53 私、装備品に着替えます!!
注意!
今回は作者のきったねぇイラストの挿絵があります。
苦手な方はオフにしてください
※時間が足りなくて不足していた後半部分を大幅に加筆しました。
「はー危なかった……」
なんとか龍人化が解かれる前に長老さんの待つ家までやって来れた。
周囲はすっかり夜の帳が下りており、オレンジだった空は真っ暗になってしまっていた。
早速購入したての装備品を装着してみる。
高額装備品の数々だ。
これで性能がしょっぱかったらクレームものだ。
ここからの戦いは更に熾烈を極めるものとなるだろう。
しかし、苦難を乗り越えていけば必ず平和が訪れる。
それに中盤のイベントを全てクリアした先には――
ミランダさんにとっては切っても切り離せない死別が待っているのだ。
なんとかそれだけは回避しなくては。
グレイズの闇の力に全力で立ち向かって、無理やりにでも生き延びて生存ルート確保してやる。
重々しいこの鎧は、戦士さんのような力強い人間にしか装備できないので、実質マックスさんかスラッシュくんの専用装備だ。
「じゃーん。どうよ。なんか強くなったみたいじゃねぇか」
「あーはいはいそうでやがりますね」
「み、見てねぇし……」
「カッコいいですよマックスさん!」
ギガントメイルはものすごくゴツい鎧で、ガタイのいいマックスさんがいつもの3倍ほど大きく見えるほどの大物だった。
ゴツゴツとして硬そうな、見るからに狩猟してますから!感満載の防具だった。
炎耐性だけがもったいない。
既にチームメンバー全員が100%炎攻撃には耐性を持っているからだ。
しかし見れば見るほど寒さも暑さも通しそうにない鉄壁の防具なのに、氷耐性は無いんだなあと思ってしまう。
RPGの装備品事情なんて大体そんなもんなのだが、やはり魔法とかが込められてないとダメなのだろうか。
寒がりなマックスさんには是非とも氷耐性防具を優先的に装備させてあげたい。
そしてまたまたマックスさんには、これまた鎧に負けず劣らずでっかい盾、ビッグシールドをプレゼントする。
「見よ! この完全防備! 龍人なんかどんとこいだ!」
「そんなに重そうな装備で動けるんでやがりますか?」
「まぁなんとかな!」
ちょっといつもより鈍そうだったが、装備できていないというレベルでは全然なかった。
ちなみに私が持ってみたが、重すぎてまるで持つことすらできなかった。
装備品事情といえば、この装備からの選別も謎だ。
戦士さんはローブ系を装備できないし、私なんかは腕っ節関係なく重い装備品を装備できないし。
全部装備できちゃったら最強のキャラクターになっちゃうからその辺妥当なゲームバランスなのかもしれないけど。
二つの重厚な防具を身につけたマックスさんは本当に無敵そうな頼もしい感じが全開だった。
こちらの方はちゃんと氷属性が付いている。
さてさて残ったドラゴンアーマーだが…………
「う、嘘でしょ……」
肩にいかついドラゴンさんが彫ってある。それは良い。
しかしどうみてもそれは下がハイレグレオタードになっていた。
……えっ。女性用ってそういう?
今出したらCEROが厳しそうなデザインの装備だったが、我らがファンタジアシリーズは全年齢対象のAなのだ。
し、しかし――
「これはいかんでしょう……」
とはいえ、ボロボロになった毛皮のコートをいつまでも着ていくわけにもいかないので、これを着ていくしかないのだ。
で、ででもこれ、じ、直ですか⁈
直でつけなきゃダメなんですか⁉︎
それは流石に制約厳し過ぎないか?
