生たちが、ソラに掴みかかる。


「きゃっ!」


「ソラ!」


 カイが助けに入ろうとするが、彼もまた、十数人の学生に取り押さえられそうになる。殴るわけにはいかない。彼らは被害者だ。だが、このままでは押しつぶされる。


(……くそっ! どうすれば……!)


 その時。


 カッ! 


 強烈な閃光(フラッシュ)が、ホール全体を白く染め上げた。


「うわあっ!」


 学生たちが、目を覆ってひるむ。その光源は、ひかりが掲げたスマートフォンと、彼女が即席で改造した強力なLEDライトだった。


「今よ! スプリンクラー、作動!」


 ひかりがタブレットを叩く。彼女は、移動中に本部棟の防災システムにハッキングを仕掛けていたのだ。


 プシュウウウウウッ! 


 天井のスプリンクラーが一斉に開放され、大量の水がホールに降り注ぐ。ただの水ではない。消火用の薬剤が混ざった水は、視界を奪い、床を滑りやすくする。統率されていた黒い軍団が、足元をすくわれて次々と転倒し、ドミノ倒しのように崩れていく。


「なっ……!?」


 パペットが狼狽する。


「今だ! 駆け抜けるぞ!」


 カイが叫ぶ。混乱する集団の上を、クロが背中にソラを乗せて跳躍する。カイはひかりの手を引き、転がる学生たちの隙間を縫って、大階段へと走った。


「おのれ……! 追え! 殺せ!」


 パペットが絶叫するが、ずぶ濡れになり折り重なった学生たちは、すぐには立ち上がれない。カイたちは、一気に二階、三階へと駆け上がった。

 だが、試練は終わらない。上層階へ行くほど、空気中の瘴気(しょうき)は濃くなり、物理法則さえも歪み始める。四階の廊下。そこは、無限に続く迷宮になっていた。走っても走っても、同じ景色が繰り返される。階段が見つからない。


空間歪曲(わいきょく)……。ナエの結界か」


 カイが舌打ちをする。「悲観」の番人、ナエ。以前戦った彼女が、このフロアを守っているのだ。


『無駄よ……。あなたたちは、永遠にここに閉じ込められる。出口なんてない。希望なんてない……』


 湿っぽい女の声が、壁の中から、天井から、まとわりつくように響く。ソラが、その場にへたり込みそうになる。


「……もう、疲れた。歩けない……」


 精神的な疲労感が、物理的な重さとなってのしかかる。ナエの言葉は、心の弱みに付け込み、生きる気力を奪う呪いだ。ひかりも、膝をついた。


「……私なんて、やっぱり足手まとい……」


 ネガティブな思考が連鎖する。


「違う!」


 カイが叫んだ。彼自身の体も鉛のように重いが、魂の炎だけは消していない。


「これは幻覚だ! 耳を貸すな!」


 カイは、自分の指を噛み切り、その痛みで意識を覚醒させた。そして、目を閉じ、心の目で「正しい道」を探る。言霊の力は使えない。ここで使えば、自分の精神力が尽きてしまう。ならば、頼るべきは。


「クロ! 鼻だ! 奴の『本体』の匂いを嗅ぎ分けろ!」


「わん! (任せろ!)」


 クロが、床に鼻を擦り付ける。視覚も聴覚も騙せても、死神特有の腐臭までは誤魔化せない。クロは、何もない壁に向かって吠えた。


「そこか!」


 カイが、壁に向かって拳を突き出す。物理的な壁ではない。空間の裂け目だ。ドォン! カイの拳が空を切った瞬間、ガラスが割れるような音と共に、無限回廊の幻影が砕け散った。目の前に現れたのは、上へと続く階段と、驚愕に目を見開いて立ち尽くす、陰気な女――ナエの姿だった。


「見つけたぞ」


 カイの冷徹な声に、ナエは悲鳴を上げて影の中へと逃げ去った。精神攻撃しか能のない彼女は、正体を見破られれば(もろ)い。

 五階、六階、七階。階を上がるごとに、待ち受ける敵は強力になった。「激痛」の番人ザンが仕掛けるトラップ。改造された強化学生たちによる肉弾戦。カイたちは、ボロボロになりながらも、決して止まらなかった。カイが前衛で攻撃を受け止め、ソラが念動力で道を切り開き、クロが遊撃手として敵を撹乱し、ひかりが最短ルートを解析する。誰一人欠けても、ここまでたどり着くことはできなかっただろう。

 そして、ついに彼らは最上階、時計塔の前にたどり着いた。巨大な両開きの扉。その向こうに、元凶(げんきょう)がいる。


「……はぁ、はぁ……。ついた……」


 ソラが、肩で息をする。制服は破れ、腕には擦り傷が無数にある。クロも、片足を引きずっている。ひかりは、眼鏡にヒビが入りながらも、気丈に顔を上げた。


「この扉の向こう……エネルギー反応が最大値を超えてる。スサノオがいるわ」


 カイは、扉に手をかけた。その手は、震えていなかった。千年の地獄、幾多の戦い、そして仲間との絆。全てが、今の彼を支えている。


「行こう。これで、終わらせる」


 ギギギギギ……。重厚な扉が、ゆっくりと開かれる。中から溢れ出したのは、目が眩むほどの黄金の光と、肌を刺すような神気。そこは、学長室ではなかった。空間が拡張され、星々が瞬く宇宙空間のような異界が広がっていた。そして、その中央に浮かぶ玉座に、黒いスーツの男――鬼塚が、優雅に足を組んで座っていた。いや、その姿は、見る見るうちに変貌していく。スーツが弾け飛び、荒々しい神の衣へ。白髪交じりの髪は、炎のように逆立つ長髪へ。素戔嗚尊(スサノオ)。荒ぶる神の、真の姿がそこにあった。


「よく来たな、人の子らよ」


 スサノオの声が、宇宙空間に朗々と響き渡る。


「我が遊戯盤の最奥までたどり着いた褒美だ。……神の力の一端、その身に刻んで逝くがよい」


 最終決戦の火蓋が、今、切って落とされた。

X(Twitter)でも連載しています。

https://x.com/TakumiFuji2025

魅力的なキャラクターたちが躍動する物語をお楽しみください。

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