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80 私、お使いです!!①

「ど、どうするんですか」


「……うーん。困ったな。これじゃあせっかく来たってのに無駄骨になっちまうぜ」


「おいマックス。お前ここ来た事あるですよね。そんときはどうやって通ってやがりましたか?」


「そう言われてもなぁ。いかんせん古い話だし、何回も行ったってわけじゃねぇからな。……ただそん時は顔パスで通れたはずだぜ」


「そんじゃとりあえずあの女気絶させて中に入りますですか」


「ジーカちゃんはまたすぐそうやって荒事に……! そんな事したら指名手配されちゃってますますオーブが手に入らなくなりますよ」


 あれこれ必死で考えあくせくして困り果てていると、見かねた受付のお姉さんがこちらにやってきてくれた。


「そうね……どうしてもっていうなら通行証無しでも通れないことはないけど……貴方たちにやれるかしら?」


「やるやるなんでもやるぜ! ……なぁスラッシュ!」


「……全く。それで、なんなんだ一体。俺たちに何をさせたい?」


「ふふふ。じゃあこれから貴方たちには今から私の言う3つのものを集めてきて欲しいですね。まず1つめは【マンドラゴラの根っこ】。これはマギアージュから北東に位置する洞窟に生息する怪物の足よ。次に【神秘の聖水】。ここからずーっと東に向かっていけば妖精の集う滝壺があるから、そこから拝借してもらって。で、最後に【フィロソフィーソイル】。これはちょっと難しいわよ。北の方に山が見えるでしょ? あのグランデ火山の内部にある光り輝く土がそれだから。じゃ、お願いね」


「ぐえええええ〜……」


 なんかもう聞くだけで嫌気がさしてくるほど、かぐや姫の如く無理難題を詰め込まれた内容をお姉さんはさらっと言い放った。

 下手したら通行証手に入れる方がまだなんぼか楽な気さえする。

 一見めちゃくちゃな遠回りな迂回イベントだが、原典版にもきちんと存在する歴としたシナリオの一部である。

 ぶっちゃけボスらしいボスは最初のマンドラゴラくらいで、あとはちょっと歩くだけで手に入る比較的楽なものだ。

 ガルガンドラの方が難しい。

 というかまだマギアージュの「マ」の字にすら到達していないのだ。

 こんなところで躓いてたまるか。

 マギアージュを後回しにしてギブラル王国とか行ってもいいかも知れないが、スラッシュくんにとってここは早く進みたいことだろう。

 そうとなれば善は急げ。

 記憶の範囲でお姉さんと指差し確認で地図と照らし合わせながら該当場所を訪ね、私たちは門を後にした。


「これからあの変な帽子の女の頼んだモン集めてくるですか?」


「そうなりますね……通行証もないことですし」


「なんかそれって体のいい小間使いじゃねーですか?」


「まぁ仕方ないんじゃない? そんなんで入れるんなら願ったりだよ」


 買収の選択肢もあったはずだが、今回はこっち強制らしい。

 そうしてひたすら練り歩いて日も暮れたところで、例のマンドラゴラが生息すると言う緑色の光を放つ洞窟に到着した。


「なあ。もう今日は休まねえか? 真夜中になったらどんな魔物が出るやらわかんねーぞ」


「うーん……でもせっかくここまできましたし、さくっと手に入れて帰っちゃいましょうよ」


「簡単そうに言うけどなぁ……いや、ミランダならできるか」


 こうして全員の了承を得て、いよいよ洞窟内に足を踏み入れていった。

 薄暗い洞窟ではあるが、所々に緑色の光を放つ苔が設置されてあったので見えなくなることはなかった。

 この苔は魔力を当てると色が変化する面白い素材で、錬金術で活用されているとかいないとか。

 あっても損する物じゃないし、私は何個か苔をむしって袋の中に詰め込んだ。

 まぁそれでもマンドラゴラ以外に大した用はない。

 押し寄せてくる雑魚モンスターは、今の私たちにとってはスライムに毛が生えた程度のものでしかないので、サクサク倒して進んでいった。

 ジーカちゃんが何度か光る苔を食べようとするので、それを止める方が大変だったくらいだ。


「あれを料理に……」


「できないよジーカちゃん。そんな物欲しそうな目で涎を垂らされても困るよ」


 千の素材を料理に変えられる魔法の料理人レイブンさんでも、流石に苔だけは調理のしようがなかったみたいだ。

 いや誰にもないけど。


「あ、そうだマックスさん。これ新しい武器にどうぞ」


「ん? おっ、悪いな助かるぜ」


 ドラゴンも当分出てこないので、マックスさんにドラゴンイーターから大剣、ブリザードバスターを交換してもらう。

 マンドラゴラの根っこを捕獲するには、火で焼いた後に氷で固めて奪い取るくらいしか方法がない。

 ただ倒すだけではダメなので、何度かこの工程を踏む必要がある。

 地味に面倒である。

 そのことを考えていたら、まもなく長い蔓の触手とハエトリソウのような大きな口が特徴的な怪物が洞窟の奥地で居座っているのが確認できた。

 あれこそマンドラゴラだ。

 まずは根っこに軽く攻撃してみよう。


「『火魔法(フレア)』」


 私はさっとフレアで炙ろうとした。

 しかしそれは段々と大きな火球に変化していき、マンドラゴラそのものを焼き尽くす勢いで一瞬のうちに奴を燃えかすにしてしまった。


 マンドラゴラをたおした!


「………………ええええええ⁉︎」


 そ、想定外過ぎるんなもん。

 たしかにこの魔力じゃあ火魔法が灼熱になるかなぁHAHAHAとか抜かしてはいたけど! いたけども‼︎

 こんな跡形もなくなるほど強化されるものなのか。

 こんなんで迂闊に上級魔法唱えたら軽く世界滅んでしまうぞ。

 魔王みたいになっちゃったぞ!


「お、おいどうすんだよ。根っこどころか全部焼けちまったけど」


「だいじょーぶ! こんなときは……!」


 フロアリセット。

 一旦洞窟を出て再び入場すると、何事もなかったかのようにマンドラゴラさんが元気に復活しておられる。

 現実だとどう言う原理か知らないが、うっかりキルで永久消滅しないという事が今は非常にありがたい。

 今度は同じ過ちを犯さぬよう私は完全に攻撃を自重し、同じ火魔法を覚えてるレイブンさんに地道に焦がしてもらうことにした。


「なんかレイブンのはほんとにちんまりとした『火』って感じでやがりますね」


「そりゃあ『火魔法』だからね。普通はこうなるんだよ」


 火ということであれば、ジーカちゃんの吐く火炎でもできるはずだ。

 ここにジーカちゃんってか炎吐ける龍人連れてきたことないから試したことはないけど。

 やがて程よくこんがりと焼けた触手に対して、いよいよ私が氷魔法を解き放つ。

 さてお察しの通り、もうブリザードでも絶対零度……どころか世界全土を凍り尽くしかねないほどの冷気でオーバーキルとなり、対象は完全に沈黙した。

 これで触手もとい【マンドラゴラの根っこ】が回収できる。

 氷塊と化したマンドラゴラの死骸を抱え、マックスさんが器用に剥ぎ取っていく。

 無事、第一のアイテムの入手である。

 残るアイテムはあと二つ。滑り出しは順調だ。

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