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ネザーワールド リヴァイヴ(冥界蘇生) 1~絶望の未来を書き換えろ。地獄還りの少年が挑む、禁断のタイムリープ戦記!~  作者: たくみふじ
第三章 絆の在り処

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天逆鉾(あまのさかほこ)の神意と、言霊による創世㈠

千年の地獄を耐え抜いた魂が、神々に抗い『陽だまり』の日常を守る!

 世界が、悲鳴を上げていた。

 住宅街を貫くアスファルトの道路が、まるで生き物のようにうねり、裂け、その傷口から赤黒い蒸気を吐き出している。街路樹は枯れ落ちるどころか、瞬時に炭化して崩れ去り、鉄筋コンクリートの家屋が、見えない巨人の手で握りつぶされたかのようにひしゃげていく。上空を覆う紫色の雷雲から、絶え間なく降り注ぐ「黒い雨」。それが触れた場所から、物質の強度が失われ、溶け出していくのだ。物理法則が崩壊している。これが、荒ぶる神・スサノオが送り込んだ「荒魂(あらみたま)」の力。自然現象そのものを災厄(さいやく)へと書き換える、理不尽な神の暴力だった。


「ッ……! キリがないわね!」


 ソラが叫び、両手を頭上に掲げた。崩落しかけたマンションの瓦礫を、不可視の念動力(サイコキネシス)で空中に固定する。その下では、逃げ遅れた親子が恐怖に震えて抱き合っていた。


「早く! あっちのシェルターへ!」


 ソラが叫ぶと、親子は弾かれたように走り出した。だが、その背後に、アスファルトの裂け目から這い出した異形が迫る。泥とヘドロが混じり合ったような不定形の怪物。荒魂の尖兵(せんぺい)だ。


「させぬ!」


 雷鳴と共に、金色の閃光が走った。黒い豆柴から変身した「雷狼(らいろう)」――クロだ。トラックほどの大きさになった巨体で、雷を(まと)った牙を怪物の核に突き立てる。


バチバチバチッ! 


 高電圧が怪物を内側から焼き尽くし、瞬時に蒸発させた。


『ソラ、無理をするな! 守る範囲が広すぎる!』


 クロの念話が響く。


「分かってる! でも、見捨てられないじゃない!」


 ソラの額から、玉のような汗が滴り落ちる。彼女の念動力は強力だが、街全体を覆う災害の前では、あまりにも手が足りない。

 その戦場の中心を、カイは疾走していた。彼の感覚は、極限まで研ぎ澄まされていた。悲鳴、爆発音、雷鳴。それら全ての轟音が、彼の耳には遠く、スローモーションのように感じられる。彼の意識は、ただ一点。この混沌の中心核(コア)にいる、元凶の気配に向けられていた。


(……見つけた)


 交差点の中央。空間が歪み、そこだけ重力が異常に強くなっている場所。そこに、彼らはいた。


「ハハハハハ! 見ろ、この絶景を! 人間どもの築き上げた文明など、神の息吹の前では砂上の楼閣(ろうかく)に過ぎん!」


 宙に浮き、狂喜の笑い声を上げているのは、死神ヤミだった。だが、その姿は以前とは異なっていた。漆黒の死神の衣の上に、神々しくも禍々しい、黄金の鎧を纏っている。スサノオから与えられた、神の加護だ。そして、彼の手には、一本の異様な槍が握られていた。三叉(さんさ)に分かれた黒い穂先から、赤紫色の稲妻を撒き散らす、禁断の神具。「天逆鉾(あまのさかほこ)」の写し。あらゆる(ことわり)を逆転させ、秩序を混沌(こんとん)へと変える、反逆の象徴。

 ヤミの周囲には、無数の荒魂(あらたま)が渦を巻いている。それらは互いに喰らい合い、融合し、一つの巨大な影を形成しつつあった。


「ヤミ!」


 カイが叫ぶ。ヤミは、ゆっくりとカイを見下ろした。その瞳は、与えられた強大すぎる力に酔いしれ、もはや正気を失いかけていた。


「来たか、カイ。遅かったな。宴はもう、クライマックスだ」


 ヤミが天逆鉾を振るう。それだけで、衝撃波が発生し、周囲のビルがガラスを飛散させて吹き飛んだ。


「貴様らの魂を狩るだけでは、スサノオ様への手土産に足りん。この街ごと、生贄(いけにえ)に捧げさせてもらう!」


「ふざけるな!」


 追いついたソラが、瓦礫の塊をヤミに向けて射出する。だが、ヤミは一瞥もしない。彼を守るように、融合した荒魂が立ちはだかったのだ。全長三十メートルを超える、嵐の巨人。風と水、そして瓦礫で構成されたその体は、物理攻撃を一切受け付けない。ソラの放った瓦礫は、巨人の体内に飲み込まれ、そのまま彼の一部となってしまった。


「無駄だ。これは『災厄』そのもの。人間の小娘ごときが、どうこうできる相手ではない」


 巨人が腕を振り上げる。それは、質量を持った暴風だった。


 ゴオオオオッ! 


 叩きつけられた一撃が、ソラとクロを吹き飛ばす。


「きゃあああっ!」


「グオッ……!」


 二人は数百メートル後方の公園まで弾き飛ばされ、地面にクレーターを作って倒れ込んだ。


「ソラ! クロ!」


 カイが悲痛な声を上げる。


「次は貴様だ、カイ」


 ヤミが、天逆鉾の切っ先をカイに向けた。


「その魂に宿る『虚無』。スサノオ様が危惧するその力、ここで完膚なきまでに叩き潰し、我が糧としてくれるわ!」


 ヤミの号令と共に、嵐の巨人がカイに向かって踏み出した。その一歩だけで、地面が割れ、衝撃で近くの車が宙に舞う。逃げ場はない。カイは、歯を食いしばり、両手を前に突き出した。


(……僕の力は、虚無。全てを無に帰す力。なら、この嵐だって……!)


 彼は、体内の奥底にある、冷たい泉のような力の源泉に意識を潜らせた。消えろ。無くなれ。全てのエネルギーを否定する、絶対零度の波動を放つ。

 だが。巨人の体に触れたカイの「虚無」は、弾かれた。


「無駄だと言ったはずだ!」


 ヤミが嘲笑う。


「天逆鉾の力は『理の逆転』! 貴様の『無にする力』は、逆転され、『存在を確定させる力』へと変換される! 貴様が否定すればするほど、この災厄はより強固に、より現実に根を張るのだ!」


 なんと悪辣(あくらつ)な相性か。カイの力が、敵を利する結果になってしまう。巨人の拳が、カイの頭上から迫る。避けられない。カイは腕をクロスさせ、防御姿勢を取った。


 ドォォォォン!! 


 凄まじい衝撃。全身の骨がきしむ音が聞こえた。カイの体は、枯れ葉のように吹き飛び、瓦礫の山に叩きつけられた。


「ガハッ……!」


 口から鮮血が噴き出す。視界が赤い。痛い。熱い。だが、それ以上に、絶望感が心を蝕む。勝てない。神の力を得たヤミには、僕の力は通じない。


(……ここまで、なのか……)


 薄れゆく意識の中で、カイは、泣き叫ぶ人々の声を聞いた。燃える街。傷ついた姉。倒れたクロ。そして、遠く離れた場所で、必死にサポートを続けているひかりの声。


『カイくん! 立って! まだ終わってない!』

X(Twitter)でも連載しています。

https://x.com/TakumiFuji2025

魅力的なキャラクターたちが躍動する物語をお楽しみください。

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