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83 私、お使いです!?④

「か、間一髪だったな……ミランダ」


「は、はいありがとうございますスラッシュさん……」


 私はすんでのところで彼の手を掴み、なんとか火口に落下せずに済んだ。

 あ、危ねぇえええーっ‼︎

 もう少しで白骨死体ミランダさんがローストされちゃってたよ。

 焼き過ぎ丸焦げローストミランダさんが出来上がるところだった。

 というか、こんだけ危険な地帯にある土なんか絶対常人に持ってこれないだろ。

 あの魔法使いのお姉さん一体どうなってるんだ。

 無事引き上げられた私は賢者の土壌を袋に詰めて、下山に向けて出発しようとした。


「おい待たねぇかそこのガキども!」


 突然老人の怒鳴り声が聞こえてきたので、私はギョッとした。

 振り返って後ろを見ても誰もいない。

 スラッシュくんたちの顔を見ても首を横に振るばかりだ。


「違う違う。そこじゃねーほら下だ下!」


 ようやく声のする火口の奥底に目を向けてみると、なんとそこには白髪の老人が上半身裸でマグマの湯に浸かっていた。

 一瞬何かの合成映像かバグを疑った我が目ではあるが、何度擦っても結果が変わらなかったため、どうやらこれは現実であると認識した。


 いや。


「ええええええっ⁉︎ な、なんでそんなところに人間が!」


「おいコラガキどもめ。お前たち自分が何をしてくれたかわかってんのか?」


 なにやらキレ気味のご老公は赤い灼熱湯の中で大声を張り上げていた。

 まず溶岩の中で暖まる老人というだけでも意味がわからないのに、そんな化け物みたいな人間に怒られる理由なんて毛程も想像がつかなかった。

 このまま無視して下山するのも手だったが、とりあえず彼が何について主張しているの耳を傾けてみた。


「お前たちがそこにある土を持ってっちまったから、ワシの温泉がぬるくなってしまったではないか! よくもお風呂タイムを台無しにしてくれおったな!」


「え、えええ………」


 なんだか全てが荒唐無稽に思えてくる訳の分からない理由だった。

 フィロソフィーソイルにそんな効果はないし、活火山をお風呂代わりにするお爺さんも普通はいない。

 要するにへんくつなお爺さんということだ。

 彼の支離滅裂な意見に付き合う暇もないのだが、怒らせたまま何かされても困るので解決策をたずねてみる事にした。


「す、すみませんがどうしたら良いのでしょうか」


「そうじゃの。もしお前たちに反省の意思があるというなら……ここにもっと熱くなるような燃料をおいていけ!」


「ええっ」


「何だそりゃ!」


 まさかのアイテム横領だった。

 何か適当に投げておけば良いんだろうが、どうしよう。

 燃料と言っていたな。ならばこの拾った鉱石なんかはちょうどいいだろう。火山の一部みたいなもんだし。

 私は火山岩を適当に数個、お爺さんのいる火口に目掛けてぶん投げた。

 岩は音を立ててマグマに沈んでいったが、その後はなにも音沙汰がなかった。


「ふざけておるのか?」


 もうなんだかお爺さんの怒りで周囲が沸騰しているようだった。

 そのまま血管が破れない程度にキレ続けていれば、いずれ燃えるようにあったかくなるのでは?

 とにかく火山岩ではダメらしい。

 うまくいくと思ったんだがなあ。

 仕方ないので次はよく燃えそうな薬草を放ってみた。

 が結果は先ほどと全く同じだった。

 ダメか。こういうのって油とか灯油とかあれば一発なのかな。

 なにかこう温度が上がるような何か。


「この前俺が寒い時ミランダに食わせてもらった葉っぱはどうだ?」


 マックスさんは余っていた『ホットリーフ』を掴み取って勢いよく火口に向けて解き放った。

 すると今度はぐつぐつと音を立てて火山が揺れ始め、しばらく一定以上の隆起をみせた。


「よーしこれいけますよ! ジャンジャン追加しましょう!」


 ホットリーフに続き、いらなくなった靴や服などあらゆる物が燃料として投下されていった、

 火口は徐々に熱を帯び始め、白い煙を上げて段々とこちらに向かって迫り上がってきた。


「おおお。キタキタキタきたぞぉおおお!」


 込み上げてくる熱風と同時に、底の方にいたはずのご老人がかなり高めのところまでやってきてしまった。

 そして大方が想像していた通り、グランデ火山は大噴火爆発を迎え、各地に隕石のような岩を降り注がせていた。

 お爺さんは噴火した火山の勢いに乗って遥か彼方の空の旅に連れて行かれていった。


 ここまで焚き付けておいた私たちが言うのもなんだが、本当大丈夫なんだろうかこれ。

 火が消えそれまで有り余る熱気に包まれていた火山が急に大人しく冷え込んだ。

 火口付近で噴火に巻き込まれたものの、私たちに目立った外傷や火傷跡もなかった。適当に投げ込んでいたら火山が爆発するイベントか。これは中々面白いぞ。

 また次に火山が熱を溜めるようになったら検討してみよう。


 さてさてそんなこんなあり、いよいよ私たちは頼まれていたお使いを終了させ、マギアージュにて彼女の待つ入り口までやってきた。


「うん。【マンドラゴラの根っこ】、【神秘の聖水】にそれから【フィロソフィーソイル】ね! たしかに3種受け取ったわ。いやーほんと助かったわよ。学校の宿題で植物を育てるハメになって大変だったんだから〜……あっ、もう通って大丈夫ですよ」


 ここいつ……。人より目立ちたいとかやっぱそんなくだらない理由で……。

 しかしこれで通行証要らずにこの立派な国を謳歌できるようになった。

 今からもう楽しみで仕方のないところがあるのだ。

 それは――

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