51 西の龍人さんと対決です!!
「オラァ! 死に晒せ裏切り者ども!」
「裏切り者はどっちでやがりますか!」
西と東の龍人による対決が始まった。
相手は5対3の人数不利にいて、全く追い詰められている様子はなかった。
硬い紫色のダガーを振り回し、ジーカちゃんを囲んで斬りつけていた。
刃は龍人の硬い鱗を引き裂く作りになっていたのか、受け止めたジーカちゃんの腕に裂傷を浴びせた。
「その手をどけろぉおおお!」
マックスさんが大剣で大振りの一撃をお見舞いする。
「効かねえなぁ――人間」
だがこちらの刃は龍人にはまるで届かず、一瞬のうちに弾き返され、マックスさんは地に落ちた。
「フッ。偉大なる龍人の長老ともあろうお方がこのように弱き人間の力を借りようとは……随分と落ちたものですね」
西軍唯一の黒髪の龍人が髪をかきあげながら言った。
余裕の笑みを浮かべて防御すらしていない無防備な姿勢に、勇者の剣が炸裂した。
「誰が弱いって?」
剣は龍人の胸部に切り傷を負わせ、それまで有利そうに振舞っていた黒髪は激しい怒りをあらわにした。
「こ……んのっ! こちらが手加減してやってるのを良いことに頭に乗りやがって! 貴様ら人間ごときが神聖な龍人様の身体に傷をつけていいわけねぇだろうが‼︎」
激昂した龍人のダガーが勇者に振り下ろされる。
彼も剣で応戦したものの、怒りによって膨張していく龍人の腕から放たれる力は強大で、やがて押し負けた勇者の剣が宙をまったか。
「なんて力だ……!」
「今更後悔しても、もう遅い! 龍人に楯突いた事を後悔しながら死ね!」
彼の凶刃からスラッシュくんを守るように私は飛び出した。
ダガーは背中を掠めたが、幸いダメージらしき感触はなかった。
「な、何だと!」
「! おいミランダ! 大丈夫か!」
「はい! この通りへっちゃらです!」
コートの背中部分は破れてしまったが、中の肉体に損傷は見受けられなかった。
「な、何だと! 私の一撃を受けて――」
そうして私に対する一撃がカウンターとなって彼を襲う。
龍人もドラゴン系に属するので、憲兵さんと同じく日本刀一閃のもと一撃で叩き伏せた。
「――ちっ! 妙な真似しやがって……ならこうだ!」
一番血の気の多そうな金髪の龍人が火炎を周囲に吐きつけた。
熱が突風になって一同に襲い掛かったものの――
「効きませんよ私たちには!」
「ば、バカな! ただの人間風情が!」
炎に包まれても痛くも痒くも無いのは、私が登山道でドラゴンさんから盗んできた『火龍の加護』のお陰だ。
全員その場で火を受けて面白そうに眺めていた。
「すげぇほんとに熱くねぇな」
「なんかすごい光景〜」
「……さぁ、今度はこっちからいくぞ!」
気合十分なスラッシュくんには大変申し訳ないのだが、素早さの関係で反撃が先に発動してしまうのが私なのだ。
炎のお返しにクリティカル増量のカウンターが炸裂し、金髪の龍人はなす術もなく鎧を切り刻まれた。
「ぐああっ!」
残された赤髪の龍人は思い切り力を込めてスラッシュくんに殴りかかってきたが、彼はそれを盾で弾き返した。
盾系スキルの一つだろう。
今度は彼の剣に炎が点り始めた。
「『ドラゴン・ブレイク』‼︎」
直前に受けた攻撃力増加魔法+ドラゴン特攻の合わせ技だ。
最後の敵は勇者によって撃破され、戦闘は綺麗に収まった。
やはり主人公。美味しいところはきちんともっていける。
持つべきものを持っている勇者である。
「ぐ、……どうなってやがる……!」
「と、とにかくまずは報告を……」
「ちっ、お前ら良い気になっていられるのも今のうちだぞ!」
「はいはい捨て台詞乙乙」
レイブンさんは撤退する龍人をしっしっと手で払い除けて追い返そうとしていた。
ジーカも両手で歯をいーっと開いて突き出し、挑発のジェスチャーを取っていた。
とりあえず『東』の勝利である。
しかし強制戦闘イベントはまだまだこれだけではない。
彼らの従う上の存在との戦闘も待っているのだ。
それにしても流石は天下の『ガルガンドラ』だ。
若者である彼らでこれほどの強さを持つのだから、そのトップに立った人物はいかな化け物なのであろうか。
また魔の猿みたいな事が起こってしまうかもしれない。
浮かれず気を引き締めていきたい。
一先ずの快勝を見せつけられた長老は、私たちを見てとても驚いていた。
「お、おヌシらは一体……」
「俺たちは『人間』だ。アンタらよりは少し力の劣る――だが、正義の心だけは誰にも負けない生き物のつもりだ」
スラッシュくんのカッコいい名言炸裂。
中二っぽさがたまりません!
いよっ大将!
年齢的には高二だけど!
無事勇者さんへ見せ場も作り、死ぬこともなく丸く収まったので私としては大満足である。
しかし彼の言った『人間』という部分について、ジーカちゃんと長老が半分訝しんだ表情で私を見てきた気がするが、気にしない事にした。
え?
私も人間ですよ。ちょっと硬くて素早いだけの人間人間。
だからそんな目で見ないで〜!




