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93 作戦会議

「ふーっ。これでなんとかなりました」


 残った金額1兆Gを2億コインに変えて念願のプリズム・オーロラ装備を入手した。

 ジーカちゃんはプリズムメイルもオーロラレインボーも装備できないようだったので、足りなかった8000万メダル分を課金してとうとう4人分の入手に成功した。

 現在5998億G。元が兆だったことを考えたら大幅マイナスだが、それでも来た時(1700億G)よりは倍以上増えている。

 金のなる農園、恐るべし。

 長らくお世話になってきた龍のレオタードとはおさらばし、遂にレインボーな輝きを纏うことに成功した。

 苦難あっての虹色だ。ここまで長かった。

 オーロラレインボーとは、名前の通りオーロラのようなスカート生地で色が虹色のドレスだ。

 羽のように軽くて薄い素材なのに、並の鎧よりも防御力が高く耐性もあるなんて天女の衣みたいだ。

 これでもう私を脅かすものはいない。

 状態異常耐性を貫通してくる攻撃なんて精々裏ボスくらいしかやらない。

 これが現段階での最強防具だ。テンションがあがる。

 プリズムメイルも重そうな見た目の割に魔法使い職のレイブンさんまで装備できる。

 みんな一面プリズムとレインボーの光に満ちて眩しい。

 準備は万端。いつでも敵さん来いって感じだ。


「……それで、集めて情報というのは」


 カジノ裏のお金持ち御用達の宿(1人1泊1000G)の高級ルームにて、私たちは今晩の成果について話し合っていた。


「カジノ客や接客の時に小耳に挟んだ話なんだがよ。もうじきマギアージュは本格的な魔導国家として動き出すんだとよ。そのために今国民全体の魔法力調査とか盛んに行ってるらしいぜ」


 魔力の無い人間はどうなるかというと、高い納税を義務付けられ居住を許されるか、払えなければ追い出されるかの二択らしい。

 魔力の高いものは国家の兵士としてスカウトされることもあるそうだ。

 そこまでの不遇・高待遇をはっきりと分けているのには理由があった。


「なんでも戦争に乗り出すんじゃねぇかって話だ。マギアージュは魔法こそ絶対な国家だからと魔法に頼った侵略行為を繰り返して領土を広げていたんだが、近年武力で対抗する勢力が台頭してきたらしく以前のようにはうまくいかなくなってんだ」


「おまけにここ数年で魔力が段々弱まり続けている傾向にあるらしいんだ。だから生まれつき高い魔力を持った人間を集めて魔導騎兵団を結成していたり、国としての戦力を欲しているのさ」


「なんで戦争なんかするんでしょうか……もうマギアージュはこんなにも大きくなってるのに」


「元々この国の王は欲の強いやつでな。まぁそれがカジノ運営にも繋がってるんだが、その傾向は新しく女王が就任してからより強くなったみたいだぜ」


 10年前、マギアージュの発展に大きく貢献したマギア王は歳もあって引退し、代わって彼の妻であるザロスが王の地位に着いたという。

 彼女は軍事戦争について夫よりも知と精があり、数年で魔法大国としての確固たる地位を築いたらしい。


「がるがんどらと似たよーなもんでやがります。どーせその女王が王をぶっ殺して政権交代したに違いねーです」


「いや、国王は少なくとも存命だ。実権を握られてるって意味じゃジーカのとこと同じかもしれねぇけどな」


 国民は誰もザロス夫人には勝てないそうだ。

 ザロスに逆らったものは二度と日の目を見られないらしい。

 噂によればこの戦争が終結すれば、次に狙うのは龍人大国ガルガンドラだったそうだ。

 属性魔法に耐性のある龍人相手では、非力な魔導士では手も足も出ないだろう。

 特にログレスはグレイズから闇の力を借りていたわけだし。

 しかし、そう考えるとタイミングは良かったと思う。

 下手したら一触即発の戦争の真っ只中に参列していた可能性があったのだ。

 ガルガンドラの方も西が東だ言ってられる状況ではなくなったろう。

 この状態じゃオーブが貰えるかは大分怪しくなってきた。


「先代国王はオレがガキの時から王だったが、金遣いは荒くてもケチな男ではなかったな。むしろ喜んで交換に応じてくれたろうさ」


「交換?」


「財を手放すなら、より価値のある新たな財をってのが国王の信条でな、俺もよく金のスプーンと宝石なんかを交換してもらったもんだ」

 ハナシ聞く限りじゃ女王どのはそんな交換にも聞き耳立ててくれそうには思えねーがな――マックスさんは乾いた笑みでそう言った。


「どうやって近づこうか」


「ん〜わかんにゃい」


 レイブンさんはお手上げのポーズを取っていた。

 たしかにわからない。

 今近づくのはむしろ危険な印象さえある。

 戦士などを目の敵にしているのなら、マックスさんやジーカちゃんなんかは当然出禁だし、下手したら勇者さんでさえ追い返させる可能性がある。

 運良く入れたとしても、オーブを欲していると分かれば賊として捕らえられて反逆者の烙印を押されるかもしれない。

 そうなればまたまた戦争だ。

 この国でもグレイズが糸を引いている可能性もあり得るし、今は慎重になる他ない。

 しかしそうなるとどうやってお城に入り込んでオーブをいただこうか。


「盗んじまいましょうです」


「そんなことしたら全員殺されちゃいますよ!」


「正面から行っても同じなら手っ取り早く盗みゃいいです」


「そういう真っ直ぐ過ぎるところ、嫌いじゃないんだがな」


 マックスさんはジーカちゃんの頭をわしゃわしゃやった。

 嫌がってジーカちゃんは首を振っていた。

 何も答えらしい答えを出せないまま、私たちは今晩の会議を終了し各々個室に戻っていった。

 ふかふかの高級ベッドの上で寝ながら、私は明日のことを考えた。


 何か良い方法があればいいんだけど――。

 戦争前ということもあってピリピリしてるだろうし、やっぱり難しいのかもしれない。

 というか戦争を止めることができるんだろうか。

 ゲームでもなんか戦争自体は始まってしまって、その中に私たちが参加するんだったような。


 そうだ。

 魔法使いの兵士として志願して、そのまま内部に入っちゃえばいいんだ。

 説得は無理にしても、優秀な兵士なら話くらいは聞いてもらえるかもしれない。

 早速明日その事をみんなに提案してみよう。

 不気味に赤く揺らめく月の光を背に受け、私はまどろみの中に落ちていった。

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