これ着て街歩くのは結構勇気いるぞ。
「はよぅきなさい。わしが見てるから」
すけべな長老はニタニタとしたり顔で私の防具を見ていた。
もちろんジーカちゃんが鉄拳制裁してくれたので、幸い着替えるシーンは見られずに済んだ。
だが……
「おおお! ミランダさん、セクシーだね!」
「い、言わないでください……」
男性陣が私のこんな破廉恥極まりない格好に釘付けとなっていた。
マックスさんとスラッシュくんに至っては言葉を失い顔を真っ赤にして見つめていた。
自重しない長老は鼻血を床に垂らしていた。
「いいじゃねーですか。なかなか似合ってやがりますよ。……なんでそんなカオ真っ赤にしてるですか皆」
「は、恥ずかしいんですよ!」
「ハダカじゃねーんだし、服も破れてねーし何言ってやがるんですか」
ジーカちゃんの羞恥ポイントって……!
そんなこんなで出来るだけ他の皆様の目に留まらないようにささっとカーテンに隠れながら武器やらを新調していった。
そうして夜も遅くなったので、私たちは明日に備えて眠りにつくことにした。
「はぁ〜……」
慣れない装備に、長老さんの家にとなかなか眠りにつけなかった私が外の風をちょっと当たりに出ていた。
すると隣にスラッシュくんがやってきた。
「あ、スラッシュさん……」
「……ミランダか」
私たちは龍人の国、星の降る夜に2人で会話をしていた。
「なんだか大変な事になってきちゃいましたね」
「……ああ。だが俺たちがやらねばならぬだろう。この街に生きる人々の生命を守る。そしてオーブを手に入れる」
銀髪の勇者の横顔は星の光を浴びて勇ましく輝いていた。
いつになく格好良い姿だった。
こうして見ると年相応な顔つきや体格なのに、なんだか随分と大きく見える。
世界の命運を託された希望――勇気ある者に与えられる唯一無二の称号を得た青年。
やがて彼の方から振り返って語りかけてきた。
「今日は助かったミランダ」
「えっ?」
「お前がいなければ、俺たちはここまでやって来れなかっただろう。それに、あいつらとも戦えたかどうか」
「いやいや私なんて。スラッシュさんが前にいてみんなを引っ張ってくれているお陰ですよ。なにせ勇者なんですから」
「勇者――か。俺にはその資格は重過ぎるよ。こんな小さな身に余りある。……ここまで何か救えたものがあっただろうか。この手で誰かの笑顔を守れただろうか。この先も人のために戦えるだろうか――時々不安になる事がある」
「スラッシュさん……」
それは16歳としての彼の――等身大の感情、その吐露だった。
ここにきて初めて、強くて頼れるぶっきらぼうな彼の本心を聞く事ができるのだ。
この時ミランダさんは――
「大丈夫よ。貴方は色んな人を助けてきた。傷つく事もあったけれど、いつだって誰よりも人のために尽くしてきたわ。貴方は紛れもなく勇者と呼ばれるに相応しい人だわ。たとえ他の誰が何と言おうと、この私が保証してあげる」
「ミランダ……」
私は立ち上がって彼の手を取った。
「これからも皆の明日を守っていこうよ。何があっても私たちがいつも側についてるから」
「……そうだな、ありがとうミランダ」
「さっ、もう寝ましょう。私たちの明日が待ってるわ」
そう言って私とスラッシュくんは部屋に戻っていった。
ふぉおおおっ‼︎
我ながらミランダさん台詞暗記やべぇえええ!
やべぇ頬が熱い。息がバクバクする。
これらの星を見ながら想いを語るイベントは、ファンタジアⅥでも屈指の名シーンの一つなのだが、きちんとミランダさんを演じられたのは今回が初めてな気がする。
大丈夫かな。大丈夫って言った本人が一番大丈夫じゃかさそうだけど。
途中舌噛んだりしてなかったかな。どもってなかったかな。
いざ暗唱してみると込み上げてくる羞恥心に押し潰されそうになる。
やばいやばい。やっぱ慣れないことはするもんじゃないな。
しかしまぁこれで一応私に向けられていた非ミランダさん疑惑もとりあえずは解消されたことだろう。
うん。
今夜は枕を高くして眠りにつこう。
虫の音や風の音一つしない静寂な空間に、私は全身をちくちくとした毛布に預けていった。




