63 迎撃システム作動
「えーとたしか右行ってから真っ直ぐ……」
「ゲヘヘ! 相棒よく知ってるな! お陰で迷子にならなくて済みそうだぜ!」
手にした金銀財宝を大きめの風呂敷に詰め、それを背負ってやってきた。
ぱんぱんに膨れ上がった荷物が彼らの歩く度にジャラジャラと金属の擦れる音を立てていた。
しかも王冠やネックレスまで強奪していたようで、随分と豪華な姿になっていた。
「もぅ……。見つからないように行ってくださいよ」
「アイアイサー!」
本当に分かってるんだよな……。この子ら。
こんなところ見つかりでもしたら、脱獄に加えて金庫への侵入――そして金品の盗難、犯罪の片棒担ぎが過ぎることになる。
罪状何年あっても足りない。
そもそも死刑確定してるから関係なかったけど。
度々すれ違いそうになる見張りをうまく掻い潜り、いよいよ私たちは牢の中間地点までたどり着いた。
そこでは兵士たちが暇そうに本を眺めていた。
あの能天気な様子から察するに、どうやらまだ私たちが脱獄した知らせは届いてないようだ。
バレずに逃げるなら今がチャンスということか。
彼らに気づかれぬようこっそりと背後に周り、音速の速さで手刀を首にあてた。
「おいどうし――」
倒れた兵士を確認した兵士が、ミイラ取りのように次々と倒れていく。
まるでホラー映画だ。
目にも留まらぬ手刀を受け、気を失った兵士たちにゴブリン3バカトリオが蹴飛ばしたり、遊んだりしている。
「ゲヘヘ! へへ! 兄貴これたのしいよ!」
「もっと痛めつけてやれ! このこの」
「ちょ、ちょっとやめてください! もし起きられでもしたら……」
「ゲヘヘ! 心配性だなあ相棒は。このくらいなーんてことねぇよ」
だが、そんな楽観的なゴブの考えとは裏腹に、気絶させたはずの兵士たちの意識が戻りかけてきた。
ま、まずい!
ゴブリンどもの首根っこを掴み、私はそそくさと中間地点を後にした。
やがて目を覚ました兵士たちによって城内に私の存在を悟られることになった。
起きた者のうち1人が壁にあるスイッチを押し、真っ赤なランプを点滅させた。
横目の端で捉えただけだが、間違いなくそうした存在がいたのだと理解できた。
「脱走者がいるぞ! 例のあれを――今一度作動させろ!」
中間を超えた先ではずっと螺旋階段をクネクネ登っていった。
さっき聞こえた『あれ』とは何だろうか。
もしくはまた機械龍さんじゃあるまいな。
いやいや。いくらなんでも短時間にあそこまでの兵器を量産・修復することは不可能だろう。
それにそんなネタ切れがあるわけない。うん。
『脱獄者確認――迎撃システム作動。駆除対象・人間1名、ゴブリン3匹。これより戦闘を開始します』
「ネタ切れだったぁ!」
色すら変えていないマシンガーディアンくんを見つけた時は流石にどうかとおもった。
まぁでもこいつも奴と同じならはいはい雷魔法ですよ雷魔法。
しかしサンダーを発動し、確かにその衝撃を受け取ったものの、 なんとこちらは機械系弱点であるはずの雷がまるで通用せず、平気でピンピンとしていた。
「1個体ごとに違うって言うんですか⁉︎ このマシン君は!」
ほとんど名前と見た目が同じの別人みたいだった。
しかも彼は数えてみるに一度に3回も行動できる人物だ。
あの時でさえ若干手数は多かったのに、今では手がつけられなくなってしまっていた。
大丈夫。落ち着いて戦えばきっと新たな個体の弱点が見つかるに違いない。
剣を構え、敵を少しづつ覗き始めた。




